顎変形症の治療法

更新日:2017/03/17 公開日:2016/06/28

顎変形症の手術・治療法

あごの骨の発育異常によって起こる顎変形症。見た目だけでなく、噛み合わせ不良や発音障害など、機能的な問題も生じます。「出っ歯」や「受け口」など代表的な顎変形症の治療にはどんなものがあるか、ドクター監修の記事でご紹介します。

顎変形症(がくへんけいしょう)の治療は、子供のときに行うのと、大人になってから行うのでは、どちらが望ましいのでしょうか。治療は長期にわたることが多いため、治療法の特徴を知り、最善の選択をしましょう。

顎変形症とは

上下のあごの骨の形や大きさ、バランスに異常があることで、嚙み合わせ不正や顔の変形・ゆがみを引き起こす顎変形症。

その原因は大きく先天性と後天性に分けられ、後天性の場合はあごの骨の発達異常や、唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)やゴールデンハー症候群など病気によるもの、あごの腫瘍や骨折などがきっかけで引き起こされるもの、また、巨人症や末端肥大症、ダウン症などにともなって発症するもの、さらには、食事や日常生活での動作が影響しているものなど、さまざまです。

顎変形症の原因については、『顎変形症の原因』を、症状については、『顎変形症の症状』をご覧ください。

顎変形症に手術は必要?

顎変形症は自然に治癒することはなく、ほとんどのケースで手術が必要です。治療は矯正歯科治療と顎矯正手術を組み合わせて行うことが一般的です。また、軽度の変形であれば、通常の歯列矯正で治すことも可能です。手術が必要になるケースについて、詳しくは、『顎変形症の手術について』をご覧ください。

治療は顎変形症の種類により異なる

顎変形症は、あごの骨の成長異常によって、顔面の変形や噛み合わせの問題が起こっている状態です。上下のあごの骨の形や大きさ、ズレ方によって、いくつかの種類に分類され、それぞれ治療法も異なります。

ここでは、代表的な上顎前突(いわゆる出っ歯)、下顎前突(いわゆる受け口)、両顎前突の治療法について紹介します。

「出っ歯」と呼ばれる上顎前突の治療法

上あごが前方に突出し、「出っ歯」「反っ歯」などと呼ばれる上顎前突。唇を自然に閉じることが難しかったり、無理に閉じると下あごに梅干し状のシワができることがあります。また、笑った時に歯茎が露出する「ガミースマイル(歯茎笑い)」も、上顎前突の方によく見られます。詳しい症状や特徴については、『顎変形症のひとつである「上顎前突」とは』をご覧ください。

上顎前突は、大人と子供では異なる治療が行われます。

子供の場合

子供の上顎前突の治療は、基本的には歯列矯正で行われます。スタートするタイミングは、上下の前歯4本ずつが、乳歯から永久歯に生え変わった後と考えるとよいでしょう。子供の治療は、今後生えそろう永久歯を並びやすくし、噛み合わせを整えやすくすることが目的です。そのため、単に歯をきれいに並べるのではなく、歯を支えているあごの骨が正しく成長させることに主眼を置いて治療を行います。

矯正装置は、夜だけ、もしくは部分的に装着するなど、比較的簡単なものを使用することがほとんどです。ヘッドギアは、前に出ている上あごの位置を後退させる装置で、頭からかぶります。ファンクショナルアプライアンスは、下の歯にかぶせて使用する金属のワイヤーで、引っ込んでいる下あごの成長を促す装置です。

これらの装置だけで治療できる場合もありますが、成長にともない、他の問題が出てくる可能性があります。たとえば、永久歯に生え変わる際に、正常ではない場所から歯が生えてくるケースなどです。そのつど、適した矯正装置を選択していく必要があるため、子供の矯正治療は長期にわたります。

こうした子供の矯正治療は、すべての歯が永久歯に生え変わった後でもできる場合がありますが、骨の成長が止まってしまった場合は不可能です。その場合は、大人と同じ矯正治療を行います。

大人の場合

大人の上顎前突は、歯列矯正、もしくは外科手術での治療となります。

一般的な歯列矯正での治療では、上下左右、真ん中から数えて4番の歯を抜きます。そして、抜歯した分のすき間を詰め、前歯を後ろに下げながら噛み合わせを調整します。調整にはマルチブラケット装置が使われ、一本一本の歯に装置をつけてワイヤーで固定し、ワイヤーを締めることで歯を動かしていきます。表側(唇側)につけるものと、裏側(舌側。リンガルブラケットという)があります。上顎前突の場合は、上顎の臼歯をしっかり固定しておいて、前に来ないように矯正治療を行います。ヘッドギアを併用したりすることもあります。

軽度の上顎前突の場合は、取り外し可能な透明のマウスピースを歯にかぶせるという方法もあります。

矯正期間には個人差がありますが、約1年~2年半です。なお、重度の歯周病患者や、外傷で歯が折れてしまった人は、矯正治療に制限が生じることがあり、場合によっては矯正治療ができないこともあります。

突出が歯だけではなく骨からの場合は、矯正のみでは改善できないため、外科手術を行います。上あご左右4番の歯を抜き、その根元の骨を切り、前歯部を後退させる「上顎前歯部分節骨切り術」が一般的です。入院期間は施設によりますが、1週間から2週間前後で、術前と術後に歯列矯正もあわせて行います。手術までの検査、虫歯治療、歯列矯正に約1年、手術から半年~1年後に骨を固定したプレート除去手術を行い、その後は経過観察となります。

「受け口」と呼ばれる下顎前突の治療法

下顎前突とは、上あごに対して、下あごが前方に突き出した状態の「受け口」のことです。下あごの骨が異常に発達することで起こり、噛み合わせが上下逆になるため「反対咬合(はんたいこうごう)」とも呼ばれます。前歯で食べ物を噛むのが難しい、舌をうまく使えないため独特な話し方になるなどの問題があります。詳しい特徴や症状については、『顎変形症のひとつである「下顎前突」とは』をご覧ください。

上顎前突と同じように、下顎前突(いわゆる受け口)の場合も、大人と子供で治療は異なります。

子供の場合

子供の下顎前突は、上あごに対して下あごが前に出ているケースがほとんどです。そのため、上あごの成長を促しつつ、下あごは成長を抑えて、バランスのよいあごに成長させることが最大の治療目的となります。上あごが成長するのは9~10歳ごろまで、下あごの成長は12~13歳ごろであるため、3~7歳の間に治療を開始するのが望ましいと言えます。特に3歳時から確認できた下顎前突は、なるべく早く治療することによって、ほとんど場合が治癒します。

治療には、上顎前方牽引装置やリンガルアーチ、ムーシールドなどの装置を使用します。上顎前方牽引装置は、ワイヤー状のフェイスマスクのような装置と、上あごの歯に取り付ける装置が一体化したものです。上あごを前側に成長させる働きをします。

上顎前歯部の骨の成長もカギになるので、前歯部で嚙みごたえのあるものをしっかり噛む練習をすることがあります。

リンガルアーチは、左右の奥歯間を1本の針金でつなげた装置で、上の歯を押し出すときなどに使われます。

ムーシールドは、舌を上に持ち上げて口腔周辺の筋肉のバランスを整える装置です。

子供の受け口は、成長にともなう変化に対応していく必要があるため、何年にもわたる長い治療を覚悟する必要があります。

大人の場合

骨の成長が止まった子供や大人の受け口の治療は、歯列矯正と外科手術の2通りがあります。軽度であれば、歯列矯正での治療ですむ場合もあり、矯正方法は上顎前突の場合と同様です。骨格的な問題で受け口になっている場合は、外科手術が必要です。手術方法は「下顎枝矢状分割法(SSRO)」や「下顎枝垂直骨切り術(IVRO)」などで、どちらも下あごの骨を切って全体を下げる手術になります。入院期間は2週間前後。手術までに約1年間かけて検査や虫歯治療、歯列矯正を行い、術後にも歯列矯正を行うのが一般的です。

手術から半年~1年後には骨を固定したプレート除去手術も行われます。上顎骨の後退を認める場合は、上顎骨の手術(上顎LeFortI型骨切り術)も併用することがあります。

上下顎前突症の治療法

上下の前歯が前に突き出した「両顎前突」は、口が閉じにくいことからドライマウスや口臭に悩まされることがあります。また、笑った時に歯茎が見えすぎたり、鼻が低く見えるなど、容姿にコンプレックスを抱く方も多いようです。詳しい特徴や症状については、『顎変形症のひとつである「両顎前突」とは』をご覧ください。

両顎前突の場合も、上顎前突、下顎前突と同様、矯正歯科的な治療と外科手術の2通りがあります。歯列矯正では、上下左右の4番を抜歯後、ブラケットやマウスピースを使用しての治療となります。

外科手術は、以下のような術式があります。

  • 上下顎前歯部歯槽骨切り術(分節骨切り術)…上下のあごの骨を切り取り、前歯を後退させる手術
  • 上顎LeFortI型骨切り術…上あご全体を移動させ、笑った時に歯茎が見えてしまう状態を改善する手術
  • 下顎枝矢状分割術(SSRO)…下顎枝を矢状方向に切断し、前後に下あご全体をずらして固定する手術です。
  • 垂直骨切り術(IVRO)…下顎枝を垂直に骨切りし、下あご全体を移動させる手術です。骨片間の固定はしません。

術前術後には、歯列矯正が行われるのが一般的です。術後矯正が終わるには、最低でも約半年程度はかかります。全体では2年程度はかかることが多いです。

顎変形症の治療に保険は適用される?

顎変形症の治療として、骨切りなどの外科手術を受けた場合と、それにともなう矯正治療は、保険診療の対象となります。ただし、適用となるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合している歯科矯正診断・顎口腔機能診断施設のみです。それ以外の医療機関で受診した場合は、適用外となりますので注意してください。

歯列矯正は、治療完了までに時間がかかりますが、身体にメスを入れることはないため負担は比較的少ないです。外科手術は、入院や全身麻酔、感染症などのリスクをともないますが、一度で劇的に変わるのがメリットです。

術後の筋肉のリハビリも必要ですが、治療のデザインとしては、原理原則に基づいた治療でと言えます。専門医に相談の上、自分やお子さんにとっての最良の選択をしましょう。

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