妊娠糖尿病患者の食事療法

更新日:2016/12/09

糖尿病が妊婦・子供に与える影響

妊娠糖尿病の治療の柱となるのは、食事療法により正しい食生活を送ることです。ドクター監修のもと、食事療法の目的と、ポイントとなる食事の「量・質・バランス」について解説します。

岡田昌子先生

この記事の監修ドクター

医師
岡田昌子先生

一般的な糖尿病(2型糖尿病)と同じように、妊娠糖尿病と診断された場合も「食事療法」が治療の基本となります。食事療法のポイントである食事の「量・質・タイミング」をご紹介します。

妊娠中の食事療法の目的

妊娠糖尿病とは、妊娠中に発見される糖代謝異常のことです。血糖コントロールが悪い状態が続くと、妊娠高血圧症候群や羊水過多症、流産、早産などのリスクが高くなるだけでなく、巨大児や低出生体重児、先天奇形、子宮内発育遅延など、胎児にも悪影響を及ぼしやすくなります。

血糖値とは、血液中の「ブドウ糖」の濃度のことですが、これは食事で摂取した糖質が分解されてできる物質です。そのため、血糖コントロールをするには、正しい食生活を送ることがとても重要になります。

妊娠糖尿病の食事療法は、次の4つのことを目的に行います。

(1)母体の血糖値の正常化。

(2)妊娠中の適正な体重増加と健全な赤ちゃんの発育に必要なエネルギーの付加と、栄養素の配分。

(3)母体の空腹時、飢餓によるケトーシス※を予防。

(4)授乳のための栄養補給。

※ケトーシス:脂肪を分解してエネルギーをつくり出す際に産生される「ケトン体」の量が多すぎて、排出できなかったものが血液中に溜まっている状態。

食事療法のポイント(1):食事の量

妊娠中は、母体と胎児の健康のために一定の体重増加が必要ですが、太り過ぎはNGです。1日に必要な総摂取カロリーを知り、それ以上は食べ過ぎないよう調節しましょう。

1日に必要な総摂取カロリーは、次の計算方法で求めることができます。

非妊娠時の標準体重×30kcal(標準体重=身長m×身長m×22)に、妊娠初期なら50 kcal、妊娠中期は250 kcal、妊娠後期は450 kcal、授乳期は350 kcalを付加したものが、1日に必要な総摂取カロリーとなります。

ただし、妊娠前のBMIが25以上ある肥満の妊婦さんの場合は、必ずしも付加量を加える必要はありません。逆に、妊婦体重が減少するような極端な食事制限もよくありません。

近年は、ダイエット志向の高まりや過度の食事制限などの影響によって、特に若い年代の妊婦に低栄養が多く見られる傾向があります。食べ過ぎは血糖コントロールにおいてよくありませんが、妊娠中の栄養不足も胎児の健康に悪影響を与えることがあります。

妊娠全経過を通して、標準体重×30kcalとすることが推奨されています。

食事療法のポイント(2):食事の質

胎児の体や機能を発達させたり、母体の健康を維持するためには、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維のうち、なに1つ不足してもいけません。妊娠中の食事でなによりも重要なことは、栄養バランスを整えることです。

献立を考える際に主食、主菜、副菜をそろえるようにすると、手軽に栄養バランスを整えることができます。

・主食…ご飯、パン、麺、芋などの炭水化物。

・主菜…肉、魚、卵、大豆製品などが主材料のおかずで、タンパク質や脂質の供給源。

・副菜…野菜、きのこ、海藻が主材料のおかずで、ビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源。

このうえで、できるだけ摂取を控えたい栄養素、しっかり補いたい栄養素を知ることも重要です。

控えたいもの

・糖質…血糖値を上昇させるので、できるだけ控えたい栄養素です。ただし、エネルギー源としては必要なものなので、ご飯、パン、麺などの主食は極端に減らさず、甘いものを控えるようにしましょう。

・塩分…塩分の摂り過ぎは「妊娠高血圧症候群」のリスクを高めます。薄味を心がけ、1日の塩分摂取量を6~8g程度に抑えましょう。

積極的に摂りたいもの

・鉄分…赤血球のヘモグロビンの構成成分で、酸素を全身に供給するために欠かせない栄養素です。妊娠中は胎児に血液がどんどん運ばれるため、鉄分が不足しやすくなります。普段より意識的に摂取しましょう。

・カルシウム…胎児の骨や歯をつくるうえで欠かせない栄養素です。日本人にはカルシウムが不足している人が多いので、妊娠中は特に意識して摂取しましょう。

・葉酸…胎児の細胞分裂や成長を促進し、発育を助ける栄養素です。また、妊娠初期に積極的に摂ることで、胎児の先天性異常の1つである「神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)」の発症リスクを抑えることができます。

・タンパク質…人間の体の主成分で、筋肉や臓器、皮膚、血液などをつくるのに欠かせない栄養素です。魚類や大豆製品、卵からの摂取がおすすめです。肉類にも多く含まれますが、これには脂質も多いので注意が必要です。食べるときは、脂身の少ない鶏肉(皮なし)やササミ、豚・牛の赤身ヒレなどを選ぶといいでしょう。

・食物繊維…ブドウ糖の吸収速度をゆるやかにして、食後の急激な血糖値の上昇を防ぐ働きがあります。また、便秘の予防にも役立つので、ホルモンの影響や子宮による腸の圧迫、運動不足などで便秘になりがちな妊娠中は特にしっかり摂りたい栄養素です。

食事療法のポイント(3):食事のタイミング

空腹時に一気にたくさん食べると、食後の血糖値を急上昇させる原因となります。また、空腹時は母体の血糖が胎児に優先的に供給されるため、母親自身はエネルギー不足に陥りやすくなります。すると、代わりのエネルギーをつくるために脂肪が分解されるのですが、このときに副産物として生み出される「ケトン体」が血液中に増えすぎると「糖尿病性ケトアシドーシス」という危険な病気を合併することがあります。妊娠糖尿病が重症の場合は、1日のカロリーを3回ではなく6回くらいに分け、少量ずつ食べることが推奨されています。

※糖尿病性ケトアシドーシスについて、詳しくは『妊娠糖尿病が妊婦にもたらす合併症(4)糖尿病性ケトアシドーシス』をご覧ください。

注:ここで紹介している内容は、日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインなどに基づいたものになります。糖尿病の食事療法については、近年、糖質制限によるものも提唱されております。医師の支持者が増加していること、従来の糖尿病食よりもHbA1cの改善度合が高いという試験結果が出ていることなどを踏まえ、従来の糖尿病食と同じく、今後のさらなるエビデンス構築が期待されています。

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