腰痛の種類(1)ぎっくり腰

更新日:2016/12/09

腰痛の種類

腰痛の種類といえば、まず頭に浮かぶのがぎっくり腰。でも、具体的にどういった状態で、なにが原因でなるのか、よくわからないという方も多いのでは?ドクター監修のもと、ぎっくり腰の原因と症状、対処法について詳しく解説します。

川本徹先生

この記事の監修ドクター

みなと芝クリニック 院長  川本徹先生

「ぎっくり腰」という言葉をよく耳にしますが、具体的にどのような症状で、どういった原因で起こるのでしょうか?対処法も併せ、詳しく解説します。

ぎっくり腰とは?

不自然な姿勢や急な動作などにより生じた腰痛で、正式には急性腰痛症と呼ばれます。いつ痛めたのか、いつから痛いのかが明確なのが特徴とされています。

重い荷物を持ち上げた時にギクっとなるイメージが大きいと思いますが、それ以外にも、ゴミを拾おうとして前屈みになる、くしゃみをする、階段を上がるなど、ちょっとした動作で発症することもあります。

主な原因には、長時間の立ち仕事や中腰などの不自然な体勢、姿勢の悪さ、疲労、運動不足、冷え、肥満、体のかたさ、古傷、ストレスなどがあげられます。中でも、筋肉疲労や背骨のゆがみが蓄積することで起こりやいとされています。そこに、前述のような動作が引き金となって発症するケースが大半ですが、中には、もともと腰の病気があり、特に無理な動作をしたわけではないのに急に発症するケースもあります。

このように、発症の原因によって、ぎっくり腰は大きく狭義(狭い意味)のものと広義(広い意味)のものに分けられます。それぞれについて、詳しく見てみましょう。

「狭義の急性腰痛症」の原因と症状

症状はあるのに、X線やMRIなどの画像検査でも異常が認められず、痛みの原因が特定できないものを言います。ただし、この場合の「異常が認められない」は、異常がないのではなく、腰を構成する組織(筋肉・靭帯・椎間板・椎間関節など)のどこかに原因があることはわかっても、はっきり特定できないという意味です。このような腰痛を「非特異的腰痛症」とも言います。

原因をはっきり特定することはできませんが、ぎっくり腰の場合は、ほとんどが椎間関節の亜脱臼(ねん挫)によるものでは、と考えられています。

腰椎椎間関節とは5つの腰椎をつなげる関節で、前屈の時に広がり、後屈の時に狭まります。この関節が外れかけた状態が、亜脱臼(ねん挫)です。つまり、狭義の急性腰痛症は、そのほとんどが関節をねん挫した状態と考えられているわけです。ねん挫により周辺組織が炎症を起こすことで、強い痛みが生じます。動くと痛みが増し、少し前屈したり横向きに寝ると、やや緩和する傾向にあります。

「広義の急性腰痛症」の原因と症状

ぎっくり腰は、ほとんどが狭義の急性腰痛症によるものですが、中には、さまざまな原因(症状)によって急激な腰の痛みが引き起こされる場合もあります。これを、広義の急性腰痛症と言います。主な症状には、以下のものがあります。

・腰椎椎間関節症

・筋・筋膜性腰痛症

・骨粗しょう症による椎体圧迫骨折

・椎間板ヘルニア

※骨粗しょう症と椎間板ヘルニアについて、詳しくはそれぞれ下記をご覧ください。

『腰痛の種類(6)骨粗鬆症(こつそしょうしょう)』をご覧ください。

『腰痛の種類(2)椎間板ヘルニア』をご覧ください。

これらの他、脊椎炎(化膿性・結核性の炎症で、骨破壊が見られる)、転移性脊椎腫瘍(肺がん・乳がんからの転移が多い)、解離性大動脈瘤、急性膵炎、子宮内膜症、尿路結石などの重篤な病気によっても、急性の腰痛症を起こすことがあります。

ぎっくり腰への対応

狭義の急性腰痛の場合は、2~3日安静にしていれば徐々に痛みが軽減していくケースが多いです。そのため、痛みが強い場合は無理に医療機関を受診しようとせず、まずは横になって様子を見ましょう。その際、やや前屈し、ヒザを曲げて横向きで寝ると、腰への負担が少なくなって痛みが和らぎます。また、市販の消炎鎮痛薬や湿布薬(冷湿布)を使うことでも痛みが軽減されるでしょう。足首をねん挫したときと同様、アイシングも有効です。

※腰痛の緩和に効果的な湿布の使い方について、詳しくは『腰痛の症状別!正しい湿布の選び方、貼り方』をご覧ください。

ただし、以下のような場合は、通常の椎間関節のねん挫とは異なる可能性が高く、医療機関での治療が必要になりますので、早急に専門医に相談しましょう。

・常に痛みがあり、どんな姿勢をとっても痛みが軽減しない

・安静にしていても痛みが増していく

・発熱や冷や汗が出る

・下肢のしびれがあったり、足に力が入らない

・排尿・排便異常がみられる

ぎっくり腰になったらする事、応急処置

腰痛ベルト・コルセットは、腰をサポートする便利なアイテムとされていますが、具体的にはどのような効果が期待できるのでしょうか?具体的な役割と、選び方・つけ方のポイントについて解説します。

コルセットなどで腰を固定し腰への負担を減らす

腰痛ベルトとコルセットは腰痛のときに腰周りをサポートするグッズとして有名ですが、実はこの2つはイコールではありません。まずは、その違いについてお伝えしましょう。

市販されているものが「腰痛ベルト」です。「骨盤ベルト」「腰痛バンド」という名称で販売されているものもあります。すべてがゴムでできていたり、一部分がゴム素材で伸縮性のあるものなど、種類もさまざまです。

一方、整形外科や整骨院などで使われる医療用のものを「コルセット」と言います。医療用である分、市販の「腰痛ベルト」より価格は高めです。ただし、健康保険が適用されるので、療養費として申請すると一部給付金が戻ってくる場合もあります。

コルセットは、「軟性コルセット」と「硬性コルセット」の2種類に分けられます。一般的に使われるのは、軟性コルセット。弾力性のある素材で、日常生活を支障なく送れるよう作られています。ぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった、強度の腰痛で使用されます。

硬性コルセットは、外科治療用として使用されます。プラスチックや金属などの硬い素材で作られているので、日常生活の動作はかなり制限されます。圧迫骨折や、手術後に腰椎を固定する場合に使われます。

腰痛ベルトやコルセットの役割は、腹部を適度に圧迫して腹圧を上げ、体を内側から支えて腰椎への負担を軽減することにあります。つまり、腰周りの筋肉や脊椎の働きを助け、痛みが出ない姿勢を保つなど、腰痛の緩和やサポートに使われるもので、腰痛を治すものではありません。ただし、腰だけでなく骨盤も圧迫するので、仙腸関節の引き締めや、脊椎のゆがみを抑える効果もあります。また、腰回りを包んで温めるので、筋肉の緊張をほぐすことによるリラックス効果も期待できます。

病院で注射するとよくなる?

消炎鎮痛剤が効かないほどのひどい腰痛や、治療を続けていてもなかなかよくならない腰痛に対しては、「神経ブロック注射」という治療が行われることもあります。治療法と、期待できる効果や副作用についてお伝えします。

神経ブロック注射とは

腰痛をもたらす原因となっている神経や、その周辺に局所麻酔薬を注射し、痛みを抑える治療法です。血流をよくする効果もあることから、筋肉の張りによる腰痛の解消も期待できます。主に、ペインクリニックや麻酔科や整形外科の外来で受けることができます。

腰痛は、主に骨や関節、靭帯、筋肉など、腰周辺のさまざまな組織が原因で起こります。

非特異的腰痛が約85%といわれるように、腰痛の原因ははっきりとしないことが多いです。しかし、どんな腰痛でも痛みがあると筋肉がこわばり、血管が収縮して血行が悪くなることから、酸素や栄養が組織へ十分に行き渡らなくなります。血液が淀むとブラディキニンやセロトニンなどの痛み物質が増え、痛みが増すことでさらに、筋肉・血管の収縮が促される…という悪循環に陥ることになります。また、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などでは、神経が圧迫されて炎症を起こしていますから、その炎症を鎮める目的で神経ブロック注射が行われます。

神経ブロック注射では、障害を起こしている部分に直に局所麻酔薬を注入し、神経を遮断することで、まず痛み自体をやわらげます。炎症による痛みが強い場合は、局所麻酔薬と一緒に炎症を抑えるステロイド剤も注入することで、症状を軽減させることもあります。この麻酔効果(痛みを抑える効果)は数時間しか持ちませんが、痛みの緩和により筋肉の緊張がゆるみ、血流が促されることから、二次的な痛みを取り除く効果も期待できます。このような理由から、実質的には数日から数週間の効果が実感できるとされていますが、効果の持続期間は個人差が大きいのが現状です。

痛み止めの薬などで、痛みを乗り切る

腰痛の薬物治療で主に使われる薬の種類

腰痛は、骨や関節、靭帯、筋肉のいずれかに、なんらかの障害があって起こることがほとんどなので、治療薬としては、痛みを緩和させる鎮痛剤がメインとなります。主な鎮痛剤には、以下のようなものがあります。

【非オピオイド系】非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs/エヌセイズまたはNSAID/エヌセッド)

非オピオイド系(※1)鎮痛薬に分類され、腰痛の治療薬として一般的に使われる薬剤です。痛みの原因物質を作り出す酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」の働きを妨げることで、痛みや炎症を抑え、熱を下げます。ステロイドではない抗炎症薬(消炎解熱剤)すべてが含まれます。主なものには、アスピリン(商品名:バファリンなど)、ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)、ジクロフェナク(商品名:ボルタレンなど)、座薬でも使われるインドメタシン(商品名:インダシンなど)があります。

※1:オピオイドとは、強い鎮痛作用のある医療用麻薬のこと。

急性腰痛などで一時的に服用する際には特に問題ありませんが、長く飲み続ける場合には、以下のような副作用に注意が必要です。

・消化器官の不調

非ステロイド性抗炎症薬には胃酸の分泌を増やしたり、胃粘膜の血行を妨げる作用があるため、胸やけ、消化不良、吐き気、下痢、胃痛などを起こすことがあります。長期に服用すると、胃炎や消化性潰瘍の原因になることもあります。

・出血

血小板の血液凝固作用を阻害する働きもあるため、消化管出血のリスクが高まります。

・体液の貯留

1~2%の人に、体液が排出されにくく手、足、顔などの腫れやむくみが起こる状態があったことが報告されています。長期の服用により、腎臓病のリスクが高くなる可能性があります。

・心臓と血管への影響

アスピリン以外の非ステロイド性抗炎症薬を大量、かつ長期に服用すると、心臓発作や脳出血などのリスクが高まることが報告されています。脚の血栓形成の副作用はほとんど無いと思われますので、削除された方が良いでしょう。

これらの副作用は、高齢になるほど現れやすいといわれています。最近は、胃腸障害を抑えた「COX-2選択的阻害薬」と呼ばれる新しいタイプも開発されているので、胃が弱い方、高齢の方はドクターや薬剤師に相談してみてください。

【非オピオイド系】アセトアミノフェン

アセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)は、非ステロイド性抗炎症薬のアスピリンとほぼ同じ鎮痛・解熱作用を持つ薬です。ただし、炎症に対する効果はほとんどありません。

血液の凝固作用や胃腸への影響がほとんどなく、副作用を心配せずに使える点がメリットとされていますが、大量・長期に服用した場合は、腎機能障害や肝臓障害を起こす可能性があるといわれています。

ぎっくり腰の治療法については『ぎっくり腰への鍼灸・針治療の内容と効果』をご覧ください。

ぎっくり腰を予防するには

ぎっくり腰(特に狭義のもの)は、同じ姿勢を長時間とったり、疲労や運動不足、冷え、肥満などがベースとなって筋肉のコリや背骨のゆがみが生じることで発症しやすいです。よって、一度治ったとしても、同じ状況が続けばまた再発することになります。予防や再発防止のためには、以下のようなことに配慮することが大切です。

・重いものを持ち上げるなど、腰に負担がかかる動作をする際は十分に注意する

・長時間の立ち仕事、座り仕事の場合は、時々休憩をとり、体を動かす

・前屈みや中腰の姿勢は腰にいちばん負担をかけるため、職業上やむを得ない場合などは、生活にストレッチをとり入れる

・脊椎(特に、腰部を支える腰椎)を支える周辺組織(関節や筋肉、靭帯)の機能を高めるよう、ウォーキングなどの適度な運動をとり入れる

・食事や運動による肥満の予防・解消を心がける

ぎっくり腰になると、強烈な痛みで一切動けなくなり、2~3日は仕事も家事も休むことになってしまいます。そのようなことにならないためにも、まずは予防を心がけましょう。

この病気・症状の初診に向いている科 整形外科