長引くうつ病の誤診と薬漬けの危険性

更新日:2017/05/12 公開日:2014/12/26

長く続く重度のうつ病の症状と対処法

薬を飲み続けているのに、うつの症状が改善しない。もしかすると、他の病気をうつ病と誤診されているかもしれません。ドクター監修の記事で、うつ病が長引く理由やうつ病と誤診されやすい病気、薬漬けの危険性について解説します。

うつ病の治療を受けているものの、なかなか治らない。そのことで不安を感じている人も多いのではないでしょうか。うつ病治療の効果の出方には個人差があるので、治療が長引く人もいれば、短期間で済む人もいます。しかし、あまりにも長期に及んでいる場合は誤診の可能性もあります。

うつ病の中心的な症状は、気分の落ち込みや意欲の低下などの症状であり、それらを抑うつ症状と呼びます。実は抑うつ症状があらわれるのは、うつ病だけではありません。したがって、ドクターには、抑うつ症状がうつ病によるものか、他の病気によるものなのかを正しく見極めてもらう必要があります。本記事では、うつ病と誤診されやすい病気を紹介します。

うつ病が長引く理由

なぜ、うつ病の症状は長引くのでしょうか。ここでは、うつ病が長引く理由について解説します。

ここでは、うつ病が長引く理由について解説します。 まず、前提として、うつ病は急に良くなる病気ではないということを知っておいてください。うつ病の治療には、治療薬を服用しながら病状を取り除いていく「急性期」、そして社会復帰に向けてペースを整えていく「回復期」があります。患者は急性期のあいだ、薬を服用して、様子をみながら治療を受けます。この期間を過ぎると、回復期に入ります。ただし、この時期は大きな波を描くように症状が変化します。体調がよくなったり、悪くなったりをくり返しながら、症状が徐々に改善へと向かうのです。

体調が良くなると、ついつい薬をやめてしまおうと思うのが、自然な考えです。しかし、うつ病は非常に再発・再燃しやすいものですので、回復が不十分な段階や、回復して間もない段階で薬をやめてしまうと、再び抑うつ状態に入り、結果的に治療期間が長引いてしまうということがあります。早く治療を終えたいという焦りが、かえって回復を遅らせてしまうということは、うつ病が長引く要因としてよくあるものなのです。また、以下に紹介するように、うつ病が長引いているわけではなく、他の疾患に起因する抑うつ症状が長引いている場合もあり、その場合は診断をつける段階からの再検討が必要です。

うつ病と誤診されやすい病気

病気のなかには、うつ病と間違われてしまうものもあります。ここでは、うつ病と間違われやすい病気の種類と特徴について、解説します。

躁うつ病(双極性障害)

双極性障害は、うつ病と同じ気分の障害が起こる精神障害ですが、うつ病とは異なります。うつ病は抑うつ状態だけが続くのに対し、双極性障害は躁状態があらわれる時期があります。一般的に躁状態の期間より、抑うつ状態の期間の方が長期間続くと言われていますし、患者さんにとっても周りの人にとっても、うつ状態の期間のほうが、気分がどんよりして、活動ができなくなるので、体調が悪いように感じられます。したがって多くの患者さんは、抑うつ状態の時に医療機関を受診することになり、実際に双極性の患者さんの約9割が、抑うつ状態の時に医療機関に受診していたという調査結果もあります。

受診したときの、抑うつ状態の症状だけをみると、双極性障害はうつ病と見分けはつきません。これまでの研究では、双極性障害の人が正しい診断を受けるまでには約10年かかるというデータもあるほどです。これまでに、やけに自信に満ち溢れていた時期や怒りっぽかった時期、眠らなくても平気だった時期、お金使いが荒くなったり、普段しないような遊び方や人付き合いの仕方をしたりした時期がある場合は、そのことをドクターに伝えてみましょう。

適応障害

適応障害は、生活上の重大なストレス因によって、抑うつ症状や不安感などの症状があらわれます。症状の原因は、生活上のストレスなので、うつ病とは異なり、原因となるストレス状況が解消されれば、症状も解消されることが特徴です。近年、マスメディアでは、仕事がある時だけ抑うつ状態になり、休日や休職中は元気に遊んでいるという状況を指して、新型うつと呼ぶことがありますが、これは精神医学の正式な病名ではありません。

専門家の間では、新型うつと言われるケースの一部は、適応障害であると考えられています。抑うつ症状が、ストレスに対する反応である適応障害の水準にあるのか、ある程度まで慢性化した脳の機能異常である、うつ病の水準にあるのかを、区別することは、治療において重要なことです。

統合失調症

以前は「精神分裂病」と呼ばれていた病気で、幻覚や妄想を見るといった症状が特徴です。統合失調症は、感覚や行動に変調をきたします。そのため、周囲の人たちになじめないなどの社会生活にも影響を与えます。統合失調症の初期に抑うつ状態が出ることや、重度のうつ病で妄想症状がでることがあるため、うつ病と誤診されるケースがあります。また、非定型精神病や統合失調型感情障害と呼ばれる、、気分障害と統合失調症の症状が混在するような病態がみられることがあります。

パーキンソン病

脳内の神経伝達物質の異常により、手足のふるえ、動作や歩行が遅くなるなどの症状があらわれる病気を言います。顔の表情の変化がなくなる、感情が乏しくなる、話し方が単調になるなどの症状があり、うつ病と誤診されるケースがあります。

認知症

脳や体の疾患を原因として記憶・判断力などに障害を起こす病気です。もの忘れが多くなる、迷子になるといった初期の症状から始まり、会話が困難になる、周囲の介助やケアが必要になるなど、病気の進行につれ身体にも影響を与えていきます。初期症状の認知機能の低下などが、うつ病と似た状態をもたらします。

注意欠如多動性障害(ADHD)

いわゆる発達障害のひとつに分類される障害です。落ち着きがない、忘れ物が多い、考えたことをすぐ口にしたり行動してしまったりするといった、「多動性」「不注意」「衝動性」の症状があります。障害による日常生活においてのトラブルが原因となって、二次的に抑うつ状態があらわれることがあります。その場合は、抑うつ症状の背景にあるADHDに対する治療を行う必要があります。一方、うつ病の症状としても、集中力などの認知機能の低下がありますが、それによっておこる不注意からのミスや忘れ物を、ADHDの症状と誤診されている場合もあります。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

幼児期より発生する脳の発達に関連する障害です。いわゆるアスペルガー症候群と言われていた障害も自閉症スペクトラム障害の一部に属します。。通常と比べて他人とコミュニケーションをとることができない、言語の使用に異常がある、同じ行動をずっとくりかえすなどの症状があり、正常な社会生活を営むことが困難となります。他人とあまり会話をしない、顔に表情が浮かばないなどの状態から、うつ病と誤診されることがあります。また、ADHDと同様に、自閉症スペクトラム障害による生活上のストレスから、二次的に抑うつ状態があらわれることがあります。

診断の誤りが不適切な薬物療法につながることも

たとえば、双極性障害の場合、うつ病とは異なる方針で薬物療法が行われることが多く、学会が定める治療のガイドラインも、うつ病と双極性障害では、それぞれ別々に作成されています。そのため、誤診によって異なる治療薬を処方された場合、処方された薬を服用しているのに治らないという状態を引き起こします。病気が治らなければ、別の薬をさらに処方することになります。次第に薬の量だけが増えていき、結果として適切でない種類と量の薬剤による薬物療法が続いてしまう恐れがあります。

こうした事態を防ぐためには、薬に関して自己判断せず、ドクターの指示通り、処方された薬をしっかりと飲むということが大切です。実は、薬が増えていくケースでは、患者さんが処方された薬を飲んでおらず、改善がみられないためにドクターがさらに薬を追加するという場合も多くあります。必ずドクターの指示どおり服用し、それでも効果がないときは、そのことを伝えてください。

 

誤診を疑ったときは

うつ病や上記で紹介した病気の場合、ドクターに正確な病状を伝えることが重要です。長引く治療に違和感を覚えたときはまず、ドクターに相談しましょう。もし相談後も治療法や病状が改善されないときはセカンドオピニオンを求めてみるのも手です。本記事で紹介したように、抑うつ症状は精神疾患の多くにあらわれるものであるため、一般的に精神科医は診断の過程で、他の疾患の可能性を念頭におきながらうつ病の鑑別を行っています。適切な診断と治療のためには、精神科医を受診することをおすすめします。