スナックスクールでおやつのルールを知ってほしい

禁止ではなく、正しいルールを伝えたい。

カルビー株式会社
コーポレートコミュニケーション本部 CS 推進部
スナックスクールチーム主任 太田江美 氏

(ヘルスケア大学)  本日は「食育」について伺いますが、まず、「カルビー」という社名について教えてください。ある栄養素の名前から付けられたと聞きました。

(太田)  創業は1949年と戦後まもなくです。当時は栄養不足が深刻な時代。特に多かった栄養失調やかっけなどにはビタミンB1が必要で、カルシウムも一緒に摂ると相乗効果があることを、創業者の松尾孝が独学で勉強しました。そこで、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」から社名を「カルビー」とし、安くて美味しく栄養のある食品を皆様に提供したいと始めた会社です。当初はキャラメルやチョコレートの甘いお菓子が主でしたが、「かっぱあられ」から発展した「かっぱえびせん」の大ヒットにより、これでいこう、と、しょっぱいお菓子を主力商品に。そこから、「サッポロポテト」や「ポテトチップス」が誕生し、今日に至ります。

自然の恵みを、安全・安心に、皆様にお届けしたい。この思いから、原材料のジャガイモづくり、畑づくりにまでさかのぼり、生産、収穫、工場での製造、味付け、袋詰めまで品質管理を徹底し、丁寧かつ一生懸命につくり続けています。

(ヘルスケア大学)  創業時から人々の健康への思いがあるのですね。では、「スナックスクール」を立ち上げた経緯はなんでしょうか?

(太田)  身近なおやつをテーマに、子どもたちに正しいおやつの食べ方を指導する「スナックスクール」は、2003年にスタートしました。きっかけは、弊社社員の小学生のお子さんが学校からもらってきた、夏休みの注意事項のプリントでした。そこに、「夏休みに食べてはいけないもの」として、スナック菓子、清涼飲料水、カップラーメンと書いてありました。非常に驚き、また、残念でもありました。わたしたちとしては、健康面から衛生面まで徹底的に管理して生産し、皆様に喜ばれるものを提供している自負があります。子どもたちにこんな指導をされては……、と奮起し、周囲のお母さん方や先生方に実態調査を行いました。

すると、お母さん方がスナック菓子を禁止する理由は、「おやつを食べると夕飯を食べないから」がもっとも大きいとわかりました。お母さん方にすれば、夕飯を食べてもらわないと栄養面で不安だ、でも、直前までポテトチップスなどスナック菓子を食べると、お腹いっぱいで夕飯を食べない。それならスナック菓子を禁止すればいい、という発想だったのです。

また、先生方からすると小児生活習慣病の増加も背景にあります。学校で健康診断を受ける15歳までの子どものうち約10%が肥満であるという要因には、運動不足や遅い睡眠時間、さらに、「孤食」の問題が挙げられています。核家族の両親共稼ぎや通塾により子ども一人の食事が増え、好きな物や簡単な物を選びがちです。また、家族でファミリーレストランに行っても個人で違う物を食べる「個食」もあります。どちらのケースにも言えるのは、誰にもごはんの食べ方を注意されない、という点です。

(ヘルスケア大学)  正しい食生活を教えられず自由に食べてしまう子どもたち。そこに危機感を抱いたのですね。

(太田)  2005年に食育基本法が成立し、学校の教育現場でも食育を行うよう国は指導しますが、いざ教える現場の先生方にしてみれば、教科書もない、指導要綱もない、なにより自分が教わっていないので、「どうやって教えたらいいのか」と悩まれたようです。また、各家庭ではお母さん方が「子どもが夕飯を食べない」と悩みを募らせている。そこで、大人たちが子どもをよくよく観察すると、放課後や休日に、スナック菓子、清涼飲料水、カップラーメンを好んで食べていることがわかった。それで夕飯が食べられないのであれば、禁止すればいい、と結論づけたようです。

先生方への調査では、スナック菓子を禁止する理由も深く質問しましたが、塩分・油分、食品添加物、色が濃いなどよりも一番多い理由は「なんとなく」という回答でした。とてもショックでしたね。「なんとなく」ポテトチップスが禁止されたのであれば、この誤解をなんとか払拭したい。また、お菓子メーカーとして「おやつを正しく食べて楽しんでもらう」意味での責任も果たしたいと考え、「スナックスクール」を立ち上げました。

大事なのは量と時間。ルールを守ればおやつは栄養になる

(ヘルスケア大学)  1枚のプリントをきっかけに始まった「スナックスクール」。その内容はどのようにつくっていかれたのですか?

(太田)  これまた偶然の出会いですが、公立小学校に勤める栄養士の先生のインタビュー記事を新聞で見つけ、その取り組みに感銘を受け、すぐに相談しました。その先生は、酪農家さんから牛を借りて子どもに乳を搾らせ、「母牛が出産して子牛を育てるためのおっぱいのおすそ分けを君たちはもらっているんだよ」とか、何メートルもの長いホースを小腸に見立て、「こんなに長いんだから朝はちゃんとうんちを出しておこうね」とか、校内の畑で野菜を育てることで野菜嫌いをなくしていくなど、当時としては非常に先駆的な食育指導をされていました。「食育」とは、栄養面だけでなく、ごはんやおやつが、どこから、どうやって、自分の前にやって来るかも教えるもの。わたしたちの願いも同様です。

実際、その先生も、「食べてはダメ」の禁止は間違いで、「食べてもいい時間と量のルールを教えることが大事」とおっしゃいました。そして、自分のお小遣いで買い物をし始める小学3、4年生からを対象にわかりやすい内容を、一緒に組み立てていきました。

(ヘルスケア大学)  具体的な内容を教えてください。

(太田)  「スナックスクール」は無償の出張授業です。わたしたちカルビーの社員が講師として各学校に赴き、子どもたちに直接授業を行います。一番の特徴は、「はかって、くらべて、おやつの量ゲーム」ですね。5~6人にグループ分けし、いつも食べている量のポテトチップスを秤にのせてもらいます。自由トークで進めるので、「そんなに食べているの?」「多くない?」「少ないね?」と子どもたちは言い合い、普段の量に改めて気づく機会にもなります。その後、正しい量の答え合わせをする。性別や運動量により細かくは異なりますが、いっせいに教えるために子どもの1日の推定エネルギー必要量は2000 kcalを基準とし、「目安は1日の1/10のエネルギー量」と伝えます。つまり、1日のおやつは200 kcalが目安で、ポテトチップスに換算すると約35g。ほぼ、子どもたちの両手にこんもりのる程度の量になります。市販の袋サイズは60gですから、約半分と見てもいいですね。

「おやつを食べていい時間はいつ?」というのも大事なポイント。正解は、「夕飯2時間前に食べ終えている」こと。19時が夕飯なら、17時までにおやつを食べ終えればいい。これは、子どもたち自身のみならず、お母さん方にもわかりやすい目安となりました。

(ヘルスケア大学)  子どもにとってのおやつには、どんな意味があるとお考えですか?

(太田)  子どもにとって、おやつは生活リズムをつくる大事な一食である、とわたしたちは考えています。肥満傾向の反面、少食の子どももいて、そうした子には、おやつが大事な栄養摂取の機会です。1日3食+おやつのトータルで、1日に必要な栄養素と量を摂取する。そう考えると、子どもの食欲は日によって違うので、おやつの種類や量を変えることで、「食べてはダメ」なものから、「積極的に考えて食べるもの」へと、おやつの存在意義は一変します。また、何より学校から帰っておやつを食べてホッとすれば、「遊ぶ」「勉強する」など次の活動への気持ちの切り替えが早くできます。

(ヘルスケア大学)  「スナックスクール」を受けたみなさんの反応とは?

(太田)  子ども自身の感想は難しいので、先生や保護者の方々にアンケートを取ります。「スナックスクール」は参観可能な授業なので、多くの保護者がお見えになります。

「スナックスクール」では、ほかに、栄養成分表示、原材料表示、製造年月日や賞味期限の見方も教えます。ポテトチップス以外でも200kcalを応用して自分で選ぶことができるようになるためです。すると、「翌日の給食でさっそくジャムの表示を見ていた」「家でおやつの食べ過ぎを叱らなくなった」などの反応をアンケートよりいただきました。

大切なのは「食べてはダメ」の禁止ではなく、「量と時間のルールを知ること」。それが、子どもたちだけでなく、先生や親御さんの大人たちにも理解してもらうことが、わたしたちの目標です。

コミュニケーションにも楽しいおやつの意味

(ヘルスケア大学)  「スナックスクール」の開催は、順調に伸びておられますね。

(太田)  2016年度は、計773校、児童・保護者56,239名でした。開始から累計54万人が受講され、2003年のスタート時に比べるとずいぶん認知度が高まり、ありがたい限りです。

実は、「スナックスクール」は広報部において始めたもので、当時は、訪問販売と同様の地道な営業を行いました。飛び込みで学校の呼び鈴を押したり、時には電話でアポイントをとったり。まずはお菓子の企業が学校に来ることを怪しまれ、「商品広告をされては困る」とけんもほろろに追い返されたこともありました。校長先生は興味を持たれても、実際に授業をする先生方に伝わらなかったり、面倒が増えると嫌厭されるものでもありましたね。

ですが、わたしたちの「スナックスクール」で企業的な部分があるとすれば、教材DVDで工場を映し出す程度です。畑で採れたジャガイモがどうやってポテトチップスになるかを見せることは、乳牛を借りてきて乳を搾らせるのと同様に、食育としては必要不可欠な部分だと考えます。この点をご理解いただいた方には、「企業がここまでやるとは感動」と評してくださった校長先生もいましたし、教育委員会の方にも参観いただいてご納得を得ることもできました。

こうして実績をつくると、マスコミが珍しがって報道してくれ、全国からの問い合わせが増えていきました。わたし自身も営業に回った身ですから、最初の苦労に比べると、現在は開催が追いつかないほどに伸びてうれしく思います。

2011年度は496校。講師は弊社社員が行うため、このままではマンパワーに限界がくると考え、2012年には、先生だけでも同様の授業が行える「スナックスクール」の教材を作成し、無償提供を始めました。出張授業700校、教材提供100校が近年の推移です。利用校の約60%がリピーターとなり、「毎年3年生で実施する」といった定期開催も増えました。

(ヘルスケア大学)  今後はどのようにおやつのルールを周知していきたいですか?

(太田)  子どもたちに継続しながら、保護者に向けた講義も広めたいと考えています。たとえば、10代前半の女の子は一生のうちで一番栄養を取っておかなければならない世代ですが、食事量が少ないケースが気になります。ちょうど保護者は健康のために摂取エネルギーを控え始める世代なので、「娘さんはお母さん方より多くの栄養素と量をしっかり食べていますか?」などの注意点を喚起すると、成長期であることにハッとするようです。つくる食事の質と量をあげたり、体に必要だからおやつを食べているのだと見方が変わります。お菓子では心配なら軽食に置き換えるなど、新しい発見と応用ができます。また、大人への講義は、子どもにおやつのルールをどのように教えたらよいかを学んでいただくと同時に、大人自身のおやつの食べ方をも考えるきっかけになるでしょう。

とはいえ、おやつが食事と違うのは、食べる楽しみとコミュニケーション。自分へのご褒美だったり、一緒に食べる人の好きなものを選んだり、旅行のお土産や話題の新店に長時間並んだなど、「何を食べようか」と選ぶシーンからワクワクするものです。だから、わたしたちは、おやつの重要な役割を「心の栄養」と呼んでいます。正しく、楽しく、仲良くわけあって食べるなど、「おやつは楽しい!」ということを、いっそう周知させていきたいと考えています。

■ブランド情報

カルビー・スナックスクール

「人々の健やかなくらしに貢献する」ことを目的に、身近なおやつを通して食の正しい知識や楽しさを伝えるフードコミュニケーション活動を全国各地で行っています。
中でも2003年からスタートした「カルビー・スナックスクール」は、「身近なおやつを考える」をテーマとした学習プログラムで、小学校に向けた出張授業です。開始から現在まで約54万人の方に受講いただきました。
今後も次世代を担う子供たちに、健やかで楽しい食生活をおくるために必要な 「正しい食習慣」と「自己管理能力」をお伝えするため、活動を継続します。

http://www.calbee.co.jp/foodcom/

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