気道、肺、腎臓に害を及ぼす多血管炎性肉芽腫症

更新日:2016/12/09 公開日:2016/10/24

血管炎症候群の基礎知識

治療の困難な血管炎のひとつに多血管炎性肉芽腫症がありますが、どういった症状が現れ、どのような治療が行われるのでしょうか。難治性の血管炎の一つである多血管炎性肉芽腫症について、ドクター監修の記事で解説します。

多血管炎性肉芽腫症は、大きく分けて3つの症状を引き起こす血管炎症候群です。抗好中球細胞質抗体がきっかけとなり、全身の壊死性・肉芽腫性血管炎、上気道(鼻を中心とした呼吸器)と肺に現れる壊死性肉芽腫性炎、そして半月体形成腎炎が現れます。ドイツの病理学者・フリードリッヒ・ウェゲナーによって報告された症例で、彼の名前を取ってウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていましたが、後に現在の多血管炎性肉芽腫症に改名されました。

全身の壊死を引き起こす血管炎

多血管炎性肉芽腫症は発症の詳しい原因には諸説あり、上気道の細菌感染がきっかけとなるケースや、細菌などの異物から身体を守る好中球が、黄色ブドウ球菌に感染することによって引き起こされるといった説がありますが、実際の原因は不明とされています。

症状は、上気道、肺、腎臓の順番に進行

多血管炎性肉芽腫症の主な症状としては、他の血管炎症候群と同様、発熱、体重減少などの症状とともに、紫斑(あざ)やしびれ、関節痛などが起こります。そして、これらの全身症状と並行して、鼻水、鼻出血、中耳炎、視力低下(上気道の症状)、血痰、呼吸困難(肺の症状)、急速進行性腎炎(腎症状)が見られるのが特徴で、上気道、肺、腎臓の順番で症状が現れます。診断の際には、上気道、肺、腎臓の3器官から症状を判断していきます。

ステロイドと免疫抑制剤による治療法

多血管炎性肉芽腫症の主な治療法としては、炎症を抑える効果のある副腎皮質ステロイド剤と、免疫抑制剤であるシクロホスファミドを併用して投与します。投薬の効果が出れば、副作用の恐れがあるステロイド剤の量を減らし、効果の弱い免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサートなど)に切り替えて経過を見ます。

多血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)が報告された当時は致死率の高い難病とされていましたが、治療法の確立により、9割以上の患者は病状が落ち着くまで治療できるようになりました(参考文献:日本循環器学会による治療ガイドライン)。しかし、再発が多い病気でもあるため、その後も経過観察が必要です。