心筋梗塞で起こりうる合併症

更新日:2016/12/09

心筋梗塞の基礎知識

突然死のリスクも大きい心筋梗塞が恐れられている理由に、合併症の存在もあります。致命的なものも多くため息を吹き返しても安心できません。ここでは、代表的な合併症の症状や診断、治療方法についてドクター監修の記事で解説します。

心筋梗塞が恐れられている理由には、合併症にもあります。実際にどのような合併症があるのかを見ていきましょう。

左室破裂(さしつはれつ)

心破裂(しんはれつ)という心臓に穴が開いてしまう状態の一種。「左室破裂」は心臓の左室と呼ばれる壁が虚血によって壊死(えし)したところに力が加わって損傷した状態です。

特徴

心筋梗塞を発症してから24時間以内または1週間以内にもっとも多く発症する合併症です。心筋が脆弱になってできた穴から血液が漏れだし死に至る可能性が高く、手術の成功率も高くはありません。

症状

比較的早い段階で、突然の呼吸困難と血圧の低下が認められた場合、左室破裂が疑われます。

傾向

近年では心筋梗塞の治療や予防にあたって血栓ができるのを防ぐ(血液をサラサラにする)薬を使う機会が増えていますが、このことが左室破裂のリスクを上昇させているという指摘もあります。血液が固まりにくくなることで血管のつまりが改善される一方、「傷を塞ぐ」という本来の機能が弱められることで、出血のリスクが高まってしまうと考えられています。

診断と治療

超音波検査で心臓の周囲に血だまりができていることを確認します。漏れ出した血液によって心臓が圧迫されている状態は心タンポナーデと言われ、カテーテルを用いて圧迫している血液を抜き取る必要があります。小さな傷であれば止血剤で対応できる場合もありますが、ほとんどの場合、心臓を停止させて行う大規模な手術が必要となります(手術中は人工心肺装置を用いて血液の流れを確保)。

近年では心内膜パッチを使って亀裂を塞ぐ方法も採用されています(詳細は心室中隔穿孔の項目をご覧ください)。

心室中隔穿孔(しんしつちゅうかくせんこう)

心臓の内部にある心室を仕切る壁が損傷した状態を指します。仕切りが機能しなくなることにより、体内を循環させるために送り出す血液が心臓内で逆流します。

特徴

心筋梗塞を発症して1週間以内と比較的早い段階で発症します。左室破裂との違いは損傷が心臓の内部で起こるため、血液が心臓の外に流れ出すことはなくポンプ機能もある程度保たれるため、処置をするまでに一定の猶予があります。しかし、いつ状態が悪化するかわからないためやはり緊急手術となります。

症状

比較的早い段階で胸の痛みとそれに続く呼吸困難、血圧の低下が認められた場合は心室中隔穿孔を疑います。これらの症状は左室破裂と比べるとゆっくりと進行する傾向が見られます。

診断と治療

超音波検査で右心室へ血液が流入していることを確かめます。聴診で雑音が認められることによって診断することも可能です。以前は破れた隔壁を縫い合わせていましたが、近年は「心内膜パッチ」による治療が主流になっています。心内膜パッチは心臓を包む膜を用いて穴をふさぐ方法で患者さん自身の組織を移植するため負担が少なく、手術の成功率は8割以上まで伸びています。

乳頭筋不全(にゅうとうきんふぜん)

乳頭筋不全は左心室の僧房弁を支える乳頭筋が虚血によって壊死し、弁の機能が失われた、あるいは低下した状態です。

特徴

急性例では心筋梗塞を発症して2日、慢性例では1週間程度での発症が一般的です。

左心房と左心室を隔てる弁が十分に機能しなくなるため、左心室内の血液が左心房に逆流し、心機能の低下や不整脈を起こします。

症状

・急性

乳頭筋が完全に断裂した場合、急性心不全をおこします。突然の呼吸困難からショック状態まで一気に進行し致死率も高くなります。

・慢性

乳頭筋が完全に断裂しない場合は比較的穏やかな症状となります。胸の痛みや呼吸困難が現れますが、弁の機能が温存されていれば息切れ程度で済む場合もあり、適切な治療を受ければ助かる可能性は十分にあります。

診断と治療

超音波検査によって逆流の有無などを確認します。急性例では弁の修復や人工弁への置き換えが行われます。慢性例でも対処法は同じですが、冠動脈のバイパス手術で対応可能な場合もあります。

左心室瘤(さしんしつりゅう)

左心室瘤とは、左心室の壁が虚血によって薄くなることで収縮力が低下し、心臓のポンプ機能が十分に働かなくなる状態を指します。

特徴

左心室の壁が圧力に耐え切れずに膨らみ、瘤(こぶ)ができます。心筋の断裂を伴わないため、左心室瘤そのもので死に至る可能性は低いと言えます。ただし、左室破裂を起こした場合はこの限りではありません。回復後は不自由なく暮らせる場合も多いのですが、不整脈を起こしやすい状態ですので心不全を起こし死に至るケースもあります。

症状

息切れ、動悸、胸の痛みなどが現れます。

診断・治療

超音波検査、CT検査、造影検査等、心臓の形を画像で確認することで診断を行います。重症例では瘤の切除を行います。多くの場合、服薬や生活改善で対応することができます。

虚血性心筋症(きょけつせいしんきんしょう)

左心室の壁が虚血によって弱くなり拡大した状態のことです。収縮力が落ちることにより心臓のポンプ機能が低下します。左心室瘤とは違い、瘤ができるほどではありません。

特徴

心筋梗塞の合併症の中では予後が良好で、社会復帰も十分に可能です。左室破裂の心配もほとんどありませんが、やはり不整脈から心不全に至る事もありますので注意が必要です。

症状

息切れ、不整脈、胸の痛みなどが現れます。

診断・治療

左心室瘤と同じく画像による診断が一般的です。治療は投薬や生活改善のほか、必要に応じて冠動脈バイパスや危険な不整脈を伴う場合ペースメーカーの装着が行われる場合があります。