梅毒とは?その原因・症状・検査・治療・予防を分かりやすく解説

更新日:2017/11/28 公開日:2016/02/29

梅毒の基礎知識

梅毒は、主に性行為で感染する病気です。感染すると、どんな症状が現れるのでしょうか?また、男女によって症状に違いはあるのでしょうか?今回は、ドクター監修のもと、梅毒の具体的な症状や原因、治療や検査についてご紹介していきます。

ヘルスケア大学参画ドクター

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梅毒とは

梅毒(ばいどく)は、細菌の一種である「梅毒トレポネーマ」(学名:Treponema pallidum subspecies pallidum、略してTP)が感染することによって発症する感染症です。もっとも多い感染経路は性行為(類似の行為を含む)で、梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜の小さな傷口から侵入することで感染します。

梅毒は、かつては「不治の病」として非常に恐れられていた病気です。治療薬が発達したことで患者数が激減したため、現在では、「昔の病気」というイメージを持っている人が多いかもしれません。

しかし、感染症発生動向調査によれば、1999~2012年までは年間の梅毒報告数が500〜900例の間にとどまっていたのが、2013年は1228例、2014年は1661例、2015年は2,690例、2016年は4,559例と、ここ数年は右肩上がりで増えていました[1]。2017年は5,000例を超える見込みです。

梅毒の原因とは?

梅毒を引き起こす原因菌である梅毒トレポネーマは、低酸素状態でしか生存できません。また、低温や乾燥にも非常に弱いという性質があります。このため、梅毒の感染経路は限定されています。

主に感染している部位が皮膚や粘膜と直接接触することで感染します。具体的には、膣性交やアナルセックス、オーラルセックスが主な感染経路です。また、病変が口にある場合は、キスでも感染することがあります。正常な皮膚では感染しにくいですが、皮膚や粘膜に小さい傷があると、そこから梅毒トレポネーマが入り込んで感染し、数時間後には血液にのって全身に広がります。

梅毒の感染経路について詳しくは、性行為以外でも感染する?梅毒の感染経路とは梅毒にかかる主な原因とはをご覧ください。

梅毒の症状とは

梅毒の症状は、感染してから経過した期間(第1期〜第4期)によって出る部位や内容が変わっていくのが特徴です。どんな症状が現れるのかを具体的に見ていきましょう。

第1期(感染後3週間〜3か月)

感染しても、すぐに症状は現れません。3週間ほどの潜伏期間を経て、梅毒トレポネーマが侵入した部分(性器、肛門、口など)に、米粒から大豆くらいの大きさをした固いしこりができます。しこり表面の皮膚が破れてジュクジュクした潰瘍(かいよう)になることもありますが、いずれも痛みはなく、2~3週間経つと自然に消えます。また、太もものつけ根のリンパ節が腫れることもあります。

このようなしこり・潰瘍が現れるのは、女性では大陰唇や小陰唇(ヒダの部分)・子宮頚部が多く、男性では亀頭・冠状溝(陰茎と亀頭の境目のくびれ部分)・包皮の内側が多いです。女性の場合は、自分の性器の様子をよく見る機会があまりないため、この時期のしこり・潰瘍に気づかないことがあります。

梅毒の初期症状について詳しくは、梅毒の初期症状とはをご覧ください。

第2期(感染後3か月〜3年)

全身に広がった梅毒トレポネーマは、全身のリンパの腫れや頭髪の脱毛に加え、さまざまな発疹を引き起こします。小豆から大豆くらいのサイズの赤茶色のブツブツやしこりができたり(丘疹性梅毒疹)、手のひらや足のうらにジュクジュクした赤茶色の斑ができたりします。他にも、全身の皮膚に「バラ疹」と呼ばれる赤いアザのような斑点が出ることもあります。これらの症状は、治療をしなくてもやがて自然に消え、その後しばらくは無症状が続きますが、再発を繰り返すこともあります。

第3期(感染後3〜10年)

感染から3年以上、治療せずに放置していると、皮下組織に「結節性梅毒疹」と呼ばれる大きめのしこりや、「ゴム腫」と呼ばれるコブができます。

第4期(感染後10年以降)

脳や脊髄が侵され、進行麻痺・認知症・脊髄癆(せきずいろう)が起きたり、心臓血管系が侵され、大動脈炎や大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)が起きたりします。また、多くの臓器に腫瘍ができたりもします。

ただし現在では、比較的に早い時期から治療を開始することが多く、治療薬も発達しているので、第3期〜第4期まで進行する例はほとんどありません

症状のない梅毒もある

梅毒には、血液検査では陽性反応が出ているのに、上記のような症状が現れないケースもあります。これを「無症候梅毒」といいます。無症候梅毒は感染してから全く症状が出ないケースだけでなく、症状が一時的に消える時期(第1期から第2期への移行期、第2期の発疹消退期)も当てはまります。また、梅毒を治療して治った後も血液検査で陽性反応が出ることもあります。

無症候梅毒(治療していない場合)は、症状が現れないだけで梅毒トレポネーマは体内にいますので、性行為などを介して人にうつす可能性があります。一時的に症状が消えたからといって油断しないようにしましょう。

梅毒の検査って何するの?

梅毒かどうかを調べる血液検査(梅毒血清反応)には、大きく分けると、「STS法」と「TP法」があります。それぞれの検査方法を見ていきましょう。

STS法

梅毒トレポネーマに感染すると、脂質抗原に対する抗体(リン脂質抗体)がつくられるので、それを検出するのが「STS法(梅毒脂質抗体検出法)」です。STS法には、RPR法、ガラス板法、凝集法などがありますが、現在では、RPR法が主流になっています。

リン脂質抗体は、梅毒に感染してから2〜4週間ほどで血液中に現れます。このためSTS法なら、比較的早い段階で陽性反応が現れ、早期診断が可能です。また、リン脂質抗体価は治療に応じて低下していくので、治療効果の判定にも用いられます。しかし、リン脂質抗体は、梅毒に特異的なものではありません。そのため、梅毒以外の病気でも陽性反応が出ることがあります。

TP法

梅毒トレポネーマに感染すると、この病原菌に対する特異的抗体(TP抗体)がつくられます。それを検出するのが「TP法(トレポネーマ・パリダム抗体検出法)」です。TP法には、TPHA法、TPI法、TPLA法などがあります。

TP法なら、梅毒の病原菌そのものに対する抗体を検出するので、梅毒以外の病気で陽性反応が出ることはほとんどありません。しかし、TP抗体が認められるのは、梅毒に感染して約4~6週間後とされており、早期診断には適しません。また、一度陽性になると治療後も陽性が持続するため、治療効果の判定にも適しません。

検査結果の見方

梅毒かどうかの診断は、STS法とTP法を組み合わせた結果から解釈します。

  • STS法、TP法とも陰性の場合
    • 梅毒ではない
    • かなり初期の梅毒(ごくまれ)
  • STS法が陽性、TP法が陰性の場合
    • STS法の偽陽性
    • 初期の梅毒
  • STS法が陰性、TP法が陽性の場合
    • 梅毒治療後のTP抗体保有者
    • TP法の偽陽性(ごくまれ)
    • 感染後、長期間が経過
  • STS法、TP法とも陽性の場合
    • 梅毒に罹っている
    • 梅毒治療後のTP 抗体保有者

詳しくは、梅毒の検査方法についてもご覧ください。

梅毒の治療って?

梅毒の治療に用いられる薬や、治療後が完了したかどうかの判定法などを見ていきましょう。

ペニシリン系抗菌薬の内服が第一選択

梅毒治療の第一選択は抗菌薬の「ペニシリン」です。ペニシリンには梅毒トレポネーマを死滅させる効果があり、現在までにペニシリンが効かない菌(耐性菌)の発生は報告されていません[2]。

海外では、1回だけの投与で済む筋肉注射の薬を使うのが一般的ですが、日本ではその注射薬が使えない状況にあります。日本性感染症学会のガイドラインでは、内服薬のペニシリン剤が勧められています。また、ペニシリンにアレルギーがある人の場合は、代わりに塩酸ミノサイクリンもしくはドキシサイクリンを内服します。これらの内服薬の投与期間は、第1期梅毒で2〜4週間、第2期梅毒で4〜8週間と、長期に及びます[2]。

梅毒の治療について詳しくは、梅毒は治る病気なのか?をご覧ください。

治療における注意点

梅毒の治療を開始すると、数時間から数日以内に、発熱や悪寒、筋肉痛、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が現れることがあります。しかし、これは梅毒トレポネーマが急激に死滅したことによる「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」というもので、薬の副作用ではありません。自己判断で薬の量を減らしたりせず、医師が治療を終了とするまでは、処方された薬を確実に飲むようにしましょう

また、自分が梅毒に感染しているということは、パートナーにもその可能性があるということです。パートナーも梅毒の検査を受け、必要に応じて一緒に治療を行いましょう。

治療後の判定

梅毒の治療をした後は、症状が持続・再発していないか、定期的な血液検査(STS法)で、リン脂質の抗体価が減少しているかを調べます。リン脂質抗体の定量値が8倍以下に低下していれば、治癒したことになりますが、治療後半年以上たっても16倍以上なら、治癒していない、もしくは再感染したということになるので、再治療を行います。

梅毒の予防法とは?

梅毒には、残念ながら予防接種(ワクチン)はありません。予防の基本は、梅毒に感染している人(特に感染力が高い第1期、第2期梅毒の人)とは性行為やそれに類した行為をしないことになります。

とはいえ、梅毒には、無症状の時期もあるため、本人にも感染の自覚がなかったり、相手が感染しているかどうかを、目で見ただけでは、判断できなかったりすることがあります。感染しているかどうかわからない人と性行為をするときは、最初から最後まで、きちんとコンドームを着用しましょう。厚生労働省は、梅毒予防にコンドームの着用を推奨しています。

ただし、梅毒トレポネーマは血液に入って全身に広がるので、コンドームで覆われていない部分に病変がある可能性もあります。ですから、コンドームを着用しても梅毒を100%予防できるわけではありません。皮膚や粘膜に異常がある場合は性的接触を控えること、また不特定多数の人と性行為をしないことも予防策の一つとなります。

早めに検査を受けることが重要

周りの人に感染を広げないためには、性行為のあとに前述したような皮膚や粘膜の異常を感じたときはできるだけ早めに病院を受診し、梅毒検査を受けることが重要です。

また、自分に梅毒感染の可能性があるということは、パートナーにも感染している可能性が十分あります。検査や治療は、自分1人ではなく、パートナーと一緒に受けることをおすすめします

HIVと梅毒トレポネーマは重複感染しやすい

アメリカでも2001年以降に梅毒の発生率が増加しています。その多くが男性同性愛者の間での感染であり、新たに梅毒にかかった患者の60%以上がHIV感染症を合併しています[3]。

この理由は、梅毒もHIV感染症も性行為でうつる性感染症だからです。HIVは血液、精液、膣分泌液などの体液に含まれており、粘膜や傷口から体内に取り込まれて感染しますが、梅毒感染によって傷ついた粘膜が、HIVに感染しやすくなることも関係しています。

HIVと重複感染した場合の特徴

梅毒には、ゆっくりと症状が進行していくという特徴がありますが、HIV感染症を合併している場合は急速に進行し、早い段階から「神経梅毒」に移行しやすい傾向があります。神経梅毒とは、梅毒の病原菌によって、中枢神経が侵されることで起こる神経症状の総称で、本来であれば梅毒の感染後、数年から数十年経って現れる症状です。

また、第2期梅毒(感染後3か月〜3年)になると、さまざまな発疹が現れますが、HIV感染症を合併している場合は、皮膚がひどくただれるような重症の皮膚病変ができたり、晩期梅毒に急速に移行したりすることもあります。さらに、HIV感染症を合併していると、梅毒の治療効果が通常よりも出にくいこともわかっています。

詳しくは、梅毒とHIV(エイズ)が重複感染した場合の特徴や感染経路をご覧ください。

梅毒はお腹の赤ちゃんにもうつる

梅毒に感染している女性が妊娠したときに、胎盤を通して母子感染し、生まれてくる子が「先天性梅毒」になることがあります。梅毒は、第1期〜第4期へと進行していきますが、胎児に感染するのは、妊婦が第1期〜第2期梅毒で、治療を受けていないケースです。また、胎児が胎盤を通して感染するリスクは60〜80%で、かなり高確率です。

ただし、現在では、妊娠初期の妊婦健診に梅毒の検査が含まれており、必要に応じて治療が行われるので、胎児に感染する例はほとんどありません

もし梅毒に感染している場合は、ペニシリン(もしくはアセチルスピラマイシン)を内服します。妊婦が薬を内服すれば、胎盤や血液を通じて胎児にも届くので、同時に胎児も治療できます(ただし、エリスロマイシンという薬は胎盤を通過しないため、赤ちゃんは出生後に改めて治療をする必要があります)。

参考文献

  1. [1]厚生労働省. “性感染症報告数の年次推移” 厚生労働省. http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html (参照2017-11-28)
  2. [2]日本性感染症学会. 性感染症 診断・治療ガイドライン2016, 日性感染症会誌 2016; 27(1): 46-50
  3. [3]柳澤如樹. HIV感染症と梅毒の重複感染, IASR 2008; 29: 242-243 https://idsc.niid.go.jp/iasr/29/343/dj3431.html (参照2017-11-28)

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