不妊治療(3)ホルモン療法

更新日:2017/04/14 公開日:2015/09/28

不妊・不妊症

不妊治療を行っていくためのステップの中には、さまざまな治療法が存在します。その中で使われているホルモン療法には、どんな作用があるのでしょうか。ドクター監修のもと、不妊治療におけるホルモン療法について解説します。

藤東淳也先生

この記事の監修ドクター

藤東クリニック 院長
藤東淳也先生

不妊治療にはさまざまな方法があります。通常、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精といった順でステップアップしていきますが、それ以前に、ホルモン療法で不妊が解決する場合もあります。そこで、ここでは、ホルモン療法についての利点や注意点を解説していきます。

ホルモン療法とは

本来ならば自然に任せるホルモンのサイクルを、薬によって疑似的に操る治療法です。たとえば、生理不順や生理痛で悩んでいる方や、高齢の方、「黄体機能不全」や子宮内膜の増殖が弱いといった「ホルモン異常症」の方などに、ホルモンの分泌を整えることで妊娠する可能性を高めていきます。たとえば、妊娠中ではないのに母乳を促す「乳汁分泌ホルモン」が高いと、排卵が抑制されてしまい、生理不順を起こして不妊の原因となります。この場合は、このホルモンを抑える薬を使います。また、子宮内膜の増殖が弱い方にはエストロゲンを補充する、というように理想的なホルモン分泌をサポートすることが目的です。

一般的にホルモン療法と呼ばれる治療では、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを合わせたピルを使います。比較的よく使われているピルは、低用量ピルの「マーベロン」や中用量ピルの「プラノバール」などです。また、「カウフマン療法」と呼ばれる治療は、ホルモンの周期に合わせて低温期にエストロゲンの補充を、高温期からはプロゲステロンを補充して、正常な生理サイクルを導きます。カウフマン療法自体には排卵誘発作用はありませんが、3か月〜6か月間治療後、リバウンド現象を利用して、その後の自然排卵周期を期待することができます。

症状別に見るホルモン治療

不妊治療に関するホルモン治療について、症状別に見ていきます。

排卵障害の治療

不妊を引き起こす排卵障害には、それぞれの症状にあわせて体に負担のかからないホルモン療法を選びます。先述の「カウフマン療法(無排卵や無月経などが対象)」のほか、以下のような治療法があります。

●クロミフェン療法・・・月経不順の方や、時々排卵のない方に対し、内服による排卵促進剤「クロミフェン」を使用します。

●HMG-HCG療法・・・クロミフェン療法で排卵に至らない場合に注射剤HMGもしくはHCGを投与します。

●FSH製剤・・・排卵が行われず卵巣内に未熟な卵胞が溜まる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの場合にFSH(卵胞刺激ホルモン)のみの注射剤を投与します。

排卵促進剤は排卵障害の原因や程度によって、いくつかの種類を組み合わせて使用するのが通例です。また、原因によっては「プレドニン」などの副腎皮質ホルモン剤を併用することもあります。

着床障害の治療

体外受精などで良好な受精卵を移植しても着床しない場合は、着床障害が疑われます。着床障害の原因が高プロラクチン血症、黄体機能不全の場合は、ホルモン測定を行ったうえで黄体ホルモンを投与します。

子宮内膜症の治療

不妊症の人の3割から4割が「子宮内膜症」であるといわれています。子宮内膜症とは子宮以外の場所で子宮内膜が増殖し、腹腔(おなか)に溜まって癒着を起こしたり、炎症・痛みを引き起こす病気です。こうした症状には排卵を抑制し、エストロゲンの分泌を抑える「スプレキュア」や「リュープリン」などが投与される場合があります。

造精機能障害の治療

男性不妊症のなかでもなんらかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている「非閉塞性無精子症」の場合は、ホルモン補充療法で精子形成を促すことがあります。

ホルモン剤服用の際の注意点

ホルモン剤の服用によって吐き気や嘔吐、胃痛などの副作用が現れる場合があります。慣れると症状が落ち着くことも多いのですが、変わらない場合は飲む時間帯を変えたり、ときには使用を中止することもあります。何か異変を感じたら、かかりつけの医師に確認しましょう。

また、薬を飲み終えてから3~4日経つと少し出血がありますが、それは月経です。いつもの症状と異なるため、ときには気付かない場合もあります。月経が来たことをきちんと把握するためにも、ホルモン療法を受けた後は、基礎体温を付けてホルモンのサイクルを確認するようにしましょう。

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