癌細胞の発生と「免疫力」の関係

更新日:2017/06/14 公開日:2015/08/14

免疫力の低下・異常

日本人の死亡原因の第1位となっている「癌(がん)」。医学が進歩し、メカニズムについて解明が進んでいます。 一般の関心が高い事柄に、「免疫力」との関係があります。ここでは癌と免疫との関係をおさらいしながら、病気を遠ざける「免疫力アップ」は可能なのかどうかを考えつつ、自宅でできる工夫も含めてドクター監修の記事で解説します。

日本人の死亡原因で「癌(がん)」は30年以上不動の第1位の座を占め続けています。厚生労働省の試算によると、もし癌が簡単に治る病気になったら、平均寿命は約3~4歳延びるとされています[1]。日本人の寿命に大きく関わっている癌のメカニズムと免疫力の関係はどのようなものでしょうか。

癌細胞ができる原因とは

癌は、もともと体内にある正常な細胞が変化してできたものです。健康な人でも多数の正常な細胞から癌細胞は生まれ続けています。一説によると、その数は毎日5,000個[2]ともいわれ、一見怖いことのようにも思えます。

癌の発生には、遺伝子を構成するDNAに変化が起こる、いわば「傷」が付くことで、細胞増殖のコントロールが効かなくなって発生することがわかっています[3]。身体の中には数多くの細胞があり、一定のサイクルで入れ替わりながらそれぞれ働いていますが、このような正常な細胞の遺伝子がなんらかの理由で傷つくことで、癌細胞の発生につながるのです。しかし、傷がついた細胞すべてが必ず癌化するわけではなく、その後さまざまな要因が絡み、長い期間を経て癌細胞へと変わっていきます。

DNAに傷を付けて癌細胞を作り出す要因として挙げられるのは、喫煙や食事などの生活習慣、紫外線、環境汚染、ウイルスなどです。

癌を引き起こす原因については『がんの原因には何があるのか』の記事でさらに詳しく解説しています。

癌と免疫力の関係

体内では毎日、DNAの傷によって細胞増殖の効かなくなった「癌細胞」が発生していますが、このいわば小さな状態の癌の大半は成長せずに死んでいきます。それは、後で説明するように、「免疫」が働いているからです。免疫の力をつかさどる体内の免疫細胞が、癌を小さいうちに退治しているのです。

免疫とは、細菌やウイルス、癌細胞などの病原体から身体を守る自己防衛機能のことです。しかし、免疫力は加齢とともに衰えていきます。そのほか、ストレスや不規則な生活が続くことでも、免疫細胞が活性化されなくなり、その力が衰えます。免疫力より癌細胞の力が上回ってしまうと、癌は一気に勢力を拡大する可能性があります。

癌の原因として「免疫力の異常」に注目

癌は、遺伝子の異常などが複雑に関係して発症しますが、その中でも大きな要因として「免疫力の異常」が考えられるようになってきました。

癌細胞と、人間の体に備わっている免疫との間にはせめぎあいがあります。この免疫の力を正常に保つことで、人間は癌細胞を継続的に攻撃し続けられるのです。

例えば、癌を攻撃する役割を持つ白血球の一つ、リンパ球について考えてみましょう。正常な人の体内では、リンパ球が一定の数を保ち、癌への攻撃力を維持できています。ところが、癌の人の体内では、体力の減少に伴い、徐々にリンパ球の数も減ってしまうことがわかっています。結果として、免疫の機能が癌に負ける形になり、病気を一層進めてしまうことになります。免疫と癌とのせめぎあいにおいてどちらが優勢であるかは、病気の進行を考えるうえで大切な要素です[2]。

一方、免疫に関連して、本来は異物を排除するために起こる「炎症」が問題を起こす場合もあります。例えば、強いストレスがかかると交感神経が緊張状態に変化します。交感神経が緊張している状態が長く続くことによって免疫バランスが崩れ、「顆粒球」と呼ばれる白血球が増えることがあります。交感神経の緊張がさほど強くなく、顆粒球がコントロールできていればいいのですが、交感神経の緊張が持続して制御不能となると、顆粒球が自分自身の細胞を攻撃して破壊する場合があって厄介です。ひいてはDNAに傷をつけ、癌化を促しかねません。

では、異物を攻撃するリンパ球や顆粒球をうまく保ちながら、どう付き合っていけばよいのでしょうか。

免疫力向上が癌予防の鍵

前述のように、免疫力の低下や免疫バランスの崩れは、リンパ球や顆粒球に影響を与え、癌を増やしたり、発症させたりする引き金となる可能性があります。

免疫力の低下は加齢によっても起こるほか、生活習慣も大きく関わります。例えば、前述の交感神経の緊張を避けるため、「ストレスをためない」「規則正しい生活を送る」ことは体の炎症をうまくコントロールすることにつながる可能性もあり、免疫バランスの崩れを防いでくれるポイントになるでしょう。

自宅でできる免疫力をよりよく保つ方法とは

免疫力をよりよく保っておくには、生活習慣や食生活の改善をすることは意味があります。具体的にどのような対策をすればいいか解説しましょう。

睡眠をしっかりとること

しっかり睡眠をとることで「自律神経」のバランスを整えることができます。自律神経は、交感神経と副交感神経から成り立っています。神経の活動の乱れを防ぐために、7~9時間程度の十分な睡眠時間を確保できるようにしましょう。

朝日を浴びて体内リズムを整える

朝日を浴びることで、「昼と夜―活動とリラックス」のスイッチの切り替えが行なわれます。くり返しになりますが、自律神経には、昼の活動をつかさどる「交感神経」、夜の休息・回復をつかさどる「副交感神経」の2種類あり、この2つがうまく切り替わることで体内リズムを整えやすくなるのです。

よく笑うようにしてNK細胞を活発に

ユーモアにはウイルスや小さな癌を攻撃してくれる免疫細胞「NK(ナチュラルキラー)細胞」の働きを活性化する効果があるという研究報告もあります[4]。友人や家族と楽しい時間を過ごしたり、バラエティ番組やコメディ映画などをみたりして大笑いして、笑顔が多い生活を過ごすように心がけましょう。

NK細胞については『笑いやヨーグルトが効く?NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化する食品・食べ物・方法』の記事もご覧ください。

免疫力を向上させる食べ物を積極的に食べる

腸の中は、体の免疫の働きを正常にするために重要な役割を果たすと分かってきています。なかでも、腸の中では自分自身の持つ免疫細胞と、腸内細菌との間でのやり取りがなされることは注目されていることの一つです。腸内の善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)を増やして腸内環境を整えることで、免疫細胞を正常に保ちやすくなります。

ヨーグルトや納豆などの発酵食品、タマネギやバナナ・ニンニクの適度な摂取は、腸内の善玉菌を増加させ、免疫力を高めると考えられています。

免疫力を高める食事については、『免疫力を高める食べ物・食材と効果的な摂取方法』『免疫力を高める食事・食生活「5つの秘訣」』の記事でさらに詳しく紹介しています。

参考文献

  1. [1]厚生労働省. “参考資料3-2 特定死因を除去した場合の平均余命の延びの推移” 平成27年簡易生命表の概況. http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/dl/life15-11.pdf(参照2017-05-25)
  2. [2]東京都福祉保健局. “がんって何?” 東京都福祉保健局. http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_hoken/gan_portal/research/about.html(参照2017-05-25)
  3. [3]デニス・L・カスパーほか編 福井次矢ほか監修. ハリソン内科学 第5版. メディカル・サイエンス・インターナショナル 2017
  4. [4]Christie W et al. The impact of humor on patients with cancer, Clin J Oncol Nurs. 2005; 9(2): 211-218