小学校低下学年で行う蟯虫(ぎょうちゅう)検査と寄生虫感染症の現状

更新日:2016/12/09 公開日:2016/03/31

子供の検査

小学校低学年で行われる蟯虫(ぎょうちゅう)検査とはどのような検査でしょうか。その目的をはじめ、検査が行われてきた歴史的な背景や検査のやり方などを、ドクター監修の記事で詳しく説明しています。

小学校の低学年で行われる蟯虫(ぎょうちゅう)検査はどのような目的で行われる検査なのでしょうか。

蟯虫症の有無を調べる蟯虫検査

蟯虫検査は、蟯虫という寄生虫に感染し、蟯虫症を起こしていないか調べることを目的として行われます。蟯虫症は昭和20年代には全国民の7~8割が感染していた国民病でした。特に子供への感染が多く、そのため昭和33年から小学3年生以下の児童への蟯虫検査が義務化されました。

蟯虫症とは

蟯虫症の原因となる蟯虫は、人間の大腸や直腸、盲腸に生息する寄生虫で、大きさはメスが10ミリ程度、オスが5ミリ以下の白い小さな虫です。蟯虫は人間固有の寄生虫で、ペットや家畜などには感染しません。昔は人糞を肥料にして野菜が栽培されていたことや環境衛生の不備によって、家族間あるいは保育園や幼稚園などでの集団感染が多くみられました。

いったん蟯虫症にかかると、就寝後に、成虫となった蟯虫のメスが肛門から体外に出てきて肛門周辺の皮膚に卵を産み落とします。かゆくてお尻の周りを掻きむしることで爪の間や手に卵が付着し、その卵が衣類や寝具、食べ物などに付着したり、風にのって飛散するなどして、人から人へと感染していきます。

たくさんの虫が寄生すると、腹痛や下痢の原因になるといわれています。また、お尻のかゆみによって夜間にしっかりと眠ることができないため、昼間の集中力がなくなり、イライラしやすくなります。

蟯虫検査のやり方

蟯虫は夜間に肛門周辺に産卵する習性があるため、蟯虫検査では朝1番に、粘着性のあるセロファンを直接肛門周辺に当てます。そして、回収したセロファンに蟯虫の卵が付着しているかどうかを顕微鏡で調べます。検査は、念のため2日間に渡って行います。

もし蟯虫に感染していることがわかれば、駆虫薬を2回内服して治療します。

蟯虫検査は現在廃止されている

集団検便や集団駆虫の普及、および下水道など環境衛生が整備されたことにより、寄生虫の感染率は激減しました。その後、検出率は1%以下となり、長い間小学校3年生以下の子供に義務付けられていた蟯虫検査も平成27年度限りで座高測定とともに廃止されました。

とはいえ、完全に蟯虫に感染する可能性が無くなった、とは言い切れません。手洗いを積極的に行ったり、爪を噛んだり肛門付近を掻いたりしないといった予防への心がけは忘れないようにしたいものです。

現在、増えている他の寄生虫感染症

蟯虫症の感染が減ったとはいえ、身の回りにはまだまだ、注意しなければならない寄生虫感染症があります。以下でその代表的な感染症をご紹介します。

魚介類にに寄生するアニサキス

比較的寒い時期に起こるのがアニサキス症です。アニサキスとは寄生虫の一種です。サバやアジ、イカ、イワシ、サンマ、メジマグロ、タラ、ホッケ、サケなどの魚介類の内臓に長さ2~3cmほどのアニサキスの幼虫が寄生します。見た目には白い糸くずのような形をしており、市販の魚介類の内臓にもとぐろを巻いている幼虫が見られることがあります。

アニサキスの幼虫が寄生している魚介類を生のまま、もしくは加熱が十分されていない状態で食べると食中毒を起こします。これが、アニサキス症です。

アニサキスが人間の身体に入ると、胃腸や腸壁に潜り込んでしまい、激しい腹痛や吐き気、嘔吐といった食中毒症状が引き起こされます。アニサキス症は、一度症状が出た場合、くり返しやすいという特徴があります。症状が出た人は、魚介類を生で食べるのを避けたほうが無難でしょう。

アニサキス症を防ぐためには、新鮮な魚を購入するよう心がけ、すみやかに内臓を取り除くことが大切です。そして、アニサキスが寄生する可能性のある魚介類の内臓は決して生で食べないように十分注意しましょう。

犬や馬に寄生するサルコシスティス・フェアリー

サルコシスティス・フェアリーは馬や犬に寄生する虫で、人には寄生しません。犬は、感染した馬の肉を食べることで感染します。馬は、感染した犬の便で汚染された飼料や水などを食し、感染します。このように、サルコシスティス・フェアリーは、馬と犬の間を行き来して生存します。

サルコシスティス・フェアリーに感染すると、早ければ1時間、平均して4時間から8時間の潜伏期間を経て、食中毒を発症します。サルコシスティス・フェアリーに汚染された馬刺しをどれくらい食べれば発症するのかという点については、まだ解明されていません。

主な症状は、一過性の下痢や嘔吐、胃の不快感などで、だるさや関節痛が起こる場合もあります。全体的な症状は軽く済むことが多く、後遺症などもありません。サルコシスティス・フェアリーによる食中毒は、馬肉を加熱・冷凍処理することで、発症リスクを低くすることができます。生肉は食中毒の危険性が特に高くなるものなので、食べるときは十分に注意しましょう。

感染症を予防するために

そもそも感染症とは、「大気、水、土壌、動物、人」などに存在する病原性の微生物が、人の体内に侵入することで引き起こされる疾患です。日常生活における主な感染経路には「飛沫」「接触」「空気」の3つがありますが、中でももっとも多いのが手を介した接触感染です。そのため、手洗いは感染症予防の基本とされています。

前述した寄生虫感染症、風邪やインフルエンザの予防はもちろん、鶏卵や食肉、魚などを生や加熱が不十分な状態で食べたり、腸内に菌を持っているペットに触れて感染するサルモネラ感染症、カンピロバクター感染症、冬場に増加する手洗い・消毒が不十分な手指や、汚染された場所に触れた手指から感染するノロウイルス感染症など、実に多くのウイルスや細菌が身の回りにいるのです。これらの感染症にかからないためにも、手洗いを習慣化しましょう。

まとめ

このように、手洗いにより防げる病気は意外に多く、種類もさまざまです。また、蟯虫(ぎょうちゅう)検査が廃止されたからといって、安全が保障されたわけではありませんので、手洗いは万病予防の基本と認識し、意識的に行うようにしましょう。

また、寄生虫感染症にならないためには、日頃の食品管理が重要となります。肉の生食は避ける(十分に加熱する)、魚は早めに内臓を取り除き完全冷凍するなど、寄生虫を死滅させる工程をしっかり経るようにしましょう。台所まわりの衛生面も含め、一度、食環境を見直してみるといいかもしれません。