便失禁の治療(3)薬物療法

更新日:2017/01/29 公開日:2016/05/22

便失禁の検査・治療法

肛門周囲の筋力の低下など、さまざまなことが原因で起こる便失禁。その治療には、原因に合わせてさまざまな治療薬が用いられます。ここでは、ドクター監修の記事で、代表的な3つの薬を取り上げ、その働きをご紹介します。

排便をコントロールできず、無意識もしくは意思とは無関係に便を排泄してしまう便失禁。今回は複数ある治療法のなかでも、薬物治療について詳しく見ていきます。

便失禁の原因や症状は?

便失禁が起こる原因には、「加齢や肛門周囲の筋力の低下」、「出産による肛門括約筋や神経のダメージ」、「直腸や肛門の手術によるもの」、「過敏性腸症候群」、「糖尿病性神経障害によるもの」、「ストレスや環境要因によるもの」などがあります。便失禁で悩んでいる人は、現在500万人ほどいると考えられており、高齢者だけでなく若い人にも見られる症状です。

また、症状別に分類すると、自分でも知らないうちに便が漏れる「漏出性便失禁」や我慢できずに漏らしてしまう「切迫性便失禁」、その両方の症状が起こる「混合性便失禁」などがあります。

便失禁は、複数の原因が重なって生じることがあります。人によって原因や症状が異なるため、症状をしっかり見極めて適切な治療を受けることが大切です。

便失禁に薬物治療が有効なケースとは

便失禁の治療は、まずは生活習慣の見直しや排便指導など、保存的治療から始めるのが一般的です。効果が見られない時には、骨盤底筋体操などの理学療法や薬物療法、外科的治療があります。

生活習慣の改善については、『便失禁の治療(1)生活習慣の改善』を、また、骨盤底筋体操については、『便失禁の治療(2)骨盤底筋体操』をご覧ください。

保存的治療で改善することがほとんどですが、症状や改善傾向によって、薬での治療を考慮することもよいでしょう。整腸剤で腸の運動を整えたり、下剤で直腸を洗腸することは、治療として有効です。また、薬の作用だけでなく、排便に悩まずに余裕をもって生活できることも、嬉しい治療効果と言えるでしょう。

便失禁の治療に用いられる薬

便失禁の治療に用いられる代表的な3つの薬剤をご紹介します。

塩酸ロペラミド

下痢や軟便を抑える効果のある薬です。腸粘膜の過剰な運動を抑制し、下痢を起こす作用のあるアセチルコリンやプロスタグランジンといった物質が体内でつくられるのを抑える働きがあります。ただし、長期にわたって服用すると便秘になる可能性があるので注意が必要です。

トリメブチンマレイン酸塩

胃腸の働きが異常になっている際に、正常に整えるための整腸剤です。特に、下痢と便秘をくり返す過敏性腸症候群に有効とされています。胃腸の働きを正常化して、排便の習慣をつけるためにも使われることがあります。

ポリカルボフィルカルシウム

便の硬さを調整するのに効果的な薬剤です。過敏性腸症候群が原因となって切迫性便失禁を引きおこしているときに用いられます。下痢のときには、過剰な水分を吸収し、便秘のときには、腸内で水分を保持して便の性状を整える働きが期待できるでしょう。

薬を服用して便の性状が安定してくると、排便をコントロールしやすくなる可能性があります。その場合、生活習慣を改善しながら薬の服用をなくしていくことができるケースもあります。医師の診察を受け、適切な薬物療法を受けましょう。