妊娠中・妊婦の鉄分の摂取について

更新日:2017/12/14 公開日:2014/10/01

妊娠中の食事・栄養

妊婦は鉄分を積極的に摂るようにいわれていますが、なぜ妊娠中に鉄分が必要なのでしょうか。妊婦の鉄分摂取の必要性を、ドクター監修の記事で詳しく解説します。鉄分の正しい摂取方法や鉄分を多く含む食品もご紹介します。

貧血には原因の違いによりいくつかの種類がありますが、妊娠中に起こる貧血のほとんどは「鉄欠乏性貧血」で、これを「妊婦貧血」といいます。鉄欠乏性貧血とは、その名の通り、鉄分が不足することによって起こる貧血です。

なぜ妊娠すると鉄欠乏性貧血になりやすいのか、妊娠中に貧血が起こるメカニズムと、鉄分の正しい摂取方法についてみてみましょう。

妊婦が貧血になりやすい理由

鉄分は赤血球中のヘモグロビンの主成分です。このヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役目があります。体内には常に3~4gの鉄分があり、その6~7割がヘモグロビンに取り込まれ、残りが肝臓・骨髄・脾臓(ひぞう)に蓄えられています。

この蓄え(貯蔵鉄)は、鉄分が不足すると放出されてヘモグロビンの素となり、それも使い切ってしまうと貧血症状が現れます。鉄不足によりヘモグロビンの量が減り、全身に酸素が行き渡らなくなるのです。その結果、だるさや疲れやすさが生じたり、心臓が酸素不足を補おうと活発に働くために動悸や息切れ、めまいなどが起こったりします。

妊娠時は、胎児に優先的に鉄分が運ばれます。特に妊娠後期には分娩に備えて血液量が増えますが、ヘモグロビンの量は増えないため、血液が薄くなって貧血が起こりやすくなります。約20%の妊婦に鉄欠乏性貧血が見られたという調査データもあります[1]。

母体への影響

重度の貧血は、出産時に胎盤剥離部の出血が止まらない弛緩出血を起こしたり、母体の抵抗力が低下することで産褥熱(さんじょくねつ)にかかりやすいこともあるので注意が必要です。

胎児への影響

重度の貧血になると、胎児に送られる酸素が欠乏して成長に影響を与え、未熟児や虚弱児になってしまうこともあります。また、分娩時に微弱陣痛になりやすいため、難産による胎児への悪影響も懸念されます。

妊婦の貧血を予防する鉄分の摂取法

日本の成人女性の約6割は潜在的な鉄欠乏状態にあるといわれています。普段から鉄分を多く摂る必要があるうえに、妊娠すると胎児の成長に多くの鉄が必要になるため、かなり積極的な摂取を心がけなくてはなりません。1日に必要な鉄分は、非妊時に月経のない状態で6.5mgであるのに対し、妊娠初期は9.0mg、妊娠中期以降では21.5mgです(30~49歳の場合)[2]。また、18~29歳の場合は妊娠初期は8.5mg、妊娠中期以降は21.0mgです。

鉄分を多く含む食品を意識的に食事に取り入れましょう。

鉄分が多く含まれる食品

  • 牛ひき肉(生)100g:鉄分約2.4mg
  • 乾燥ひじき100g:鉄分約1.0mg
  • あさり(水煮・缶詰)100g:鉄分約29.7mg
  • カツオ(生)100g:鉄分約1.9mg
  • 小松菜(茹)100g:鉄分約2.1mg
  • がんもどき100g:鉄分約3.6mg
  • 納豆100g:鉄分約3.3mg
  • もめん豆腐100g:鉄分約0.9mg
  • 枝豆(茹)100g:鉄分約2.5mg

鉄分の吸収率は他の栄養素と比べて低く、牛ひき肉やカツオなどの動物性食品は15~25%、緑黄色野菜やひじきなどの植物性食品は2~5%です[3]。ただし、植物性食品の場合はビタミンCやタンパク質と一緒に摂ると鉄分の吸収率がアップします。

重度な貧血は鉄剤の内服で治療する

食事療法で改善しない貧血には、鉄剤の内服薬が処方されることもあります。その際、コーヒー・紅茶・緑茶などタンニンを含む飲み物は鉄分の吸収を妨げるため、服用の前後1時間ほどは避けるようにしましょう。

鉄分の過剰摂取に注意

鉄分は吸収率が低いため過剰になることはまれですが、サプリメントなどで大量に摂り続けると肝機能障害を起こす危険があります。1日の上限は40mgを目安にしましょう[2]。

参考文献

  1. [1]渡辺優奈ほか. 妊婦の鉄摂取量と鉄栄養状態の縦断的検討,栄養学雑誌 2013; 71(1)Supplement: 26-38
  2. [2]厚生労働省. “日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要” http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf(参照2017-10-23)
  3. [3]松田晃. “鉄と貧血” 埼玉医科大学. http://www.saitama-med.ac.jp/lecture/materials/51-H2106-2.pdf(参照2017-10-25)

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