男女で違う?アルコール依存症を発症するまでの経過と治療後の断酒率

更新日:2017/09/14 公開日:2015/07/30

アルコール依存症

近年は男性だけでなく、女性のアルコール依存症患者も急増しています。ここでは、アルコール依存症の定義や発症するまでの男女別経過、治療後の断酒率、家族への影響などについて、ドクター監修の記事にてご紹介いたします。

近年、女性の社会進出の影響を受けてか、女性が飲酒する割合も増え、それにともなって女性のアルコール依存症患者も増加しています。アルコール依存症になる経過は、男性と女性にどのような違いがあるのでしょうか。

アルコール依存症とは

大量のお酒を長い期間に渡って飲み続けることで、お酒が無いと居てもたってもいられなくなる状態になってしまうことがあります。アルコールに対し精神的にも身体的にも依存してしまうので、「飲酒を止めたい」と思っても自分の意思だけで断酒するのは大変困難な状態となります。この状態をアルコール依存症といいます。アルコール依存症患者は、体内からアルコールが抜けると、頭痛や吐き気、イライラ感や手の震え、発汗や動悸などの離脱症状が現れます。症状を抑えるためにお酒を飲み、しばらくするとまた離脱症状が現れるので再飲酒……という悪循環を長期にわたってくりかえしてしまうのです。その結果、仕事ができなくなるなど社会生活に支障をきたしてしまいます。

また、アルコール依存症患者は、自分の症状を認めたがらないことが多くあります。断酒に成功しても、その後再び飲酒すると、またすぐに元の状態に戻ってしまうのも特徴です。

アルコール依存症には、主な症状として、「飲酒渇望」や「離脱症状」といった症状に見舞われます。

飲酒渇望

コントロールできないほどの強い飲酒欲求を持つことを「飲酒渇望」と呼びます。たとえば飲酒にふさわしくない状況でもお酒を飲んでしまう、お酒を飲む前に想定していた量よりも大量に飲酒してしまうといった状況です。

離脱症状

飲酒を止めたり、量を減らしたりしたときに身体に現れる症状を「離脱症状」と言います。手のふるえ、多量の発汗、不眠、イライラ感、不安感、嘔気、嘔吐、下痢、けいれん発作、幻覚などがあり、重症になると禁酒して1日以内にけいれん発作や、禁酒後2〜3日以内の意識障害、幻覚などがみられることもあります。

アルコール依存症の症状や心理特性について詳しくは、『アルコール依存症の症状(飲酒渇望、離脱症状)と心理特性』をご覧ください。

女性の方が男性より短期間でアルコール依存症になる?

男性と女性でアルコール依存症に発展するまでの経過は、大きく異なります。

男性の場合、習慣的にお酒を飲み始めてから、アルコール依存症になるまで約20〜30年と長い時間が経過するのに対し、女性が飲酒を始めてからアルコール依存症になるまで男性の約半分の期間の10〜15年といわれています。

なぜ男性より女性の方が短期間でアルコール依存症に発展するのでしょうか。

身体の構造上、アルコールの分解が遅い

その理由に、女性が男性と比べると肝臓や筋肉が小さいので、アルコールの分解が遅く、血中濃度が高くなりやすいことがあげられます。

精神疾患を合併するケースも多い

さらに、女性の方が男性よりも肝障害、うつ病・不安障害など精神疾患が合併するケースが多いことも報告されています。

なかでも、アルコール依存症とうつ病は併発しやすく、「不安な気分をなくしたい」などの理由から、治療薬を服用する代わりにお酒を大量に飲んでしまうケース、お酒を飲むことでもともとの孤独感や絶望感がさらに増幅されてしまうケース、不安で眠れないため寝酒をしてしまい、さらに睡眠障害が悪化するケースなどがあります。

うつ病治療に用いられる抗うつ薬や抗不安薬は、中枢神経抑制作用があるため、アルコールとの併用は大変危険です。状態を改善するには、断酒することが大切です。

他人の目を気にするあまり、症状が悪化する傾向も

さらに、女性は男性以上にアルコール依存症を強く否定する傾向があります。

男性よりも周囲の目を気にしがちな女性は、飲酒に関する問題を隠したり、男性に比べて暴力や周囲に迷惑をかけたりする行動が少ないことから、アルコール依存症の発見が遅れてしまうのです。

アルコール依存症かどうかを自己判断するには

アルコール依存症であるかどうかを診断する方法として、1978年に日本で最初に作られたのがKAST(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト)です。直近の飲酒状況についての質問に、「はい」か「いいえ」で答え、飲酒に問題があるかどうかを診断します。男性版と女性版があります。

アルコール依存症のセルフチェックについては、『アルコール依存症の自己チェック方法(スクリーニングテスト)』をご参照ください。

アルコール依存症の原因とは

少量の飲酒はストレスを緩和させ、リラックス効果をもたらしてくれますが、お酒への歯止めが効かなくなり、毎日たくさんのお酒を飲み続けると、アルコール依存症へと発展していまいます。

アルコールを長期間大量に摂取すると、アルコールによって生理機能に変化がもたらされます。それまでの量以上にアルコールを摂取しないと同じ効果が得られなくなってしまい、その結果量がどんどん増えていきます。また、摂取を中断すると気分の不快や不眠、手の震えといった「離脱症状」が現れるようになり、アルコールを手放すことができなくなるのです。

また、お酒の量がエスカレートしてしまう背景には、このようなことが挙げられます。

  • 日常のストレスや気持ちの落ち込みなどの心的要因
  • 生活環境
  • 本人の遺伝
  • 飲酒の早い開始年齢

アルコール依存症は男性の場合、多量飲酒を開始した年齢から20〜30年後、女性はその半分の10〜15年後に発症することが多いです。

アルコール依存症は何科で治療する?

アルコール依存症の疑いがあっても、どの医療機関に相談すればいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか?

アルコール依存症の場合は、離脱症状や精神的なケアなどへの対応ができる心療内科や精神科を受診することになります。徹底的な治療を希望するのであれば、アルコール依存症専門の医療機関に相談することをおすすめします。

アルコール依存症専門の医療機関は、退院後のリハビリ治療やアフターケアを重要視しています。アルコール依存症患者は入院中に断酒をしても、退院後に再びお酒を飲んでしまい、再発してしまうケースが多いため、退院後のアフターケアがとても重要なのです。

アルコール依存症の治療方法は

アルコール依存症を治療する場合、入院治療が一般的です。アルコール依存症を治療していく上で、孤立している環境は非常に危険で、精神的にも不安定になりやすくなり再発の確率が高まります。病気を理解してくれる専門スタッフや、同じ環境にいる患者とともに生活することは、治療に大きな効果をもたらしてくれるのです。

入院治療は、主に3つの段階に分類されます。

段階(1)解毒治療

アルコールによる身体の障害や離脱症状を治療していきます。入院して3週間経つと、体調が次第に落ち着いてくるので、精神疾患など心に起きている合併症の治療も始めていきます。

目安となる期間:3週間前後

段階(2)リハビリ治療

患者に飲酒問題を認識させ、断酒するためのリハビリテーションを行います。精神医療や集団活動などを行いながら、社会生活へ復帰するための訓練をしていきます。本人や家族に説明をしたうえで抗酒薬での治療も開始します。

目安となる期間:7週間前後

段階(3)退院後のアフターケア

退院後もリハビリを続け、医療機関への通院、抗酒薬の服用、自助グループへ参加するなどのアフターケアを行っていきます。

目安となる期間:生涯

アルコール依存症の治療について詳しくは、『アルコール依存症の治療・ケア方法』をご覧ください。

治療後の断酒率は5年以降で20〜30%

厚生労働省のデータによると、アルコール依存症の治療後、断酒ができている人の確率はこのようになっています。

  • 治療後2~3年  →28~32 %
  • 治療後5年前後 →22~23 %
  • 治療後8~10年 →19~30 %

また、良好な治療結果が出ている人たちには以下のような傾向がありました。

  • 高齢者
  • 夫婦生活を共に過ごすパートナーがいる
  • 仕事に就いている
  • 治療する前の飲酒量が少なかった
  • 入院回数が少なく治療に対する姿勢がよい
  • アフターケア(病院の通院・抗酒薬の服用・自助グループ参加)を続けている
  • 人格障害をもたない

アルコール依存症には、精神疾患が絡んでいることも多く、ケースによっては本人の精神治療やカウンセリングのほか、家族への教育、カウンセリングといったことが必要になる場合もあります。治療を終えた後の断酒率を見てもわかる通り、簡単には克服できない難しい病気です。患者の強い意思と周囲のサポートが、治療と再発予防に大きな効果をもたらします。

家族がアルコール依存症になった場合、どうするべき?

家族、とくに子供が苦しむケースが多い

アルコール依存症になると、飲酒運転や家庭内暴力、虐待など社会的な問題も発生しやすく、身近にいる家族が巻き込まれるケースは非常に多くなります。また、子供の発達にも影響するため、世代を超えて苦しむケースもでてくるでしょう。長い期間にわたり悩まされ、傷つき疲弊してきた家族は、問題を客観視するのが次第に困難になっていきます。

家族に求められる対応は

「家で一緒にお酒を飲む」など、アルコール依存症患者にお酒を助長させる行為を決してしないでください。アルコール依存症は、断酒しない限り克服できないからです。

また、アルコール依存症患者は先述のとおり、飲酒運転や暴力沙汰などの問題を起こすことも多くありますが、こうした問題を家族が尻拭いするのも、回復を遠ざけることになります。「本人の飲酒問題は本人の責任」だと自覚させることが重要です。

アルコール依存症は早期に発見し治療することで重症化を防げるため、一刻も早く専門の医療機関に相談することをおすすめします。もし本人が受診をかたくなに拒む場合は、本人の職場からアプローチしてもらう、本人にとって影響力のある人達に説得してもらうなどの方法をとってみてもいいでしょう。

アルコール依存症を相談できる専門機関

アルコール依存症患者を説得して治療を開始するのは非常に難しく、家族だけでは解決できないケースがほとんどです。いざという時の相談先として、以下のような機関もあります。

精神保健福祉センター・保健所

各都道府県に必ず設置されている機関で、地域によって電話や面談などで相談することができます。地域によっては、保健所でも相談できるところがあります。アルコール依存症の専門医療機関についての情報も得ることができるので、活用してみてはいかがでしょうか。

アルコール依存症専門医療機関

アルコール依存症についてかなりの知見があるので、専門的なアドバイスが受けられます。アルコール依存症患者本人だけではなく、家族の相談にも応じてくれ、アルコール依存症の家族に悩む人たち同士の相談会などを行っているところもあります。

自助グループ

アルコール依存症本人が参加する断酒会や自助グループ以外にも、家族のためのグループがあります。電話や面談などで相談したり、定例会やグループミーティングに参加することで、本人と向き合うための知識や情報を得ることができます。

依存症を治療できる医療機関について詳しく知りたい方は『アルコール依存症を治療できる病院・入院治療のメリット』もご覧ください。

早期治療や、専門家への相談がカギ

アルコール依存症の場合、家族が本人の異変に気がついても、症状が軽いうちは本人がアルコール依存症であることを認めようとしません。これが問題を悪化させる大きな原因でもあり、その状態に手を焼いているうちにどんどん事態は悪化していきます。

アルコール依存症は早期発見、早期治療をすることで、重症化を防ぎ再発するリスクも低くなります。閉塞状態に陥ってしまう前に、まずは専門家への相談をおすすめします。

この病気・症状の初診に向いている科 心療内科