うつ病のときによい漢方薬ってあるの?

更新日:2016/12/09 公開日:2016/06/21

うつ病の検査と治療

朝から気分が滅入って身体が重く眠れない「うつ病」は、西洋医学による薬物療法もありますが、軽症例では東洋医学的なアプローチが有効な例もあります。うつ状態の漢方薬について、漢方精神医学の専門医師の監修で解説します。

うつ病とは、落ち込んだ気分、興味・喜びの喪失、意欲の低下、倦怠感、睡眠障害、食欲の低下、集中力の低下などが1日のほとんどや、ほぼ毎日、2~3週間以上持続し、生活に支障をきたす状態です。

東洋医学においては、具体的にどのような漢方薬が有用なのでしょうか。

治療法として、睡眠衛生や栄養食事などの生活習慣の指導、精神療法や認知行動療法といった言語や行動の治療法、抗うつ薬を中心とした薬物療法などがあげられます。

軽症ではないうつ病における漢方薬の治療法は、自殺に至るリスクを考慮して、一般的には現代医薬を補完するような位置づけとされています。

主に「気剤」といわれる漢方薬で、エネルギーを活性化させるようなものが多く使用されています。この気剤を中心に紹介していきます。

東洋医学での「うつ状態」とは

うつ病の症状は、東洋医学でいうところの「気」の病変と重なるところがあります。「気」とは働きだけがあって形のないもので、体を巡って生ある状態に保つものと定義されています。

たとえば、体を巡るエネルギー不足の状態は、「元気がない」、「気が沈む」などの言葉が連想できます。この「気」が異常な状態は、「気虚(ききょ)」や「気滞(きたい)」などとは区別されています。

「気虚」とはエネルギーが不足した状態のことを指し、症状としては、元気がない、だるい、疲れやすい、食欲や意欲がない、貧血などがあげられます。

気虚の漢方薬に入っている生薬には、人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)がよく配合されています。

「気滞」とはエネルギーがうまく循環していない状態を指します。からだの気の流れが滞っている状態です。症状としては、頭が重い、のどがつまる、胸・わきが痛む、お腹がはる、四肢の痛みを感じるなどがあげられます。

気滞の漢方薬には枳実(きじつ)、木香(もっこう)、半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)などが配合されています。

中枢機能や胸の痛み

これらの気の病態に使用する漢方薬と合わせて、中枢機能調節性の漢方薬も使用します。

黄連(おうれん)が配合された漢方薬では「焦燥感」など、柴胡(さいこ)や芍薬(しゃくやく)の配合された漢方薬処方では「不安感」などに使います。

うつ状態でしばしばみられる特徴的な所見として「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」があります。これは、みぞおちから脇にかけて重苦しく張っているような状態のことを言います。右側に多く出ますが、左側にも出ることもあります。

胸脇苦満がある方において、柴胡(さいこ)が入っている漢方薬(柴胡剤:さいこざい)が有効なことがあります。

黄連配合薬

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

比較的体力があり、イライラ傾向とのぼせのある人に使用します。また、出血傾向のある場合にも用います。気分がイライラして落ち着かず、胃や胸のあたりにモヤモヤとしたつかえがある人に向いています。

血流の改善薬としての役割が多い漢方薬です。黄芩(おうごん)、黄連(おうれん)を配合していることで、消炎作用、解熱作用が増強されており、熱を持った症状を取り除きます。

気のめぐりが悪く、気を下げたい状態、具体的には、頭重感や腹部膨満感などの体の症状をともなうケースに使います。

柴胡配合薬

大柴胡湯(だいさいことう)

代表的な柴胡剤です。上腹部が張って、明らかな胸脇苦満がある場合に用います。柴胡(さいこ)や黄芩(おうごん)が炎症を鎮めてくれます。体力のあるガッチリタイプで便秘傾向の人に使います。

副作用として、肩こり、疲労、胃炎、胃酸過多、悪心嘔吐、食欲不振、高血圧の人には、頭痛、耳鳴、肥満傾向などが起こることがあります。著しく胃腸が弱い人、冷え性の人、下痢がある人には使いません。

小柴胡湯(しょうさいことう)と同様に、肝機能の改善に使われることがあります。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

比較的体力のある人に使用します。へその上部や下部に動悸があって便秘傾向があり、不眠、多夢、不安、抑うつをともなう場合に使用します。

「腰から下が何となく重い」という症状も、使用の目安になります。

のぼせを改善する桂皮(けいひ)、利尿作用を有する茯苓(ぶくりょう)、鎮静作用のある竜骨・牡蛎を配合しています。大黄を含む場合と含まない場合があります。

交感神経過敏の人の体質改善で使用されます。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

体力がない人に使用します。脈や腹力は弱く、胸のつかえや背中が急に熱くなったかと思うと、あとに寒くなるという症状(いわゆる不定愁訴)が多い場合に使用します。

昔から女性の心気症的傾向の症状によく使われています。不定愁訴の多い女性に使用することが多いですが、神経症傾向の男性にも使用しているケースがあります。

抑肝散(よくかんさん)

比較的体力のない人に使用します。神経の高ぶりを抑える漢方薬です。

入眠困難、悪夢、イライラ、怒りっぽさ、眼精疲労、ムズムズ脚症候群、まぶたのピクつきなどの症状に使用します。

特に、柴胡(さいこ)や釣藤鉤(ちょうとうこう)といった生薬が交感神経の過緊張によいとされています。本来はひきつけや夜泣きなど小児科の処方でしたが、現代では年齢を問わず、幅広く精神神経系の病気に使用されています。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

比較的体力のない人に使用します。前述の抑肝散(よくかんさん)に健胃作用のある陳皮と制吐作用のある半夏を加えたものです。へその左上部に明らかな抵抗と圧痛があり、軽い胸のつかえと、腹力がやや軟弱な体質の方に使用します。

抑うつ気分や胃腸症状の改善が期待されます。

加味帰脾湯(かみきひとう)

体力がなく、顔色が悪くて貧血傾向、精神不安、健忘、不眠などの精神神経症状を訴え、全身倦怠感をともなう場合に使用します。

胃腸の働きを改善する四君子湯(しくんしとう)がベースになっている帰脾湯(きひとう)に柴胡(さいこ)や山梔子(さんしし)、血行を改善する牡丹皮(ぼたんぴ)を加えたものです。人参(にんじん)と黄耆(おうぎ)が配合されているため、意欲減退や食欲不振がある場合に使用します。

その他:蘇葉(そよう)など、気を巡らせる生薬の入っている漢方薬

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

比較的体力のない人に使用します。疲労倦怠感、動悸、不眠などの精神神経症状、口の渇きをともなう場合に使用します。

乾姜(かんきょう)が配合されているため、冷えのある場合に使用します。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

体力は普通もしくはない人に使用します。気のめぐりをよくし、上がったままの気を下げる作用を持つ、代表的な漢方薬です。のどが詰まる感じがあると、投与されることが多いです。

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)に厚朴(こうぼく)と蘇葉(そよう)を加えた漢方薬で、気の変調を整える作用を持っています。

ノートなどにメモをびっしり書く人や、神経症的な訴えある人に効果が高いです。抑うつ気分や不安感がある場合に使用します。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

体力のない人で顔色が悪く、神経過敏、精神不安、抑うつなどをともない、冷えのぼせなどの症状の他に、発汗や焦燥感、咳き込み、手足の冷えがある場合に使用します。

竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)はカルシウムを多く含み、気分を安定させる働きもあります。

香蘇散(こうそさん)

比較的体力のない人に使用します。胃腸虚弱、不安、不眠、食欲不振があり、抑うつ気分や不安感の強い場合に使用します。

香附子(こうぶし)と蘇葉(そよう)は発汗作用を持ち、他の生薬で消化吸収機能を助けています。

香附子、蘇葉、陳皮には精神安定作用もあります。感冒に用いられるケースも多いですが、神経質で食欲がない場合に用います。

最後に

うつ病も軽症のうちに適切な治療を始めれば、効果も早く訪れます。漢方薬の活用も精神科専門医に相談してみるとよいでしょう。

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