右下腹部を中心に痛みを感じる腹痛について

更新日:2018/01/22 公開日:2016/12/09

腹痛の原因

右下腹部に痛みがある場合、消化器が原因のこともあれば、それ以外の臓器が原因のこともあります。どんな病気が関係するのか、また急を要する場合の見分け方や、医師に伝えるべき情報について、ドクター監修の記事で詳しく解説します。

◎短くポイントをまとめると
右下腹部の痛みを起こすのは、消化器(とくに腸)、泌尿器、産婦人科の病気が多い
強い痛みが続いたり、発熱や嘔吐、血便があったりするなら、すぐに病院へ

おなかが痛い、とくに右の下っ腹(右下腹部)が痛む。こんなときは、なにか特別な病気ではないかと心配になってしまいます。どんな症状があるときは急いで病院に行かなければいけないのでしょうか。また、右下腹部が痛むときはどの臓器が原因になっているのでしょうか。

こんな場合はすぐに病院へ

右下腹部が下記のような痛みであれば、我慢せずになるべく早く医療機関(内科、消化器内科、救急外来など)を受診してください[1]。

  • 強い痛みが数時間にわたり続いている
  • 痛みのために眠れない/寝ていても夜中に痛みで目覚めてしまう
  • 痛む場所がみぞおちから右下腹部に移動した
  • 右下腹部だけでなく、同時に他の部分も痛んでいる
  • 歩くなどの振動で、痛みがひどくなる
  • 痛みで腹筋に力が入ってしまう

また、右下腹部の痛みに加えて、下記のような症状がある場合も、早めに受診するようにしましょう[1]。

  • 熱が出ている
  • 血便や下血がある
  • 何度も吐いてしまっている
  • ダイエットしているわけではないのに体重が減ってきている

右下腹部痛の原因を見つけるために、医師に伝えたい情報

右下腹部の痛みといっても、その原因は腸などの消化器とは限りません。尿路の病気、血管の病気、女性ならではの産婦人科の病気なども考えられます。

病院では、問診や身体診察(視診、触診など)を行って、必要に応じて検査などでチェックして、どの臓器が痛みを引き起こしており、どんな病気なのかを診断していきます。大事なのは、診断に至るための情報を医師にしっかり伝えることです。下記のようなことを伝えると診断にとても役立ちますので、できる限り的確に伝えるようにしてください。

  • どのように発症したか:突然、急に起こった、徐々に起こった、など
  • どのような痛みか:ビリッ、キリキリ、ピリピリ、チクチク、ズキズキ、しくしく、刺すような痛み、差し込むようなにぶい痛み(鈍痛)、など
  • 痛みはどのくらいの期間続いているか:ずっと痛みが続いている、痛みに波がある、など
  • 痛みのピークはいつごろか:痛くなってから1時間後くらい、など
  • 痛みの程度は変化するか:だんだん強くなる、しばらくしたら痛くなくなる、痛みは変化しない、など
  • 何をすると痛みが変わるか:食事、排便、深呼吸、身体を動かす、など
  • 腹痛がある間はどう過ごしていたか:横になっていた(眠れた/眠れなかった)、仕事や家事をしていた、食事をした、便通があった、など

この他にも、普段食べ慣れないものを食べた、海外旅行に行っていた、今までに同じような腹痛を起こしたことがある、今までに手術をしたことがあるなど、思い当たることや違和感があれば伝えてください。飲んでいる薬、漢方、サプリメント、健康食品などを知らせることも診断の助けになります。

右下腹部の痛みを引き起こす病気

では、右下腹部の痛みを引き起こす病気にはどのようなものがあるでしょうか。右下腹部には、大腸、盲腸、虫垂があることは想像がつくかもしれませんが、他にも右下腹部痛を引き起こす臓器としては、胆嚢、膵臓、尿路、血管などがあります。男性では前立腺や精巣、女性では子宮や卵巣の可能性もあります[2]。

痛む部分がはっきりしない内臓痛

腹痛の原因として多いのは、暴飲暴食や刺激の強いもの(アルコールや冷たい水の飲み過ぎ、香辛料や脂肪の多い食事)によるものや、細菌やウイルスによる胃腸炎です。この場合の痛みは内臓(消化管)に炎症が起こったり、内圧が高まったりしたために起こる「内臓痛」という種類のものであることが多く、その症状には下記のような特徴があります。

  • 痛い場所がはっきりしない
  • 押されるような、しぼられるような鈍い痛み
  • 痛みに波がある

痛む部分がはっきりしている体性痛

一方、突き刺すような痛みが続くようなら「体性痛」(たいせいつう)である可能性があります。これはおなかの中にある腹膜や腸間膜などが引っ張られたり、漏れた消化液などで刺激を受けたりしたときに起こるものです。体性痛を起こす病気では緊急手術が必要となるケースもあります。

  • 痛む場所が限定されている(はっきりしている)
  • 突き刺すような激しい痛み
  • 痛い部位を押すと痛みが増す
  • 歩いたり身体を動かしたりすると痛みが響く

以下、右下腹部の痛みを引き起こす病気について、原因となる部位別(腸、腸以外の消化器、泌尿器、血管)や性別に分けて解説していきます。これは考えられる病気全体のごく一部であり、実際に何の病気であるかを知り、適切な対処を行うためには医師の診察を受ける必要があります。あくまで参考程度としてご覧ください。

右下腹部痛を引き起こす腸の病気

右下腹部痛を引き起こす腸の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 虫垂炎
  • 大腸炎
  • 大腸憩室炎
  • 炎症性腸疾患
  • 過敏性腸症候群
  • 鼠径ヘルニア

このなかの一部について、下記で詳しく説明します。

虫垂炎

胃もたれやお腹がグルグル鳴る症状の後に、みぞおち周辺~右下腹部に張るような痛みが起こった場合は「急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)」の可能性があります。昔は「盲腸炎(もうちょうえん)」と呼ばれていました。痛みにともなって吐き気・嘔吐が起こることもあります。放置すると悪化する可能性があるので、病院で診てもらいましょう。

大腸炎

何らかの原因で大腸に炎症が起こった状態を大腸炎といいます。多いのは、食品などを介して体内に入った悪い細菌やウイルスなどが感染し、身体の防御機構(免疫)が対応した結果として炎症が引き起こされるケースです。腹痛のほかに下痢が起こることが多いです。

過敏性腸症候群

内視鏡検査などをしても腸そのものには異常が見つからないのに、おなかの痛みや不快感があり、便秘や下痢などを繰り返す病気です。腸と脳の神経情報伝達がうまくいかなかったり、小腸や大腸の運動や分泌機能がうまくいかなかったりするためにこのような症状が起きます。ストレスや腸内細菌の乱れが原因の一つとされています。

鼠径ヘルニア

臓器が本来ある場所から飛び出してしまうことをヘルニアといいます。なかでもよくみられるのが「鼠径(そけい)ヘルニア」です(一般的に「脱腸」と呼ばれています)。腸の一部が足の付け根にある筋肉の穴に入り込んでしまう病気で、飛び出した部分が膨らみます。右足の付け根に腸が飛び出したときは、右下腹部の不快感や痛みが出ます。飛び出したまま戻らない状態(嵌頓;かんとん)が続くと、腸が締め付けられて血流がさまたげられ、強い痛み(疼痛)が出ます。

右下腹部痛を引き起こす腸以外の消化器の病気

右下腹部痛を引き起こす腸以外の消化器の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 胆嚢炎
  • 膵炎

胆嚢炎

脂肪(コレステロール)の多い食事を続けていると、胆嚢内に石(胆石)ができやすくなります。この胆石があると、食後に胆嚢が収縮したときに「胆石発作(たんせきほっさ)」が起こることがあります。脂っこい食事を摂った夜に起こることが多く、突然お腹が張るような痛みが15分~数時間続きます。発熱、気持ち悪くなり、食べた物を吐くこともあります。

膵炎

急激に腹部が痛くなり、動けないほどのひどい痛みがずっと変わらず続く場合は「急性膵炎(きゅうせいすいえん)」かもしれません。あまりの痛みに、背中を曲げて横向きに寝てじっとしているケースが多いようです。飲酒、食事で痛みは増し、嘔吐しても痛みがやわらぐことはありません。早く病院で処置を受けましょう。

右下腹部痛を引き起こす泌尿器の病気

右下腹部痛を引き起こす泌尿器の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 尿管結石症
  • 尿路感染症

尿管結石症

右下腹部もしくは左下腹部が痛む病気としては「尿管結石(にょうかんけっせき)」もあります。腎臓から尿を膀胱に運ぶための管(尿管)に石が詰まることで、脇腹もしくは背中に激痛が起こります。発症時間は夜から明け方が多いようです。

尿路感染症

尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱に溜められ、トイレに行くと膀胱から尿道へ押し出されて排尿します。この一連のルートを尿路といい、尿路のどこかで感染症が起きた場合に「尿路感染症」と呼ばれます。なかでも膀胱炎が有名ですが、膀胱炎が悪化して、細菌が腎臓まで達すると「腎盂腎炎(じんうじんえん)」となります。腎臓は左右に2つあり、脇腹と背骨の中間あたり(背部)に位置します。右側の腎臓が腎盂腎炎になった場合は、右の脇腹から腰にかけての痛みが起こります。発熱や嘔吐、全身のだるさ(倦怠感)を伴うことが多く、血尿が出ることもあります。抗生物質で治します。

右下腹部痛を引き起こす血管の病気

右下腹部痛を引き起こす血管の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 動脈解離
  • 動脈瘤
  • 動脈瘤破裂

ここでは、動脈瘤のうち腹部大動脈瘤について説明します。

腹部大動脈瘤

心臓から送り出された血液は大動脈を通って全身に向けて送られます。消化管をはじめとした内臓や下半身へとつながる大動脈を腹部大動脈といい、そこにできた瘤を「腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)」といいます。多くは動脈硬化が原因で起こります。初期では症状があまり出ませんが、お腹の張りや便秘、腰痛などを訴える人もいます。おなかを触ると、心拍と連動してドクンドクンと触れる膨らみを感じることで気づかれるケースもあります。長い期間気がつかずに瘤が大きくなってしまうと、まわりの臓器を圧迫するため、腹痛が出ることもあります。瘤が大きくなって破裂してしまうと命に関わるため、緊急手術が必要になる場合もあります。

右下腹部痛を引き起こす男性の病気

右下腹部痛を引き起こす男性の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 前立腺炎
  • 精巣上体炎

前立腺炎

前立腺に細菌が感染することなどをきっかけに炎症が起こる病気です。発熱、残尿感、排尿時不快感、頻尿、下腹部が痛む場合もあります。排尿するときに痛みがあったり、排尿が困難であったり、頻尿になったりすることもあります。長時間のドライブやサイクリング、過度の飲酒などが細菌感染のきっかけになります。

右下腹部痛を引き起こす女性の病気

右下腹部痛を引き起こす女性の病気としては、主に下記のようなものが挙げられます[2]。

  • 異所性妊娠(子宮外妊娠)
  • 子宮内膜症
  • 卵巣出血
  • 卵巣嚢腫
  • 卵巣茎捻転
  • 子宮筋腫

異所性妊娠(子宮外妊娠)

妊娠の可能性のある女性で、いきなり下腹部が激しく痛み、性器からの出血(不正出血)があるようなら「異所性妊娠(いしょせいにんしん)」の可能性があります。本来なら子宮内に着床するはずの受精卵が、卵管や卵巣など別の場所にとどまってしまうという病気です。早期発見が重要なので、躊躇せずに病院に行ってください。

子宮内膜症

本来は子宮内にあるはずの子宮内膜が、子宮外にできてしまって増殖してしまう病気です。多くは子宮と直腸の間にあるダグラス窩(か)という部分によくできるのですが、卵巣や卵管、虫垂、尿路などにもできることがあります。子宮内膜症では月経痛(生理痛)や下腹部痛、腰痛、性交痛が起こることが多く、部位によって右下腹部の痛みとして感じることもあります。

卵巣茎捻転

女性の場合、下腹部には卵巣や子宮があります。突然、下腹部に激痛が起きて、痛みが続くようなら「卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)」かもしれません。卵巣のできものがねじれて痛みが出ます。特に以前から卵巣にできものができていることが分かっている場合はこの病気である可能性が高いので、その場合は医師にそのことを伝えてください。

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