過敏性腸症候群(IBS)の有病率や症状は年齢によって変わる?

更新日:2017/09/14 公開日:2016/03/21

過敏性腸症候群(IBS)のよくある疑問

日本人の10人に1人が発症していると推測される過敏性腸症候群(IBS)。男性に比べて女性に多く発症するといわれていますが、年齢別に見た場合、患者の割合に違いはあるのでしょうか。ドクター監修の記事で解説します。

過敏性腸症候群(IBS)は、女性に多いことが知られていますが、年齢によって有病率(集団のなかで病気にかかっている人の割合)や症状の程度に違いはあるのでしょうか。ここでは、過敏性腸症候群について、年齢に着目して解説します。

過敏性腸症候群とは

ストレスによって便秘や下痢といった消化器の症状が起こる、過敏性腸症候群。ストレスが加わることで、脳の副腎皮質系(HPA系)というホルモンを介して生体反応を制御する神経内分泌系が活性化されます。それにより、視床下部から放出される副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)というホルモンが、下部消化管(結腸)の運動の活性化や上部消化管(胃・十二指腸)の運動の抑制を行うと考えられています。

ストレスによって一定以上の神経内分泌系の異常がもたらされたとき、過敏性腸症候群の症状が現れると考えられているのです。

年齢と過敏性腸症候群の有病率の関係

世界的にみた過敏性腸症候群の有病率は、10~15%程度だといわれています。最近になって、過敏性腸症候群という病気が認知されるようになってきたため、有病率は増えているという印象を抱きがちです。しかし、1980年代、1990年代、2000年代の各10年間の世界の有病率はほとんど変わらず、増加しているわけではありません。

過敏性腸症候群は、患者自身が病気であると自覚していないことも多く、症状がありながら医療機関を受診していないケースも考えられるため、潜在的な患者が多いと考えられています。

年齢ごとに有病率を見た解析結果によると、30歳未満が11.0%、30歳代が11.0%、40歳代が9.6%、50歳代が7.8%、60歳以上が7.3%と、年齢が上がるとともに有病率は低下する傾向にあります。日本で行われた調査結果では、男女とも40歳代以降で有病率が低下する傾向にあると報告されています。

症状は加齢によって軽快する

では、症状の程度は年齢によって変化するのでしょうか。アメリカのミネソタ州において、ある地域に住む過敏性腸症候群患者158人を対象に、12年にわたってその経過を観察した研究が行われています。このうち、約30%の患者は、12年後に症状がなくなっていたと報告されています。

過敏性腸症候群の特徴のひとつに、便が直腸の壁を押し広げる刺激に対して痛みを感じやすい「内臓知覚過敏」があります。一般的に、内臓知覚は加齢にともなって鈍くなります。過敏性腸症候群の症状が加齢とともに軽快するのは、痛みの自覚が少なくなることなどが要因と考えられます。

過敏性腸症候群の治療と年齢の関係

医療機関で行われる過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療は、ライフスタイルの改善が基本です。ストレスを解消することや睡眠・休養を十分にとること、食事を1日3食決まった時間にとることなどがあげられます。また、腸の働きを整えてくれる散歩などの軽い運動も効果的です。薬を用いて治療を行う場合は、腸内環境を整える乳酸菌製剤や、消化管の働きを正常化する消化管運動調整薬などが処方されます。

また、ストレスが大きく影響している場合には、抗不安薬や抗うつ薬を用いたり、心療内科などでカウンセリング(心理療法)を実施したりする場合もあります。

高齢患者では治療に特別な配慮が必要

高齢者の過敏性腸症候群患者は少ないとされていますが、有病率はゼロではありません。高齢の患者の場合、他の病気を合併していることが多く、診断や治療が難しいといわれています。

一般的に、高齢者では、腹筋の筋力が低下することで腹圧がかからなくなったり、咀嚼力の低下などが原因で食事から十分な食物繊維を摂れなかったりするため、便秘になりがちです。また、体の不調や退職後の喪失感、親しい人との別れなど、大きなストレスを受ける経験が重なってしまうことがあります。高齢の患者の場合、一般的な治療の手順に加えて、高齢者特有の身体的・心理的特徴に配慮したアプローチが必要になります。

過敏性腸症候群と年齢の関係まとめ

過敏性腸症候群は、主にストレスが原因で起こるおなかの症状です。40代以降になると有病率が下がる傾向にあります。また、症状自体も年を重ねることでなくなる傾向があるという結果が、実験により得られています。なお、過敏性腸症候群の症状があった場合、医療機関で症状に合わせた治療を受けられますので、気になる症状があれば医療機関で診察を受けましょう。

なお、『過敏性腸症候群(IBS)の診断基準とセルフチェック方法』で簡単なセルフチェック項目も紹介しているので、あわせてご覧ください。

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