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夏風邪による下痢・腹痛の正しい対処法

更新日:2017/11/30 公開日:2015/04/14

夏風邪の症状と対処法

夏風邪の症状として、下痢や腹痛などを訴える方は少なくありません。お腹を壊してしまう原因はなんでしょうか?ドクター監修のもと、夏風邪による下痢・腹痛の原因と、正しい対処法について解説します。

風邪(かぜ)の代表的な症状として発熱やのどの痛みがありますが、夏に流行する夏風邪では下痢や腹痛などのお腹の不調が起こることも多いようです。このようなお腹の症状が起こる原因と正しい対処法について解説します。

夏風邪とは

夏風邪による下痢・腹痛についてお話する前に、風邪とは具体的にどのようなものか理解しておきましょう。

「風邪」という病名は、医学的には存在せず、「かぜ症候群」と呼んでいます。日本呼吸器学会は「一般に鼻腔から喉頭までの気道を上気道といいますが、かぜ症候群は、この部位の急性の炎症による症状を呈する疾患をいいます。時として、この炎症が下気道(気管、気管支、肺)にまで波及していくことがあります」と定義しています[1]。

一般に風邪の症状は鼻や喉に現れます。また、さらに奥の副鼻腔、喉頭も影響を受ける可能性があります。症状としては、咳、咽頭痛、くしゃみ、鼻水、鼻閉、頭痛、発熱、嗄声(させい;しゃがれ声のこと)などがみられます。

これらは、ウイルスや細菌の体内への侵入により生じます。風邪のウイルスというのは200種類以上あるといわれていますが、季節により原因となるウイルスが異なります。夏は高温多湿であり、これらの環境を好むウイルスにより夏風邪になります。

夏風邪の原因となる代表的なウイルスは「アデノウイルス」「コクサッキーウイルス」「エコーウイルス」「エンテロウイルス」などです。このなかで、ウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの腹部症状が主体となるのが「感冒性胃腸炎」であり、俗に「お腹の風邪」と呼ばれます。感冒性胃腸炎というよりも感染性胃腸炎のというほうが一般的に使われているようです。このうちアデノウイルスによるものは咳などの症状が前面にでますが、エンテロウイルスによるものは、腹痛や下痢などが出現します。また、夏には食中毒も起こりやすいので、これについても感染性胃腸炎として取り上げていきます。

夏風邪でお腹を壊す原因

一般的にお腹を壊す「夏風邪」と呼ばれている病気は、医学的には「感染性胃腸炎」と考えられます。夏は、汗をかき、そのままクーラーや扇風機などで体を冷やすと、急に寒気がでたりして夏風邪をひきやすい体内環境を作ってしまいます。また食品などを介して細菌やウイルスが感染し、下痢・嘔吐・腹痛・発熱などの症状が現れます(いわゆる「食中毒」)。

前述したように、感染性胃腸炎はほぼ1年中見られますが、冬にはウイルスによるもの、夏には細菌によるものが多いという傾向があります。感染性胃腸炎を引き起こす細菌やウイルスは数多くありますが、ここでは代表的な夏風邪による腹痛・下痢を呈する疾患をご紹介します。

ウイルスによる夏風邪

エンテロウイルス

エンテロウイルスとは、腸の中で増殖するウイルスの総称であり、「腸管ウイルス」とも呼ばれています。エンテロウイルスは夏から秋にかけて多く増殖します。高温多湿を好む夏の代表的なウイルスです。これにより、発熱、喉の痛み、腹痛、下痢などを引き起こします。この中には手足口病やヘルパンギーナなどを引き起こすコクサッキーウイルスや、発熱、腹痛、下痢、発疹症などを引き起こすエコーウイルスなどがあり、さらに細かく多くの種類に分類されています。エンテロウイルスが感染しても、多くは症状が出ないままで終わります。しかし、ウイルスが増殖して腸内にとどまらずに広がると、さまざまな症状が出てきます。そのうちの一つとして嘔吐、下痢、腹痛といった症状が現れることがあります。悪化すると、まれに無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)による頭痛や嘔吐、心不全、脳炎、麻痺といった重大な症状に発展することもあります[2]。症状は感染したウイルスによって異なることを理解しておきましょう。

アデノウイルス

アデノウイルスは、プール熱(咽頭結膜熱)の原因としてよく知られています。またロタウイルスやノロウイルスとともに小児の胃腸炎の原因として知られています。ロタウイルスやノロウイルスは冬に流行しますが、アデノウイルスの感染症は季節に関係なく発生するため、夏の小児の下痢や腹痛の原因としても知られています。

細菌による夏風邪

カンピロバクター

国内で発生する食中毒菌の中でも発生件数が多い代表的な原因菌です。潜伏期間は3-5日で、鶏肉や牛肉の生食や加熱不十分などで発症します。発熱・めまい・筋肉痛がおこり、次に吐き気・下痢を認めます。

サルモネラ

サルモネラは細菌の一種で、トリ、ブタ、ウシなどの家畜の腸内におり、卵や肉を介して感染することが多いといわれています。潜伏期間の約8~48時間を過ぎると悪心・嘔吐で発病し、腹痛や下痢を起こします。この症状は一般的に3~4日でおさまりますが、小児や高齢者など抵抗力の弱い人では重症化したり、回復が遅れたりすることがあります[3]。

腸炎ビブリオ

腸炎ビブリオは塩分のある環境でよく増殖する細菌で、シラス干しなどの魚介類を介して感染します。潜伏期間は約12時間で、ひどい腹痛と下痢、血便に悩まされますが、多くの場合は数日で自然に回復します[4]。

腸管出血性大腸菌

血清型O-157、O26、O103、O111、O91などにより生じます。夏に流行のピークがります。経口感染(生肉、加熱不十分な肉の摂取)や接触感染により発症します。感染3~8日後に、水溶性下痢、腹痛、嘔吐、発熱、さらに重症例では下血(鮮血)が認められます。発症してから約1週間ころに、患者の約10%で急性腎不全、血小板減少症、溶血性貧血を主症状とする溶血性尿毒症症候群(ようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん;HUS)を発症するので注意が必要です。特に、乳幼児や高齢者に併発することがあります。

夏風邪による下痢の対処法

下痢止め

夏風邪にかかると、お腹の不調の中でも下痢の症状が見られることが多いです。これは体の防御反応のひとつで、体内に侵入した細菌やウイルスを便と一緒に外へ出そうとしているために起こります。そのため、「下痢だから」といって安易に下痢止めのような薬を服用するのは考えものです。また、腸管運動を抑制する成分が含まれた下痢止めを服用すると、ウイルスを腸内にとどめてしまうことになります。

ただし、体力を消耗させてしまうほどの激しい下痢の場合は別です。下痢止めを使用した方がいいかどうかは症状の重さにより変わってくるので、自己判断で市販の薬を服用するのは避け、ドクターに相談することをおすすめします。

脱水対策

下痢のときは体内から水がどんどん出て行ってしまいます。脱水症状を起こしやすい状態ですので、水分の補給も忘れずにこまめに行いましょう。ミネラルウォーターや経口補水液、スポーツドリンクなどの摂取をおすすめします。のどやお腹の負担にならず、体を冷やさないよう常温で飲むのが望ましいです。

発熱

発熱は、体内に侵入したウイルスの増殖・活動を抑制しようとする防御反応です。体温は、脳にある視床下部でコントロールされています。37度くらいでウイルスの活動は活発ですが、体温の上昇とともに活動が抑制され、40度になると死滅しますが、同時に人の体のタンパクもダメージを受けます。ご自分がつらいときは解熱剤を服用せざるを得ません。よく医療機関から「何度以上で服用してください」と指示されるのはこのような理由によります。

食べ物

下痢や吐き気などの症状がある場合は、無理して食べる必要はありません。「栄養不足が心配」と思われがちですが、「食べる&排出する」のくり返しは体力を消耗させてしまいます。少しでも食べられるようでしたら、おかゆ、うどん、豆腐、ゼリーなど、柔らかく消化のよいものを少しずつ食べて様子をみてください。それでも辛い場合は、かかりつけの病院を受診してください。必要なら点滴を受けることになります。また十分な睡眠も非常に大切です。

感染予防

腸で増殖しているエンテロウイルスは便によって排泄されますが、すべて排出するには1か月くらいかかるといわれています。すっかり回復したと思っても、便の中にはまだウイルスが含まれており、その便が感染源となって広がってしまうおそれがあります。夏風邪から回復した後も安心せず、本人はもちろん、家族や周囲の人は手洗いをしっかりして、感染予防に努めてください。

参考文献

  1. [1]日本呼吸器学会. “かぜ症候群” 呼吸器の病気
  2. https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/disease_qa/disease_a01.pdf (参照2017-11-29)
  3. [2] 横浜市衛生研究所.“エンテロウイルスについて”
  4. http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/entero1.html(参照2017-10-11)
  5. [3] 国立感染症研究所.“サルモネラ感染症とは”
  6. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/409-salmonella.html(参照2017-10-11)
  7. [4] 国立感染症研究所.“腸炎ビブリオ感染症とは”
  8. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/438-vibrio-enteritis.html(参照2017-10-11)

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