「人食いバクテリア」と恐れられる劇症型溶連菌ってなに?

更新日:2016/12/15 公開日:2015/10/30

溶連菌感染症の基礎知識

突然発症し死に至ることの多い「劇症型溶連菌感染症」が、急激に増加していると言います。「人食いバクテリア」とも呼ばれるこの病気について、ドクター監修の記事にてお伝えします。正しい対処法と、病気の特徴を理解しておきましょう。

溶連菌とは

溶連菌は、溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)の略で、細菌学的な分類法によって付けられた名称です。血液中で赤血球を破壊するストレプトリジン0という毒素をつくる細菌で、溶血性という名前のとおり、血液を混ぜた培地の上で培養すると血液を溶かす溶血反応を示します。また、丸い玉が連なって増殖するという性質があることから、連鎖球菌と呼ぶようになったと言います。

溶連菌にはα溶血とβ溶血をする2種類があり、人に感染症を起こす性質があるのはβ溶血A群・B群・C群・G群などです。溶連菌感染症の9割以上は、β溶血A群によるものです。また、一般的に溶連菌感染症として知られているのは、A群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)が原因の感染症です。

名前だけ見るととても恐ろしい菌のように思えますが、実は意外とありふれた細菌で、体内で共存していくことが可能な場合もあります。このように、溶連菌に感染しても症状が特に起こらないことを不顕性感染と言います。症状はないけれど、のどに溶連菌が存在している小学生は1割ほどいる、との報告もあります。

しかし、今回の劇症型溶連菌感染症は、通称「人食いバクテリア」とも呼ばれる恐ろしい病気です。溶連菌が原因となる病気には

子供がよくかかる溶連菌感染症がありますが、症状や危険性はまったく異なります。劇症型溶連菌感染症の症状と現状について、しっかり把握しておきましょう。

「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶連菌感染症とは

劇症型溶連菌感染症を発症すると、腕や脚に痛みが起こります。初期症状は風邪に似ていますが、筋肉や皮膚、内臓などの細胞が壊死されていくのがこの病気の特徴であり、恐ろしいところです。

壊死のスピードは1時間に約2~3cm。信じられない速さで細胞を破壊し、組織を殺していきます。早い場合には、発症してからたった24時間で死に至ることもあるほどです。これが、劇症型溶連菌感染症が「人食いバクテリア」と恐れられる理由です。

ただし、発症してすぐに抗生物質を投与し、壊死した部分を切除すれば治療できる可能性もあります。

劇症型溶連菌感染症の原因となるのは「A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)」で、上気道や肛門が感染経路となります。抗生物質が有効な細菌であることから、現代の先進国においては、この細菌が人間の体に大きな問題を及ぼすことはほとんどないと考えられていました。実際に、この菌が原因となる猩紅熱(しょうこうねつ)やリウマチ熱による死亡率は激減しています。

しかし、1990年代後半から、劇症型溶連菌感染症の発生が先進国でも数多く報告されるようになりました。これは、年齢に関係なく、健康な人にも突然発症します。そして、前述のような恐ろしい症状が急激に進行し、死に至ることが多いという深刻な病気なのです。

劇症型溶連菌感染症の現状と注意点

日本における最初の感染被害例は、1992年に見られました。それ以降日本では、毎年50~60件の劇症型溶連菌感染症が報告されており、2015年には過去最多の患者数になっています。この年の劇症型溶連菌感染症の患者数は、8月の時点で291人。この急激な増加の理由は、明らかになっていません。劇症型溶連菌感染症による死亡者は、およそ30%と報告されています。

通常の溶連菌感染症であれば、抗生物質を用いた治療法が確立しており、重大な合併症を防ぐための対策もなされています。同じA群溶血性連鎖球菌であっても、傷口やのどなどから血液中に入り込み、劇症型したときが問題となるのです。ただし、ありふれた溶連菌がどのようにして劇症型になるのかについては、今のところ明らかになっておりません。

感染経路もはっきりしないケースがほとんどですが、予防対策のためにも、手洗い・うがいはしっかりと行いましょう。手足に赤みをともなった痛みがでる、傷が化膿して発熱するなど異変が感じられた場合は、早めに医療機関を受診してください。進行スピードの速い劇症型溶連菌感染症は、少しでも早く適切な治療を受けることが重要です。

劇症型溶連菌感染症についてのまとめ

溶連菌は、咳(せき)やくしゃみなどで発生する細かい水滴(飛沫)に多く含まれます。そのため、飛沫感染が主ですが、皮膚の接触や溶連菌に汚染された食品を介して経口感染する場合もあります。

現在のところ、感染経路が不明な劇症型溶連菌感染症ですが、日常生活でのうがい、手洗いはもちろん健康的な生活を心がけて、体のどこかに異変を感じたら、早めにドクターへ相談するとよいでしょう。

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