左胸は心臓だけではない!左胸が痛いときに考えられる原因と病気

更新日:2017/11/06 公開日:2016/11/18

胸痛の基礎知識

左胸が痛いと、心臓の病気かもしれないと不安になります。胸痛の原因は心臓以外に肺や膵臓、神経、精神的なものなど多様で、一刻も早い処置が必要な病気も含まれます。左胸の痛みの原因と考えられる病気について、ドクター監修の記事で解説します。

ヘルスケア大学参画ドクター

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左胸に痛みを感じると、心臓の病気かもしれないと不安になることもあるでしょう。左胸が痛む原因には心臓以外に肺や膵臓、神経や皮膚の病気、またパニック障害といった心の病気など、数多くあります。これらのすべてが命にかかわる病気ではありませんが、なかには一刻も早い処置が必要な病気も含まれています。左胸の痛みからはどのような病気が考えられるのか、どのようなときは緊急だと考えたらよいのかについて解説します。

こんなときはすぐに病院へ

左胸の激痛が急に現れた場合は、なるべく早く病院に行きましょう。病気によっては1時間以内に痛みが軽くなったり、消えたりすることがありますが、そこで安心せずに受診することが大事です。特に今までに経験したことのないような激痛や、冷や汗が出るほどの痛みであったり、呼吸が苦しくなったり、胸以外にも首や肩、背中や腕、あごや歯など他の部位も一緒に痛んだりするような場合は、緊急の処置が必要である病気の可能性があるので、躊躇せずに救急車を呼んでください。

医師に伝えてほしいこと

左胸の痛みから考えられる病気は心臓、血管、消化器、骨、神経、皮膚、心の病気など、たくさんあります。病院では問診や検査をもとに、どの病気であるのかを絞り込んでいきます。問診の際には下記のような情報があると診断に役立ちます。

  • 痛みはどのように始まったか:突然始まったか、何をしていたときに始まったか
  • どこが痛いのか:左胸以外にも痛みを感じる部分があるか(首や肩、背中や腕、あごや歯など)
  • どのような痛みか:重苦しい感じ、圧迫されている感じ、締め付けられる感じ、熱くてヒリヒリする感じ、刺すような痛み、裂けるような痛み、脈と一致した痛み、チクチクした痛みなど
  • 痛みの持続時間とピーク:どのくらい痛みは続いているか、痛みのピークはいつごろだったか、痛みが軽くなってきたのはいつか、など
  • 痛みの変化はあるか:どのようなときに痛みが増すか(呼吸時、咳をしたとき、立っているとき、動いたときなど)、どのようなときに痛みが軽くなるか(安静時、座っているときなど)など
  • 胸痛以外の症状はあるか:冷や汗、嘔吐、息切れ、呼吸困難、咳、疲れやすさ、麻痺、しゃべりづらい、呼吸や脈が速い、失神など

病院では、問診や身体診察を通じて心臓や肺の病気を疑う場合は、心電図や胸部X線、採血などを行い、その結果に応じて超音波(エコー)検査や胸部CTなどを追加して病気を絞り込んでいきます。また、胃や膵臓などの消化器や骨・筋肉などの病気を疑う場合は、検尿や検便、腹部X線や採血などを行い、適宜、エコー検査やCT、胃カメラなどを実施します。

以下、左胸の痛みで考えられる代表的な病気を原因の部位別に紹介します。これ以外にも原因となり得る病気はたくさんあるので、くれぐれも自己判断はせず、早めに病院に行くようにしてください。

左胸の痛みで考えられる心臓の病気

急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)

心臓に酸素や栄養素を送る血管(冠動脈;かんどうみゃく)が詰まってしまう病気です。心臓を動かす筋肉が動かなくなるので、突然に激しい胸痛(締め付け感、灼熱感、圧迫感)が起こり、本人は苦しそうな顔つきになります。この痛みは30分以上続きます。冷や汗、嘔吐、息切れなどとともに、左肩から左腕の痛みを感じることも多いです。

狭心症(きょうしんしょう)

動脈硬化により心臓の冠動脈が狭くなり、十分に酸素や栄養素が供給されないことで起こる病気です。胸痛(締め付け感、灼熱感、圧迫感)が起こりますが、持続時間は短く、通常は数分、長くても20分以内に消失します。運動後や食後、寒い場所、ストレスなどで症状が悪化し、安静にしていると治まることが多いですが、安静時に出るタイプもあります。

心膜炎(しんまくえん)

風邪(かぜ)などをひいた後に、ウイルスや細菌が心臓を包む膜(心膜)に感染して炎症を起こす病気です。刺すような鋭い痛みがあり、呼吸や咳、飲み込みなどで痛みが強まります。痛みは数時間から数日続き、いったん強くなりますが、その後は軽くなっていきます。首や左肩が痛むこともあります。

左胸の痛みで考えられる血管の病気

急性大動脈乖離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)

心臓から全身へ血液を供給する大動脈の内側の膜が裂けてしまう病気です。突然、今までになかったような激烈な痛みを感じます。胸だけでなく背中も痛むことが多く、裂ける部分が広がるとともに痛む場所も移動することが特徴です。脳への血液供給が足りなくなって、身体が麻痺したり、うまく話せなくなったりすることもあります。

肺塞栓(はいそくせん)

心臓から肺へ血液を送るための血管が何らかの原因で詰まってしまう病気です。長時間動かない状態が続いた後に起こることが多く、エコノミークラス症候群とも呼ばれています。肺に血液が回らず、酸素不足になるために息苦しくなり、胸が重苦しく感じられ、脈も速くなります。

左胸の痛みで考えられる呼吸器の病気

自然気胸(しぜんききょう)

若いやせ型の男性が、それまでは何もなかったのに突然に呼吸が苦しくなる病気です。これは胸腔内に空気や気体が入ってしまったことが原因です。安静にしておけば治る場合もありますが、重い呼吸困難のために外科的な処置が必要になる場合もあります。

膿胸(のうきょう)

肺炎などの感染症に引き続いて、胸腔内に膿が溜まってしまうと、胸の痛みと発熱が起こります。呼吸数も多くなります。膿を抜いて抗菌薬による治療が必要です。

左胸の痛みで考えられる消化器の病気

急性膵炎(きゅうせいすいえん)

自分が分泌した消化酵素により膵臓が溶かされてしまう病気です。急激に左胸や左上腹部の辺りが痛くなり、動けないほどのひどい痛みがずっと続きます。あまりの痛みに動くことができず、じっとしていることが多いです。食後に痛みが増し、嘔吐しても痛みはおさまりません。

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)

胃酸が食道に逆流することで粘膜が傷害され、炎症が起こる病気です。食後の胸焼けが代表的な症状ですが、これを胸の痛みのように感じられる人もいるようです。この他にも慢性の咳、のどの痛み、つかえ感、すっぱいものがこみ上げてくるといった症状があります。

左胸の痛みで考えられるその他の病気

肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)

肋骨に沿って走っている肋間神経が何らかの原因で刺激を受け、痛みを感じる病気です。痛みは長続きしません。左胸の辺りの肋間神経が痛む場合は、左胸の痛みとして感じられるでしょう。咳やくしゃみと連動して痛みが強まる場合もあります。原因は不明のことも少なくありませんが、脊椎の変形やヘルニア、肋骨骨折などによる場合もあります。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

水痘(水ぼうそう)にかかると、その原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が神経の中に潜伏します。やがてウイルスが再活性化すると、神経の走行に合わせてズキズキ、ピリピリしたような痛みが出て、その後に帯状に水疱ができます。痛みや水疱の出る場所は人によりまちまちですが、左胸周辺にできる場合もあります。

乳腺炎(にゅうせんえん)

乳房には、母乳を作り出すための乳腺があります。ここに炎症が起きた状態が乳腺炎です。左の乳房で乳腺炎が起きた場合は、左胸の痛みとして感じます。乳腺炎は産褥期から授乳期にかけて起こることが多いですが、それ以外にも細菌感染によって起こる場合もあります。

パニック障害(心臓神経症)

締め付けるような胸の痛みやうずき、動悸、発汗、身震い、息苦しさ、めまい、恐怖感などが突然起こります。これは普段の何気ない行動の最中に、状況によらず起こります。一連の発作は短時間でおさまるものから30分以上持続するものまで、まちまちです。精神的な病気であり、心臓などの内臓に異常は見つかりません。

ここまで、左胸の痛みで考えられる代表的な病気を紹介しました。あくまでよくあるパターンをお示ししただけなので、ケースによっては症状が異なる可能性があります。他にも左胸の痛みを引き起こす病気は他にも多くあります。問診時に医師に必要な情報を伝えることが、原因を特定する大きなヒントとなります。本人が伝えられない場合は、家族や周りの人が分かる範囲で代わりに伝えてあげるとよいでしょう。

参考文献

・平井忠和. “胸痛” 臨床検査のガイドライン 2005/2006. http://www.jslm.org/books/guideline/05_06/041.pdf(参照2017-11-06)

・塩尻俊明編. 内科主訴25の確定診断術. 文光堂 2013 http://www.bunkodo.co.jp/pdf/appendix/1018-9.pdf(参照2017-11-06)

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