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糖尿病の原因(3)妊娠

更新日:2018/06/22 公開日:2015/06/24

糖尿病の原因

糖尿病にはいくつか種類がありますが、妊娠をきっかけにして起こる「妊娠糖尿病」というものもあります。なぜ、妊娠すると糖尿病になるのでしょうか?妊娠糖尿病を発症する理由やリスクなどをドクター監修の記事でご紹介していきます。

糖尿病といえば、1型糖尿病や2型糖尿病が代表的です。しかし、これらとは別に、妊娠中に起こる妊娠糖尿病というものもあります。そこで今回は、妊娠と糖尿病の関係や妊娠糖尿病のリスクなどについて解説していきます。

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した「糖尿病には至っていない糖代謝異常」のことをいいます。妊娠前から糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に明らかな糖尿病と診断された場合は含みません。

糖尿病のしくみ

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなっている状態のことです。食べ物から摂取した糖質は、胃や腸で分解されてブドウ糖になり、血液に吸収されて全身をめぐります。そして、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きにより細胞に取り込まれてエネルギーとして活用されるほか、非常時のエネルギー源として肝臓や筋肉、脂肪などに貯蔵されます。糖質がエネルギーとして使われるまでのしくみを糖代謝といい、それがうまくいかなくなって血液中にブドウ糖が余ってしまうのが糖尿病です。

妊娠中はインスリンの働きが低下

妊娠すると、胎児が大きくなるに連れて、たくさんのエネルギー(ブドウ糖)を胎児に供給しなければなりません。そのため、胎盤ではインスリンの働きを抑えるホルモン(プロゲステロン、プロラクチンなど)やインスリンを分解する酵素が産生されます。このような理由から、妊娠中期以降になるとインスリンが効きにくくなって、血糖値が上がりやすくなります。

糖代謝が正常な妊婦の場合は、インスリンが効きにくくなると、すい臓からインスリンを多く分泌することで血糖値が上がり過ぎないようにコントロールできます。しかし、もともとインスリンの分泌量が少なかったり、インスリンが効きにくかったりするなど糖代謝に異常がある妊婦の場合は、血糖値が上昇してしまうのです。

妊娠糖尿病になりやすい人とは

妊娠中に血糖値が上がりやすいのは、体重が重い・両親や兄弟姉妹に糖尿病の人がいる・尿糖陽性・先天奇形や巨大児の出産歴がある・流産や早産歴がある・35歳以上といった条件にあてはまる妊婦だといわれています。

妊娠糖尿病は、妊婦の約8人に1人が発症する病気です。自覚症状がないことも多く、決して珍しい症状ではありませんが、母体や胎児にさまざまな悪影響を及ぼすため十分な注意が必要です。

妊娠糖尿病が招くリスク

妊娠糖尿病はさまざまな合併症を引き起こしたり、胎児に影響を与えることがあります。主な症状を見ていきましょう。

合併症(1)妊娠高血圧症候群

以前は、妊娠中期以降に高血圧、タンパク尿、むくみのいずれか1つないし2つの症状が現れることを妊娠中毒症と呼んでいました。しかし、医学的な研究が進むにつれて、母体や胎児に直接影響をおよぼす異常は高血圧が中心であることが判明し、高血圧が認められる場合の合併症を妊娠高血圧症候群と呼ぶようになりました。

妊娠高血圧症候群は症状が進むと頭痛やめまい、目のチカチカ、胃痛や吐き気などの症状が現れます。また、胎児が子宮にいるうちに胎盤がはがれ落ちる常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)や、発育不全を招いたり、早産や出生時の仮死状態などが起きることもあります。

合併症(2)早期産

早期産は、早産とも呼ばれ、妊娠22週0日から妊娠37週までの出産を指します。早期産で生まれた赤ちゃんは生まれた時の体重が少ない低出生体重児になりやすいうえ、体の各器官の発育も未熟なまま生まれてくることが多くなります。早期産は妊娠糖尿病の合併症として起こることもありますが、一般的には、体質や感染症が原因で起こるケースが多いとされています。

合併症(3)羊水過多症

羊水の量は胎児の成長段階によって変わります。羊水過多症とは、羊水過多に加えてお腹の張りや圧迫感、呼吸困難、むくみ、静脈瘤などの自覚症状をともなうものです。羊水過多症になると、流産や早期産、さかご、前期破水、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)、陣痛微弱などのリスクが高まります。

合併症(4)糖尿病性ケトアシドーシス

妊娠糖尿病の合併症のなかで、もっとも重篤といわれるのが糖尿病性ケトアシドーシスです。糖尿病性昏睡の一種であり、症状が強くなると、口の渇きや多飲、多尿、脱水症状による頻脈や低血圧などが現われます。さらに悪化すると呼吸困難や速く深い呼吸、嘔吐、強い腹痛などの症状を経て、昏睡状態に陥ることもあります。

適切な治療が施されないと死に至る可能性や、胎児死亡も起こりうるため、少しでもおかしいと感じたら一刻も早く医療機関を受診しましょう。

詳しくは、『妊娠糖尿病が妊婦にもたらす合併症(4)糖尿病性ケトアシドーシス』をご覧ください。

胎児に与える影響(1)巨大児

巨大児とは、生まれた時の体重が4000g以上ある赤ちゃんのことです。妊娠糖尿病により妊婦の血糖値が高くなると、胎児にも胎盤を通じてたくさんのブドウ糖が送られます。胎児は血糖の上昇を抑えるためにインスリンを大量に分泌します。インスリンには成長ホルモン様の作用があり、この影響で赤ちゃんが巨大児になりやすいとされています。

胎児に与える影響(2)新生児低血糖

巨大児の欄で見てきたとおり、妊娠糖尿病の妊婦の胎内で育った赤ちゃんはインスリンを多めに分泌しています。出生すると母親からのブドウ糖の供給はなくなりますが、赤ちゃんのすい臓ではこれまで通りインスリンの急速な産生が続いているため、血糖値が下がり過ぎ、新生児低血糖症になるおそれがあります。

このほかにも、流産や子宮内発育遅延、胎児ジストレス(胎児仮死)、や尿路感染症などが起こる可能性があります。また、胎児の器官は妊娠4週目頃からつくられ始めるので、母体の血糖値が妊娠初期から高い場合は奇形発生率も高くなってしまいます。

多くの場合、妊娠糖尿病は一時的なものなので、出産後には血糖値が正常に戻るでしょう。しかし、妊娠糖尿病になった女性は将来的に糖尿病になる可能性が高いということを忘れてはなりません。出産後も糖尿病の予防をすることが大切です。

妊娠糖尿病を予知および予防するために

妊婦健診や血糖検査を必ず受ける

妊娠から出産までは、定期的に妊婦健診が行われます。検診には血液検査が必ず含まれており、この検査で血糖値を測ります。妊娠糖尿病のスクリーニング(ふるい分け)のための血糖検査は妊娠初期(初診時または妊娠10週前後)と中期(妊娠24~28週)に行われるので、必ず検査を受けるようにしましょう。

妊娠糖尿病と診断された場合は食事療法が基本

もし、スクリーニングで陽性と出た場合は糖負荷試験をすみやかに行い、結果に従い食事療法の指導を受けます。

妊娠糖尿病の食事療法は、以下の4つを目的に行います。

  • 母体の血糖値正常化
  • 妊娠中の適切な体重増加と、健全な赤ちゃんの発育に必要なエネルギーの付加、および栄養素の配分
  • 母体の空腹時、飢餓によるケトーシス※を予防
  • 授乳のための栄養補給

※ケトーシスとは:脂肪を分解し、エネルギーを生成する際に生み出される「ケトン体」の量が増え、血液が酸性に傾くことで口の渇きやだるさ、脱水、意識障害などが起こる状態

食事療法の詳細については、『妊娠糖尿病患者の食事療法』をご覧ください。

食事療法を行って経過を見ても血糖コントロールが不良な場合は、薬物(インスリンや経口糖尿病薬)による治療が必要となります。主に、体内で不足しているインスリンを注射によって補う治療が行われますが、ほとんどのインスリン注射は胎児への影響はありません。

妊娠前・妊娠中はしっかりと体調管理を

血糖のコントロールは、妊娠してから開始しても遅いので気をつけてください。妊娠前から正しい食生活や適度な運動を心がけ、血糖状態を良好にしておくことが大切です。

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