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顔面多汗症の薬での治療

更新日:2018/03/30 公開日:2015/05/29

顔汗・顔面多汗症

顔面多汗症の治療法は、塩化アルミニウムの外用、抗コリン薬などの内服、ボツリヌス毒素の注射、交感神経を切る手術の4つが主なものです。ここでは、これらの治療はどのようなもので、どんな順番で行うのかなど、ドクター監修のもと詳しく説明します。

顔面多汗症の治療では、薬物療法を行うこともあります。ここでは、治療の際に主に用いられる薬について、ドクター監修のもと詳しくお伝えします。

顔面多汗症の治療法とは?

体の特定の部分からのみ異常に汗が出る症状を「局所性多汗症」と言い、「顔面多汗症」もその1つです。日本皮膚科学会が作成した『原発性局所多汗症診療ガイドライン』に、手のひらや足の裏、ワキの下、頭部顔面多汗症の治療法について記載があります。ここで有効とされている標準的な治療法をご紹介いたします[1]。

まず行われるのは、塩化アルミニウム溶液を塗る治療または内服薬での治療です。この2つの治療でも効果が得られない場合、A型ボツリヌス毒素の注射が行われます。それでも効果が得られない重症では、医師からの十分な説明を受けたうえで本人が強く希望した場合に限って、交感神経を切る手術を実施することがあります。以下、各治療について順を追って解説していきます。

塩化アルミニウム溶液の外用

顔面多汗症の治療の第一選択は塩化アルミニウム溶液の外用です。この薬剤は、気になる部位に継続して塗ることで汗の分泌を減少させます。手軽に治療でき、すべての年齢で使用することができます。

塩化アルミニウム溶液には刺激性があるので、目などの粘膜には付けないように注意しましょう。また、塗った後にかゆみ、かぶれなどの症状が出る場合は医師に相談しましょう。

飲み薬による治療(内服療法)

顔面多汗症の内服療法でよく使われている飲み薬は「抗コリン薬」です。この薬は、交感神経から汗腺に対して「汗を出せ」という司令を伝える「アセチルコリン」という神経伝達物質の放出を妨げます。その結果、汗の量を減らすことができます。抗コリン薬には多くの種類がありますが、多汗症の治療薬として保険適用があるのは「プロパンテリン臭化物」(商品名プロ・バンサイン)です。

ただし、抗コリン薬は全身に作用するので、汗腺だけでなく「コリン作動性神経(アセチルコリンを神経伝達物質とする神経)」に支配されているすべての器官の働きを抑えてしまいます。そのため、目のかすみ、喉の渇き、便秘、尿が出にくくなるといった副作用が出ることがあります。

ボツリヌス注射

ボツリヌス注射とは、ボツリヌス菌が産生する「A型ボツリヌス毒素」を使った注射(商品名ボトックス)です。この毒素には交感神経からアセチルコリンが放出することを抑える作用があるので、汗が出ないようにすることができます。効果は1回の注射で半年ほど続くといわれています。

ボツリヌス注射は狭い範囲の多汗症に適しているので、手のひらや足の裏、ワキの下の多汗症によく用いられます。顔の場合は、額の汗を止めるために用いられることが多いようです。

デメリットとしては、注射時の痛みが強いことと、保険が適用されないので治療費は高額になることです。

なお、ボツリヌス菌が作った毒素と聞くと怖いイメージがありますが、この毒素は注射で打った場所の狭い範囲にだけ作用し、さらに安全性も確認されているので、全身に回ってボツリヌス中毒になるということはまずありません。とはいえ、毒素は毒素なので、医師なら誰でも打てるということではなく、講習を受けるなどして十分な知識と経験を持った医師だけが打つことができます。

このため、顔面多汗症でボツリヌス注射ができる医療機関は限られます。ボツリヌス注射を希望する場合は、対応しているかどうかを事前に確認したほうがいいでしょう。多汗症治療でボツリヌス注射を行っているクリニックでも、顔面多汗症には対応していない場合もあり得ます。

交感神経遮断術

上記のような治療を行っても症状が変わらなかったり、重症であったりする場合においての、最後の手段として手術があります。「交感神経遮断術」と呼ばれる手術です。現在では胸腔鏡を用いた胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(endoscopic thoracic sympathectomy;ETS)が行われています。

この手術はその名の通り、胸部の背骨近くにある交感神経を切断もしくはクリップで止めて働きを止める手術です。顔面多汗症でこの手術を受けた約8割で効果が認められています[1]。

このように高い効果が認められている手術ですが、実施においては条件が課されています。それは、外用薬や内服薬、注射薬による治療を行って、それでも効かない状態であることと、医師から詳しい説明を聞いて、患者が強くこの手術を希望する場合のみ行うというものです。

このような条件がある理由は、この手術の副作用として胸やお腹、背中、お尻、太ももなどに汗をかきやすくなる「代償性発汗」が約9割の患者で起こるからです[1]。つまり、顔に汗をかかない分、他の部位で汗が増えるということになるのです。「それでも、顔という目立つ場所で汗をかかない方がいい」と思うか、「顔以外で汗が増えてしまうのは困る」と思うかは価値観によって人それぞれです。手術を受けるかどうかは、医師としっかり話し合った上で決めましょう。

参考文献

  1. [1]藤本智子ほか編. 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版. 日本皮膚科学会雑誌 2015; 1379-1400

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