頻尿を招く前立腺肥大症の原因と対策

更新日:2017/03/29 公開日:2015/09/28

過活動膀胱の原因と治療法

男性の過活動膀胱を招くといわれている前立腺肥大症は、55歳以上男性のうち5人に1人が悩む病気といわれています。前立腺肥大症は、なぜ起こるのでしょうか?そこでドクター監修のもと、前立腺肥大症の原因と日常生活でできる対策法について紹介します。

前立腺肥大症は、60歳以上の人に多く見られ、30~40代の男性にはめったにみられないといわれています。55歳以上になると、約5人に1人が悩む病気ともいわれています。過活動膀胱を招くといわれている前立腺肥大症の原因と対策について解説します。

前立腺肥大症の原因

前立腺は膀胱の下にあります。この前立腺が肥大することで尿道を圧迫し、さまざまな尿のトラブルを招きます。では、なぜ前立腺は肥大するのでしょうか?

さまざまな仮説はあるものの、残念ながら今の段階ではその原因は明らかになっていません。ただ、50歳以降から徐々に症状が現れ、年齢とともに発症する人が多いことから、加齢と男性ホルモンをはじめとする性ホルモンが影響を及ぼしていることは確実と考えられています。

30~40代の方には、前立腺肥大症の症状はめったにみられません。50~65歳の男性で約15%、65歳以上になると約25%の方が中等症(投薬以上の治療が必要な病状)以上の前立腺肥大症になると想定されます。また、事故や病気などで思春期前に精巣を失った方は年齢を重ねても症状が出ないことから、性ホルモンが原因のひとつとして考えられているのです。

前立腺肥大症の症状を軽減するための対策とは

では、前立腺肥大症は「年齢によるもの」とあきらめなければならないのでしょうか?

実はいつもの日常生活の中の、ちょっとしたことに気をつけながら生活することで、症状を軽くなることがあります。その対策を紹介しましょう。

  • 毎日散歩をしたり、できるだけ階段を使ったりなど、普段から歩くように心がけましょう。簡単な体操などで体を適度に動かすことも有効です。
  • 水分補給は適度に行い、くれぐれも摂り過ぎには注意しましょう。
  • 最近は、便秘で悩む男性も少なくありません。便秘にならないよう、食物繊維を摂ったり、60歳以上になったら肛門を1日に20~30回くらい締めたりゆるめたりする運動(骨盤底筋トレーニング)を行いましょう。
  • 体の冷えは万病のもとです。特に下半身を冷やさないように注意しましょう。
  • 排尿回数は、1日4回から8回くらいに調節し、がまんしすぎたり、しなさすぎたりしないようにしましょう。
  • 辛いものなどの刺激物やアルコールを摂り過ぎないよう、ほどほどに抑えましょう。
  • デスクワークや車の運転など、座った姿勢を長時間とらないようにしましょう。どうしても長くなる場合でも、間に休憩を入れて適度に屈伸運動などをして体を動かしましょう。

前立腺肥大症の全ての人に治療が必要なわけではありません。生活指導と経過観察で済むケースもたくさんあります。また、前立腺がんの症状は、前立腺肥大症の兆候と似ていますから、50歳を過ぎたら年に1回は、前立腺がんの検診を受けましょう。また、いつもと違う尿のサイン(頻尿、排尿困難、血尿等)に気付いたら、早めに泌尿器科を受診することをおすすめします。

前立腺肥大が尿の通過障害を引き起こすメカニズム

前立腺肥大症で尿が出にくくなるメカニズムには2種類あります。1つは、肥大した前立腺によって尿道が物理的に圧迫されて閉塞するメカニズム。もう1つは、前立腺平滑筋と呼ばれる筋肉が、交感神経の刺激によって過剰に収縮して尿道を圧迫して閉塞するメカニズムです。これらのメカニズムを考慮して、治療に使う薬を選びます。

前立腺肥大症の薬物治療に使われる薬について

前立腺肥大症の症状を改善する薬や、前立腺を小さくする薬を単独で、または組み合わせて使います。

α1アドレナリン受容体遮断薬

症状を改善する薬で、前立腺肥大症に対しもっとも標準的に用いられているお薬です。前立腺平滑筋や膀胱の緊張をゆるめて、過剰な収縮を抑え、尿道を拡げて排尿しやすくします。比較的効果がすぐに現れますが、起立性低血圧やめまいなどの副作用が起きることがあります。

5α還元酵素阻害薬

前立腺を小さくする作用のある薬です。男性ホルモンは前立腺内で、5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変換され、前立腺を肥大させると考えられています。この5α還元酵素の働きを抑える薬です。即効性はありませんが、1年間で前立腺が25~35%縮小すると報告されています。

この薬を飲むと、前立腺がんの指標である前立腺特異抗原(PSA)の値が低下するので、投与前に前立腺がんの除外をしておくことが重要です。

抗アンドロゲン薬

前立腺を小さくする作用のある薬です。精巣からの男性ホルモンの分泌を抑えさらに、前立腺内に取り込みを抑える薬です。勃起障害や性欲低下などの副作用があります。

ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬

症状を改善する薬です。泌尿器や生殖器、血管などの壁にあり、緊張状態を持続させたり、収縮をコントロールしている「平滑筋」の緊張を緩めるように働くcGMPという物質は、PDE5によって分解されます。PDE5阻害薬にはcGMP

の分解を抑える効果があり、膀胱や前立腺、尿道などの平滑筋の緊張を緩めて症状を改善します。

その他

昔から使用されている植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬などがあります。その効果は、十分には解明されていませんが、前立腺の炎症などを軽減すると考えられています。

薬の飲み合わせに注意

α1受容体拮抗薬は、血管を拡張させて血圧を下げる効果があります。前立腺肥大症に使用するα1受容体拮抗薬は、血圧低下などの副作用は少なくなっていますが、高血圧の治療で種々の降圧剤を服用している場合には、血圧を下げる効果が強く出ることがあるので、ドクターに処方されていることを伝えるようにしましょう。また、かぜ薬など中に一部、副作用として尿が出にくくなる薬があるので、排尿症状のある方、前立腺肥大症のある方は、注意が必要です。必ず尿のトラブル以外の症状で受診した場合でも、ドクターに相談するようにしましょう。

前立腺肥大症の手術について

前立腺肥大症の手術方法は多数ありますが、体への負担が少ない手術方法が一般的です。

薬物治療で改善が望めない場合は手術が必要

飲み薬だけでは、症状の改善が見込めない方、中等症~重症の症状のある方、尿閉や前立腺肥大症が原因の合併症がある方には、手術がすすめられます。尿が出にくい、残尿があるなど排尿障害に対して、効果のある治療法です。

もっとも広く一般的に行われている方法として、尿道から器具を挿入して大きくなった前立腺を切除する経尿道的前立腺切除術(TUR-P)があります。さらに、新しい手術方法として、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)があります。経尿道的にレーザーファイバーを挿入して、レーザー光で前立腺の内側をくりぬく方法です。前立腺が大きくても手術が可能で、出血も少ないのですが、手術時間が長くなる傾向です。前立腺が非常に大きい場合には、開腹して切除する場合もありますが、体に対する負担が大きく入院期間も長くなります。

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)とは

TUR-Pは前立腺の大きさがあまり大きくない中等症までの前立腺肥大症に対して、もっとも広く行われている手術方法です。通常、下半身だけの腰痛麻酔で、先端にループ状の電気メスの付いた内視鏡を尿道から挿入し、電気メスで前立腺腫組織を切除します。小さい切片に切り分けて尿道から取り出します。取り出した組織を詳しくしらべ前立腺癌がんの有無をチェックします。尿道カテーテルを数日留置し、平均入院期間は1週間前後です。

経尿道的前立腺切除術の合併症について

手術による出血で低血圧や水中毒(低ナトリウム血症)により一時的な意識障害や嘔吐などがみられることがあります。必要に応じてあらかじめ準備しておいた自己血輸血※や利尿剤などを投与することで改善されます。術後には、血尿や炎症による痛み、発熱などがあります。また、手術を受けた方は、射精の際に精液が膀胱へ逆流する逆行性射精が起こりますが、体に害があることはありません。

手術後の注意点

手術後2~3週間以内の再出血を防いだり、血尿や尿路感染症の予防のために、いくつか注意する点があります。

1日に1500~2000mL程度の水分を摂るようにする

飲酒・激しい運動を控える

射精をしない

自転車・バイクなどの股間への圧迫を避ける

サウナや温泉は出血がおちつくまでは控える

前立腺肥大症の手術は、体の負担が少ない新しい方法が開発されています。また、再手術が少なく、効果が持続するので、ドクターと相談のうえ、手術での治療も考慮するとよいでしょう。

※輸血が必要となる恐れがある患者では、あらかじめ

自分の血液を貯血しておき(これを自己血貯血と言います)対処します。

前立腺肥大症の症状の現れ方

前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて狭くなり、排尿に関連するさまざまな症状が現れます。下部尿路症状といい、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つに分けられます。

蓄尿症状

昼間トイレに行く回数が多くなる(昼間頻尿)、夜間に1回以上トイレに起きる(夜間頻尿)、急にトイレに行きたくなり我慢することが困難(尿意切迫感)、少しもれてしまう(尿失禁)などの症状です。

排尿症状

尿の勢いが弱い(尿線細小)、尿が途切れる(尿線途絶)、尿を出すまでに時間がかかる、尿を出すためにいきむ(腹圧排尿)などの症状です。

排尿後症状

残尿感や、排尿直後に尿がもれる症状(排尿後滴下)です。

症状は3期にわかれる

前立腺肥大症は進行性の病気で、排尿機能の障害の程度によって、3期に分けられます。

第1期(膀胱刺激期)

尿道や膀胱を圧迫して膀胱が敏感になり、頻尿、尿意切迫感、下腹部の不快感が現れます。尿の勢いは保たれていて残尿も少ない段階です。

第2期(残尿発生期)

徐々に排尿しづらくなり、尿が出し切れずに膀胱に残るようになります。残尿が原因で尿路感染を発症することもあります。

第3期(慢性尿閉期)

膀胱内に尿が充満しているにもかかわらず、尿が出せない苦しい状態となり、これを尿閉と言います。尿閉の期間が長期間におよぶと腎機能が障害されるようになります。

国際前立腺症状スコアに基づき病気の重症度を評価する

前立腺肥大症の診断には、患者の訴える症状を客観的に評価する必要があります。それには、国際前立腺症状スコア(I-PSS)を用いて評価します。患者の問診から、残尿感や頻尿など7つの症状について、最近1か月間で自覚した症状を、「まったくない」の0点から「ほとんど常に」の5点の6段階で点数化し、軽症、中等症、重症の3段階に分類します。治療の方針を決める目安となり、治療効果の評価にも用いられます。

前立腺がんとの違い

前立腺がんは、男性が罹患するがんの第1位です(出典 2015年国立がん研究センター「がん情報サービス」)。前立腺肥大症は、前立腺内腺と呼ばれる前立腺の内側の組織が大きくなるのに対して、前立腺がんは外腺と呼ばれる外側の組織に腫瘍が好発します。初期の前立腺がんは自覚症状がほとんどなく、前立腺肥大症と同じような症状が現れる頃には、すでに進行していることが少なくありません。

前立腺特異抗原(PSA)検査は、前立腺がんをスクリーニングする血液検査で、早期に前立腺がんを発見することができます。50歳以上の男性は定期的にPSA検査を受けることがすすめられています。

この病気・症状の初診に向いている科 泌尿器科

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