カレーに増殖しやすい?ウエルシュ菌食中毒の症状と対処法

更新日:2017/12/01 公開日:2015/04/13

食品別の食中毒・食あたり

「ウエルシュ菌」による食中毒はカレーやシチューなどを大量調理したとき起こりやすく、ひとたび起こると患者数が最も多いことで知られています[1]。食中毒を予防するため、ウエルシュ菌についてドクター監修のもと解説します。

食品を十分に加熱しておけば食中毒は大丈夫と思いがちですが、菌の性質によっては加熱しても食中毒が発生する場合があります。ここでは、大量調理や作り置きをする機会の多い煮込み料理(カレーやシチューなど)に増殖しやすいウエルシュ菌の特徴や食中毒の症状および予防法について解説します。

カレーなどに増殖しやすい「ウエルシュ菌」とは

ウエルシュ菌は、人や動物の腸内や土、水中など、自然界に広く存在している細菌です。食品では、牛肉、豚肉、鶏肉といった食肉から多く検出されます[2]。

細菌の多くは熱に弱く、ウエルシュ菌も100℃の熱湯で数分間加熱すれば死んでしまいます。しかし、ウエルシュ菌の一部は生命の危険を感じると「芽胞(がほう)」という形態に変身します。この芽胞になると、熱に耐えることができるようになり、100℃で1~6時間加熱しても死にません。このようにして、加熱処理をした食品内でウエルシュ菌が生き延びることができます[1]。

また、ウエルシュ菌には空気(酸素)を嫌う性質があり、空気のあるところでは増殖できません。しかし、調理で加熱している間に、食品内に含まれる空気は沸騰してどんどん外に出て行ってしまいますので、お鍋の中は空気が少ない状態になります。こうしてウエルシュ菌にとって増殖しやすい条件が整います[1]。

食品内でウエルシュ菌が芽胞になって生き延びており、加熱調理により空気が少なくなった状態で、常温で放置しておくと、ウエルシュ菌が増殖しやすい温度となり、芽胞からウエルシュ菌が発芽して急速に増殖し始めます[1]。給食のカレーなど、大量調理した食品によるウエルシュ菌食中毒が起こりやすいのは、このためです。

ウエルシュ菌食中毒の症状

ウエルシュ菌による食中毒は、6~18時間(平均10時間)の潜伏期間を経て発症します。ウエルシュ菌は食品とともに腸に辿り着くと増殖を開始し、「エンテロトキシン」という毒素を作り出します。この毒素の作用により、腹痛と下痢をくり返すのが主な症状ですが、1~2日ほどで治まります。嘔吐や発熱はほとんどみられません。しかし、持病をお持ちの方や子ども、高齢者ではまれに重症化することもあります[1][2]。

ウエルシュ菌による食中毒は、一度に大量の調理を行うような給食施設などで発生することが多く、集団感染を引き起こしやすい傾向にあります。そのため、別名「給食病」とも呼ばれています。

ウエルシュ菌食中毒を防ぐには

では、ウエルシュ菌食中毒を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?ウエルシュ菌は芽胞に変身して熱に耐えることができるので、一度加熱しただけでは予防はできません。また、ウエルシュ菌は自然界に存在するため、食品に付着するのを防ぐのも難しいことです。ただし、食中毒を起こすには食品内にかなり多くの数のウエルシュ菌が必要となるため、再加熱と増殖防止が予防のために最も有効な手段です[1]。具体的には、以下のことを心がけるといいでしょう。

  • ウエルシュ菌食中毒を防ぐポイント
    • 再加熱(温め直し)により、芽胞から発芽した菌を殺菌し、毒素(エンテロトキシン)を壊す
    • 前日の作り置きはできるだけ避け、加熱調理したものは早めに食べる
    • 常温で放置せず、菌が増殖しにくい10℃以下か55℃以上の環境を保つようにする
    • 保存するときは底の浅い容器に小分けにしてから急激に冷却する
    • ビンなどの密閉容器で空気に触れない環境をつくらない
    • 保存した食品は、食べる前に再度よくかき混ぜながら加熱する

参考文献

  1. [1]内閣府食品安全委員会. ”ウエルシュ菌食中毒 ファクトシート《作成日:平成23年11月24日》” 内閣府食品安全委員会.
  2. http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/03clostridium.pdf(参照:2017-06-19)
  3. [2]東京都福祉保健局. ”ウエルシュ菌” 食品衛生の窓.
  4. http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/uerusyu.html(参照:2017-06-19)

今すぐ読みたい