嘘つきになる!?子供や部下を「ほめて育てる」落とし穴

更新日:2015/10/30 公開日:2015/04/23

人間関係

子育てでも職場でも「ほめる教育」がブームとなりましたが、「ほめる教育」には危険な落とし穴があります。ここでは、「ほめる教育」でやりがちな間違いと、子供や部下を良い方向に効果的に動機づけする方法について、科学的な研究結果から考えていきたいと思います。

褒めるのはいいこと?悪いこと?

子育てでも職場でも「ほめる教育」がブームとなり、「子供のほめ方」「部下のほめ方」といったことをテーマとした本が数多く出版されています。しかし、その「ほめる教育」には危険な落とし穴があります。今回は、この「ほめる教育」でやりがちな間違いと、子供を良い方向に効果的に動機づけする方法について、科学的な研究結果から考えていきたいと思います。

400人の子供を対象としたコロンビア大学の研究

コロンビア大学のクラウディア・ミューラー博士とキャロル・デュエック博士は、400人の子供(10歳から12歳)にテストを受けさせ、実際の点数は知らせず、全員に「80%以上の正解率だった」ということを伝えました。そして子供たちを3つのグループに分け、それぞれ以下のような対応を行いました。

  • グループ1:「頭がいいのね!」「えらいね!」と能力や才能をほめる
  • グループ2:成績を伝えただけで何もほめない
  • グループ3:「よく頑張ったね!」と努力をほめる

その後、2回目のテストを実施することを子供達に伝え、「1回目と同じくらいの易しいテスト」と「1回目よりも難しいテスト」のどちらかを選ぶように伝えました。子供達には、難易度の高いテストについて、「難しいので解けないかもしれないが、チャレンジすると学べることがある」といったことも説明しました。

能力や才能をほめられた子供は失敗を恐れ、ウソをつく

すると、グループ1(能力や才能をほめられた子供達)の65%が難易度の低いテストを選んだのに対し、グループ2(ほめられなかった子供達)は45%、グループ3(努力をほめられた子供達)にいたっては、なんと10%しか簡単なテストを選ばず、90%が難易度の高いテストを選択しました。

そして2回目のテストの後、3回目のテストで全員に難易度の高いテストをさせ、その点数をみんなの前で発表させたところ、グループ1(能力や才能をほめられた子供達)の40%がウソをつき、実際の点数よりも高い点数を言いましたが、グループ2(ほめられなかった子供)ではたった10%でした。


ほめられ方がパフォーマンスにも影響

そして最後に、4回目に簡単なテストをさせたところ、グループ1(能力や才能をほめられた子供)は平均20%も点数が下がったのに対し、グループ3(努力をほめられた子供)は平均30%も点数が上がりました。

この実験から、「頭がいい」など、子供の能力や才能をほめると、子供に以下のような影響を与えがちだといえます。

  • 失敗に対して恐れを抱くようになり、チャレンジを避けるようになる
  • うまくいかなかったことが受け入れられず、ウソをつくようになる
  • 失敗に対して過敏になり、パフォーマンスが下がる

ほめ言葉が「ご褒美」になってしまうことの悪影響

ほめることにしろ、叱ることにしろ、「ほめられるからやる/やらない」「叱られるからやる/やらない」という価値観が子供に根付くと、「ご褒美がなければ良いことでもしない」「罰がなければ、悪いことでもする」といったことになる危険性があります。

ベストセラーとなった『嫌われる勇気』で紹介されているアドラー心理学では、子供に対してやってはいけないこととして、「ほめること」「叱ること」の両方をあげています。

「ほめる」「叱る」という行為は、アドラー心理学では、「価値観の押し付け」を発生させ、それが子供に悪影響を与えると指摘されています。例えば、子供がテストで100点を取った時、「100点を取ってえらいね」と誉める行為は、「100点を取ることが良いこと」という価値観を子供に植え付け、「自分のためではなく、親などにほめられるためにやる」「新しいことを学ぶことではなく、100点を取ることが重要」という考え方を生んでしまいます。

モチベーションの種類

子供に限らず、大人でも、モチベーションの源泉は大きく以下の2つに分かれます。

(1)外発的報酬(extrinsic rewards)によるモチベーション

ほめ言葉や褒美、昇格、昇進、昇給、周囲からの称賛や証人など、外部からもたらされる報酬に基づくモチベーション

(2)内発的報酬(intrinsic rewards)によるモチベーション

やりがい、達成感、成長感、何かをやっている時の楽しさ、自己実現など、外部ではなく自分自身の内部から湧き出るモチベーション

子供や部下などにテストや仕事を頑張る理由を聞き、回答が「ほめられるのが嬉しい」「ご褒美/昇給のため」などという場合は「外発的報酬」からくるモチベーション、「新しいことを学ぶのが楽しい」「好きだから」などという場合は「内発的報酬」からくるモチベーションになります。

内発的モチベーションを高めてサバイバル力の高い子供に!

コロンビア大学の研究やアドラー心理学から「ほめる」という行為を考えると、「ほめる」ことが「外発的報酬」となり、それによって喚起されたモチベーションだと、「失敗したらほめられなくなる(ご褒美がなくなる)のでチャレンジしたくない」「ご褒美がないならやらない」ということになり、子供のチャレンジ精神や成長を阻むのではないかと考えられます。

テスト勉強は、努力すれば比較的短期で効果が上がり、周囲の称賛など外発的報酬も得られやすいですが、社会に出てからはそう簡単にはいかないことのほうが多くなります。iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授も、「手術がヘタで、“ジャマナカ”と呼ばれていた」という臨床医時代の大きな挫折や、研究に理解を得られずうつ病状態になるといった困難を克服してチャレンジを続けたことが大きな成果に結びつきました。

山中教授ほどではなくとも、なかなか結果が出ず、誰もほめてくれなくても、頑張りぬける「内発的報酬に基づくモチベーション」は社会に出てからは必須のスキルです。

「ほめる」という行為が子供にとって外発的報酬(ご褒美)やプレッシャーとなるのか、内発的なモチベーションを高めるのをサポートするかは、パパやママの言い方ひとつで変わります。子供が失敗を恐れず果敢にチャレンジし、困難を克服できるサバイバル力を身に着けるためにも、ほめ方や叱り方をはじめ、子供に発する言葉に注意するようにしてみてはいかがでしょうか。

参考文献

  • Claudia M. Mueller and Carol S. Dweck『Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance』(J Pers Soc Psychol. 1998)
  • 岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社 2013)
  • 『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』講談社 (2012)

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