甘く考えないで!溶連菌感染症の感染力と感染経路

更新日:2016/12/09

溶連菌感染症の基礎知識

溶連菌にくり返し感染する理由や、感染の仕方をしっかりと理解することが、溶連菌感染症の予防につながります。ドクター監修のもと、溶連菌の感染力と感染経路、症状についてお伝えします。大人も子どもも、溶連菌の感染力には十分に注意しましょう。

溶連菌とはどのような菌なのかについて、溶連菌が原因で引き起こされる病気とともにお伝えします。

溶連菌とは

溶連菌は、溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)の略で、細菌学的な分類法によって付けられた名称です。血液中で赤血球を破壊するストレプトリジン0という毒素をつくる細菌で、溶血性という名前のとおり、血液を混ぜた培地のうえで培養すると血液を溶かす溶血反応を示します。また、丸い玉が連なって増殖するという性質があることから、連鎖球菌と呼ぶようになったと言います。

溶連菌にはα溶血とβ溶血をする2種類があり、人に感染症を起こす性質があるのはβ溶血A群・B群・C群・G群などです。溶連菌感染症の9割以上は、β溶血A群によるものです。また、一般的に溶連菌感染症として知られているのは、A群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)が原因の感染症です。

名前だけ見るととても恐ろしい菌のように思えますが、実は意外とありふれた細菌で、体内で共存していくことが可能な場合もあります。このように、溶連菌に感染しても症状が特に起こらないことを不顕性感染と言います。症状はないけれど、のどに溶連菌が存在している小学生は1割ほどいる、との報告もあります。

溶連菌が引き起こす病気

溶連菌に感染すると、発熱や咽頭炎、皮膚症状などを引き起こすことがあります。これが、溶連菌感染症です。溶連菌によって引き起こされる合併症には、主に次のようなものがあります。

粘膜の病気

・咽頭炎

咽頭に炎症が起こり、赤く腫れる症状。

・扁桃炎

38度以上の熱、咽頭の痛み、倦怠感などが起こる症状。

・猩紅熱(しょうこうねつ)

寒気を感じた後に38~39度の高熱が出る症状。その後、赤い発疹が全身に広がることも。

・中耳炎

耳の痛みと発熱を起こす症状。進行すると耳だれがでる場合も。

・副鼻腔炎

副鼻腔に膿(うみ)がたまって粘膜が腫れあがる症状。

皮膚・軟部組織の病気

・伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)

「とびひ」と呼ばれる皮膚感染症。体に水泡ができ、かゆみをともなう。接触によって感染する。

・蜂窩織炎(ほうかしきえん)

皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけての化膿性感染症。広範囲に赤く腫れ、熱感と痛みを持つ。深い潰瘍ができることもある。

・丹毒(たんどく)

皮下組織よりも浅いところに起こる感染症。皮膚に赤い腫れが広がっていき、高熱や倦怠感もともなう。

その他の病気

・肺炎

発熱や咳、痰(たん)など風邪と似たような症状から始まる。呼吸困難を引き起こすことも。

・菌血症

血液中に細菌が流れ込んでいる状態。進行して敗血症になり、臓器不全をもたらす恐れがある。

・トキシックショック症候群(TSS)

非常に短い期間で思い病態を引き起こす敗血症※のひとつ。突然の高熱をともなった発疹や倦怠感、嘔吐、下痢などの症状が出る。すぐに治療をうけないと血圧低下などのショック症状にいたることも。

※(敗血症)~肺炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)など、感染症を起こしている部位から血液中に病原菌が入り込み、重篤な全身症状が引き起こされる病気。

・リウマチ熱

関節炎や心臓の弁膜障害の原因になります。

・急性糸球体腎炎

腎不全の原因になります。

溶連菌は抗生剤にとても弱い菌であるため、抗生物質が特効薬です。合併症を引き起こさないためにも、早めに適切な治療を受けましょう。

小児と成人の溶連菌感染症(咽頭炎、扁桃炎)の特徴的症状、イチゴ舌、のどの痛み、発疹について

溶連菌感染症の特徴的な症状に、「のどの痛み」「発疹」「イチゴ舌」などがあげられます。ここでは、それぞれの症状について詳しく解説します。

溶連菌によるのどの痛み

のどの痛みは、溶連菌感染症(咽頭炎、扁桃炎)の主症状とも言えます。溶連菌がのどに感染して、比較的強いのどの痛みや発熱を生じさせます。

また、溶連菌の感染により、のどが赤く腫れ、扁桃に白色の滲出物(しんしゅつぶつ:扁桃をおおう分泌物)がつくことがあります。

一般に咽頭炎・扁桃炎では、高熱とともに扁桃に白色滲出物が付着することも多いことから細菌感染とみなされやすいのですが、小児の滲出物をともなう扁桃炎を調査した研究では、ウイルスが42%(そのうちアデノウイルスが約46%)、溶連菌が約12%と報告されています。つまり、この滲出物があるか否かは、細菌感染の有無を示唆するものではないのです。

小児の場合、成人と異なる症状が出ることも

小児の場合、時に吐き気吐、腹痛などの症状が前面に出ることもあります。

危険なサイン

これらは、緊急性の高い病気(喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍など)の可能性も考えた対応が必要になりますので、かかりつけ医がいる方は、すみやかに相談し、指示を仰ぎましょう。

かかりつけ医がいない場合は、地域の総合病院や救急病院などへ、受診する前に、まず相談しましょう。

危険なサイン(緊急対応も考慮した対応が必要となる症状)

・のどの痛みがつらい(特に「人生最大の咽頭痛」は、迷わず受診)

(飲み込む動作をした際ののどの痛み(嚥下時痛)も注意が必要で、痛みが強かったり、悪化傾向があるなら、早めに受診)

・つばが飲み込めない(小児の場合、よだれを流している)

・くぐもった声(話す声が不明瞭になったなど)

・呼吸が苦しい(呼吸窮迫)

・息をするときに音がする(喉頭喘鳴(stridor))

・口を大きく開けられない(開口障害)

セルフケアのコツ

・のどが痛いときには、刺激を与えるような熱いものや、辛いものは控えましょう。
・十分に水分をとりましょう(水や麦茶などの刺激の少ないもの)。
・豆腐やおかゆなど、のど越しのよいものだと、食べやすいでしょう。
・極端に体力が低下している時以外は、甘いものの食べ過ぎは感染症の症状を悪化させるリスクになるので避けましょう。

溶連菌による発疹(紅斑)

小児に見られる症状です。

A群β溶血レンサ球菌感染(咽頭感染が最多)によって産生されるエリスロトキシンが、全身の特徴的な発疹(紅斑)を引き起こします。この症状を「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼びます。看病をする親としては、見ていてつらいものですが、結論から言いますと、のどに感染した溶連菌が、のどの症状に加えて、この発疹を伴ったとしても、伝染力や予後(病気の進行具合,治療の効果などすべてを含めた見通し)に違いは生じません。

また、理由は不明ながら,猩紅熱は近年比較的まれな疾患になってきています。

※疾患(しっかん)とはいわゆる病気のことです。

皮疹(紅斑)の特徴と自然経過

典型的な場合,紅斑は発病の当日から2日目頃に上半身に現れ,四肢(手足)に広がる。ワキや股の内側など摩擦の多いところから出現しやすい。

紅斑は小丘疹(数mm大のポツポツ)からなる。皮膚をなでると特徴的な紙やすり状の感触がある。

口囲蒼白,イチゴ舌などの症状をともなう。

紅斑は、発病から6~9日後には沈静化し,その数日後に手のひらや足のうらに落屑(乾燥した皮膚の表層が、ポロポロとはがれ落ちる)がみられる。

麻疹や川崎病、全身性のアレルギー反応(たとえば、薬疹)などと症状が似るため、鑑別(区別をつけること)が必要となる。

セルフケア

溶連菌感染症が原因であれば、基本的に塗り薬は必要ありません。

かゆみがある場合には、抗ヒスタミンのぬり薬などが処方されます。

溶連菌によるいちご舌

前述した「猩紅熱」の際、皮疹とともに出現する症状の1つとしてイチゴ舌があります。

イチゴ舌の特徴と自然経過

・溶連菌感染の発病初期に、白いイチゴ舌(赤い乳頭をともない白い外被(苔のような、もの)をもつ舌)として出現します。発病3~4日目には、白い外被が脱落し、赤いイチゴ舌(赤い乳頭をともなう赤い舌)となります。

・川崎病などと症状が似ているため、鑑別(区別をつけること)が必要となります。

いずれの症状においても、溶連菌感染を治療する抗生物質の服用はとても重要です。

しっかりと治療するためには、症状がおさまっても指示された期間はしっかりと最後まで抗生物質を服用しましょう。

溶連菌感染症の治療方法

どの科に受診すればよいか?

溶連菌による咽頭炎、扁桃炎の代表的な症状は、のどの痛みや発熱です。多くの場合、内科や小児科で対応可能です。

ただし、のどの痛みが激しい場合やつばが飲み込みづらいなどの強い症状がある場合は、耳鼻科での対応が必要になることがあります。迷う場合は、かかりつけや受診前に近隣の医療機関に相談しましょう。

治療の概要

診察の結果、溶連菌に感染している可能性が高いと判断された場合、抗生物質による治療が行われます。抗生物質が効果的に作用すれば、2日後までには、熱やのどの痛みなどの症状が、徐々に改善しはじめます。

しっかり治療するには

溶連菌をしっかり治療するには、処方された抗生物質をすべて飲みきる必要があります。なぜなら、抗生物質で治療する目的には、次のような理由があるからです。

・合併症の予防(扁桃周囲膿瘍、咽頭後膿瘍、中耳炎・副鼻腔炎など)

・リウマチ熱の予防

など。

特に、リウマチ熱の予防には、抗生物質を飲み続ける期間を十分に設けることが効果的とされています。(※出典元2)ですので、熱や喉の痛みなどの症状がなくなっても、油断せず、指示されたとおりに服用してください。

ただし、抗生物質を飲んで3日間経過しても、症状が改善しない場合は、合併症が起きていないかなどを判断するために再評価が必要ですので、同じ医療機関に相談しましょう。

抗生物質を長期間服用すると、腸内細菌のバランスが崩れ、下痢をしたり体調不良の原因にもなります。腸内細菌のバランスを正常にもどすために、抗生物質と一緒に整腸剤も一緒に処方してもらったり、その後の食事で発酵食品(味噌、納豆、塩麹、漬け物など)を十分に摂取されることをお勧めします。

大人にも感染する溶連菌

溶連菌による咽頭炎、扁桃炎は、3歳以上の幼児・学童に多い病気です。しかし、小児特有の病気というわけではありません。抵抗力の弱い妊婦を含め、大人も感染しますので、家族内で発症した場合は、下記のような手段で、感染拡大の予防につとめましょう。

溶連菌の感染力と感染経路について

溶連菌は、感染症を生じる確率が高い細菌です。ここでは、どの程度の感染力があり、どのような経路によって感染するのかについてお伝えします。

溶連菌の感染力

溶連菌の感染力はとても強いため、溶連菌感染症は流行しやすい疾患です。流行情報に触れたことのある方も少なくないでしょう。また、感染力が強いだけでなく、くり返しかかることもあります。これは、抗体をつくる抗原が異なる溶連菌が80種類以上もあるためです。そのため、溶連菌感染症の発症は幼児や学童に多いですが、大人になってから再び発症することもあります。

溶連菌感染症で高熱が出ている間は、特に他人への感染力が高まっていると考えてください。溶連菌の感染力は、発症し始めの急性期がもっとも強いといわれています。急性期に兄弟間で感染する確率は、およそ25%と報告されているほどです。

子ども同士の感染だけでなく、大人へも感染することは先ほどお伝えしたとおりです。中でも、抵抗力が低下している方(高齢者や持病を持つ方など)や妊婦は感染しやすいため、十分な注意が必要です。

ただし、溶連菌に有効な抗生物質を服用し始めて24時間ほどすると、感染力は弱まってきます。発熱やのどの痛みといった症状もやわらいでくるでしょう。抗生物質の服用は、症状が治まったからと途中でやめてはいけません。およそ10~14日分の抗生物質を処方されるのが一般的ですが、再発や合併症を防ぐためにも、処方されたものはすべてしっかり飲みきりましょう。一般的な風邪とは対処法が異なりますので、必ずドクターの指示にしたがうよう注意してください。

溶連菌の感染経路

溶連菌は、体内に入ることで感染します。侵入しやすいのは、鼻やのど、胃、腸などの粘膜からです。

体に細菌が入り込むと、細菌を追い出そうとする防衛反応により鼻水や咳(せき)などが起こります。つまり、鼻水や咳には細菌がたくさん含まれているということ。これらが他人に付着することで、感染していくのです。

また、溶連菌は食品でも増殖するため、溶連菌が付着した食品を介して感染する場合もあります。集団感染の原因になるので、感染者の咳や唾液などの飛沫が食品に入ることのないよう、注意が必要です。

接触感染にも気をつけてください。溶連菌によって、とびひなどの皮膚感染症になった場合は、他人との接触を避けるようにしましょう。タオルなどの共有もいけません。

子どもに多い溶連菌は、一緒にいる時間の長い兄弟間での感染がもっとも多くなります。そのため、兄弟も一緒に検査を受けておくと安心でしょう。溶連菌に関する予防接種はないので、手洗いやうがいといった基本的な予防をしっかり行いましょう。

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