顎変形症の手術について

更新日:2016/12/09 公開日:2016/06/28

顎変形症の手術・治療法

顎変形症の治療では、歯だけでなく、あごの骨全体が突出している顎変形症の場合、外科的な手術が必要になります。顎変形症の手術法について、治療の流れや術式、注意点などをドクター監修の記事で詳しくお伝えします。

正しい歯の噛み合わせと、美しい口元、輪郭を目指す顎変形症の手術。実際には、どんな手術を行うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

変形症で手術が必要となるケース

顎変形症の治療は、歯列矯正治療と外科的矯正治療(手術)の2つがあります。あごの変形が強い場合や、あごの骨全体が突出して歯列矯正だけで改善が見込めない場合は、外科的矯正(手術)の対象となります。

顎変形症の外科手術では、多くの場合、術前および術後に歯列矯正もあわせて行われます。術前の矯正は、あらかじめ歯を正しい位置に動かしておきます。これは、手術直後にきちんと物を噛めるようにするためです。術後の矯正は、手術後のあごに合う歯並びにし、噛みあわせを仕上げるために行います。術前矯正は平均1~2年程度、術後矯正は半年~1年程度です。

顎変形症の手術を受ける場合の治療の流れは、1.初診2.術前診断3.術前矯正4.入院・手術5.退院・術後の矯正6.外来通院と定期検診(経過観察)が一般的です。顎変形症の治療は、複数の診療科が組んで治療方針を検討する、チームアプローチによって行われます。矯正治療は矯正歯科が、手術は口腔外科で担当します。

なお、顎変形症の手術は、あごの骨の成長が終わってからでないとできません。個人差はありますが、男性では17~19歳、女性では16~18歳以降となります。

顎変形症の手術前

顎変形症の手術を受ける前に、歯やあごの状態に応じて、平均1~2年ほどかけて術前矯正を行い、歯を動かします。手術前には、全身状態の検査(胸部X線写真、呼吸機能、腎機能、肝機能、貧血の検査など)、自己血の保存(輸血が必要になった場合に副作用を少なくするため。ケースによって異なるがほとんど行われないことが多い)のほか、術後の感染症リスクを下げるため、虫歯や歯周病の治療を行います。

顎変形症の手術法

顎変形症の手術は、入院の上、全身麻酔で行います。基本的に、手術は口の中から行うため、顔の表面に傷が残ることはありません。必要に応じてあごの骨を切り、噛み合わせや左右のバランスが整う位置に移動させ、骨をネジやプレートで固定します。

主な手術方法は、以下の通りです。

  • Le FortⅠ型骨切り術…上あごの骨を水平に切る。
  • 下顎枝垂直骨切り法…下あごの歯の生えている部分より後ろの部分を縦に切る。
  • 下顎枝矢状分割法…下あごの歯が生えている部分より後ろの部分を切る。
  • 上・下顎前歯部歯槽骨切り術…第一小臼歯を抜いて、その部分の歯槽骨を骨切りし、骨を後方に移動させる方法。ケースによって上あごのみ、下あごのみ、両方で行われる。

移動方向は、各手術方法によって得意な方向があります。症例に応じてどの手術方法が理想的か判断して選択します。

一般的に下顎は引っ込めるほうが得意で、上顎は前に出したり、上に縮めたりするほうが得意です。

入院期間は数日から2週間程度。手術時間は、症例によって異なりますが、1~4時間程度です。

顎変形症の手術後

顎変形症の手術後は、あごを動かすことができないように、上の歯列と下の歯列をワイヤーやゴムなどで結び、固定します(顎間固定)。そのため、口を開けることはできず、話すこともできません。その間の食事は、鼻から入れた細い管で、胃に直接流動食を流し込む「経管食」か、または流動食を口の隙間から摂取することが必要とされます。あごの骨を人工的に骨折させているような状態であるため、口を開ける動作に痛みがともないます。口を開けられるようになるのは、手術方法によりますが手術から4~5日後。ただし、食事は、ミキサ食(ミキサーにかけてペースト状にした食事)を歯のすき間から流し込んで食べるようになります。

その後、ミキサー食からキザミ食(普通に調理した料理を包丁やフードプロセッサーで細かく刻んだもの)に移行し、普通食に戻れるのは2~3か月後となります。ただし、固い食べ物には十分に気をつける必要があります。

術後は、首からあごを中心にかなり腫れます。ピークは2日後で、その後徐々に引いていき、10~14日程度で、通常の20~50%増し程度の腫れにおさまってきます。腫れが完全に引くまでには、それから2~3か月かかります。

また、術後3日間程度は、ほとんど話すことができません。その後も話しづらさは残りますが、矯正装置が外せるころには、きれいに話すことができるため心配は不要です。さらに、術後は、あごの位置の変化に合わせた噛み合わせにするため、通常半年~1年程度の術後矯正が必要になります(個人差あり)。これは、矯正歯科で行われるため、退院後から6か月の間は、手術を受けた口腔外科と矯正歯科の双方を、定期的に受診することになります。なお、骨がきれいにつくまでは2か月ほどかかります。

術後の筋機能訓練も非常に大切です。新しいかみ合わせの位置で筋肉を鳴らすことが必要です。

矯正治療が終わり、矯正装置を外した後も、きれいに並べた歯が動かないようにするための保定期間が必要となります。保定期間中は、リテーナーという取り外し可能な保定装置を使います。2年ほど装着し、その後は徐々に外していけるようになります。その間の受診間隔は年に3度ほどで、およそ2年間で終了となります。

なお、顎変形症の治療のために外科手術および矯正治療を受けた場合は、保険診療の対象となります。ただし、適用となるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合する歯科矯正診断・顎口腔機能診断施設で受診した場合のみなので、注意してください。

骨自体を移動させる顎変形症の手術は、何年にもわたる大がかりなものです。精密検査を受け、じっくり検討して決めることが大切です。

公式アプリ

fem.
fem.

毎日1つ。ドクター監修の簡単ヘルスケア・ビューティー習慣!