左下腹部を中心に痛みを感じる腹痛について

更新日:2016/12/15 公開日:2016/12/09

腹痛の原因

腹痛の中でも、局所的にズキズキと激しい痛みをともなうものがあります。この場合、直下にある臓器の炎症などが原因と見られるケースが多いです。ドクター監修のもと、左下腹部の痛みが現れたときに疑われる病気について解説します。

左下腹部が痛む場合、大腸の一部であるS状結腸や、膀胱や前立腺や腎臓などの泌尿器、卵巣・子宮などの生殖器になんらかの病気がある可能性があります。

大腸の一部であるS状結腸とは?

腸とは、胃と肛門をつなぐ管状の臓器を指し、その長さは、成人で7~9mほどもあり、曲がり折り重なるようにして腹部に収められています。大きくは小腸と大腸に分類され、小腸は胃からつながる十二指腸、空腸、回腸、大腸は盲腸、結腸、直腸で構成され肛門へとたどり着きます。

肛門に近い結腸は、ちょうど下腹部の直下に存在しますが、S状結腸は、文字どおりS字型に曲がっており、下腹部でも左寄りに位置します。そのため、左下腹部痛はS状結腸の炎症や腫瘍などから来ている可能性もあります。

また、大腸と腹部の皮膚の間には泌尿器、生殖器が存在します。具体的には、尿を蓄える膀胱、前立腺(男性)、子宮(女性)などで、S状結腸同様、これらの器官の病気から痛みがきている可能性もあります。

なかなか痛みが引かない体性痛の危険性

腹痛は大きく分けて、内臓痛・体性痛・関連痛の3つの種類があります。

一般的に多く起こりがちなのは、内臓痛と呼ばれる腹痛で、暴飲暴食や生活習慣の乱れ、そして日々のストレスなどが原因で発症します。おそらく誰でも一度は経験したことのあるタイプの腹痛です。香辛料や脂肪分の多い食品を食べたり、アルコールを大量に摂取したりすると、胃や腸の内部で、胃酸や腸液のバランスが崩れて腸内細菌のバランスを崩してしまい、急性胃腸炎を引き起こすこともあります。

局所的に鋭く刺すような痛みが30分ほど続く腹痛は体性痛に該当します。痛む箇所に強い炎症が見られ、患部を指で押すと響くような痛みを感じます。また、炎症の程度が激しい場合、近くにある別の臓器の神経を刺激して痛みを感じる場合があります。これは関連痛に当たります。

具体的に「持続的に左下腹部が痛む」という場合は、体性痛の可能性が高いでしょう。この場合の体性痛は、S状結腸や泌尿器、生殖器と関連した他の病気を併発している可能性が高く、決して安静にしているだけでは治りません。そればかりか、緊急手術を要するような重病を引き起こしている可能性もあります。

左下腹部痛があるときに疑われる代表的な疾病

大腸癌

食生活が欧米化するとともに、日本でも患者数が増えているのが大腸癌です。大腸粘膜から発症し、進行するまで自覚症状が乏しいため、注意が必要な癌の1つです。腹痛以外に、排便困難、血便が見られる場合は大腸精密検査(大腸内視鏡検査)などが必要となります。

S状結腸穿孔

S状結腸が憩室炎などの炎症により、穴が開いてしまう病気です。穿孔によって大腸菌が一気に体内へ流出するため、腹膜炎を引き起こします。急激に激しい痛みに襲われ、腹膜炎を起こすと発熱もともないます。

急性腸炎

ウイルスや細菌による感染、または、刺激の強い食べ物を摂取した後や、ストレス、生活習慣の乱れが原因となり腸管に炎症が起きた状態をいいます。なんでも口に入れてしまう乳幼児にも注意が必要です。

潰瘍性大腸炎

大腸表面の粘膜に炎症が起き、粘膜がただれて潰瘍ができる病気です。詳しい発症原因は究明されておらず、免疫異常や食生活などが原因とされていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

過敏性腸症候群

小腸・大腸の運動や分泌機能異常による病気で、腹痛以外でも、下痢や便秘といった症状をきたすこともあります。暴飲暴食などの生活習慣だけではなく、ストレスなどの心理的な要因が原因で発症することもあります。

大腸憩室炎

慢性的な腸内の圧力が高まりにより、腸の壁の弱い部分ににデコボコしたくぼみ(憩室)が出来ている状態をいいます。高齢になると、腸壁が劣化するため発症するケースが多いです

憩室は良性ですので普段は放置して大丈夫ですが、時に細菌が入り込んで炎症を起こすことがあり、これを大腸憩室炎といいます。大腸憩室炎は軽度の場合は、抗生物質の内服による治療を行いますが、炎症が進行してしまうと、腸の穿孔、閉塞を引き起こす恐れがあります。

便秘

大腸の中でも、S状結腸は便が溜まりやすい場所といわれています。便秘が長引き便が貯留すると、左下腹部の違和感や張りが出現し、便が硬くなることによって排便時に肛門の痛みをともなうこともあります。

前立腺肥大症

男性ホルモンバランスの乱れなどよって、前立腺が肥大化し、尿道が圧迫され排尿困難や頻尿を引き起こす病気です。50歳以上の男性に見られることが多いです。排尿障害によって、膀胱に尿が溜まりすぎると下腹部に痛みが走ることもあります。

急性前立腺炎

前立腺が炎症を起こし、38度以上の発熱や排尿痛、排尿困難などを引き起こします。下腹部が痛む場合もあります。主に便に含まれる細菌が感染の原因です。抗生物質の内服で治療を行います。

子宮頸癌

子宮頚部にできる癌で、30~40代の出産経験者に多く見られる病気です。初期には症状はありませんが、進行すると性器からの不正出血が確認できます。癌が進行すると、下腹部に痛みを覚えるようになります。

子宮筋腫

子宮内の筋肉からできる良性の腫瘍を子宮筋腫と呼びます。女性ホルモンの分泌量と関係して肥大化しますが、閉経とともに縮小が見られます。いわゆる生理痛のような自覚症状があり、肥大化が進むと、膀胱や骨盤内の臓器を圧迫するため、頻尿や下肢のしびれといった症状が現れることもあります。

痛みが引かない場合は早急に医療機関へ

左下腹部痛がある場合、まずは安静にして様子を見て、受診が必要になった際に診断の助けになるように、可能であれば痛みの持続時間や頻度を記録しておきましょう。内臓痛である場合は、規則正しい生活を心がけ、食事の栄養のバランスを再考することも大事です。

しかし、今回ご紹介した体性痛の場合、重度の合併症を引き起こしている可能性もあるため、無理は禁物です。ただちに痛みが引かない、同じ場所がくり返し痛むという人は、早急に医療機関を受診して、適切な処置を受けるようにしてください。