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妊娠糖尿病が胎児に与える影響(1)巨大児

更新日:2017/02/28 公開日:2015/09/28

糖尿病が妊婦・子供に与える影響

妊娠糖尿病になると、赤ちゃんが「巨大児」になってしまうことがあります。妊娠糖尿病により巨大児になりやすい理由と、これによる母体と赤ちゃんへのリスクについて、ドクター監修のもと詳しく解説します。

妊娠糖尿病が及ぼす影響の1つに「巨大児」があります。なぜ妊娠糖尿病が巨大児につながるのか、また、これによりどのようなリスクがあるのか、詳しく解説します。

妊娠糖尿病だと巨大児になりやすい

巨大児とは、目で見てわかる奇形などの異常は見当たらないものの、生まれたときの体重が4000g以上ある赤ちゃんのことです。

妊娠糖尿病により妊婦の血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなると、胎児には胎盤を通じてたくさんのブドウ糖が送り込まれます。すると、胎児は血糖の上昇を抑制するために、「インスリン」というホルモンを多量に分泌します。この影響で、赤ちゃんが巨大児になりやすいとされています。日本産科婦人科学会周産期登録データベースによると、妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠による巨大児の発生頻度は、7.1%にも及びます。

妊娠糖尿病の症状と原因

妊娠中に気をつけたい病気の1つに、「妊娠糖尿病」があります。これは、妊婦さんの約8人に1人が発症する病気で決して珍しいものではありませんが、母体や胎児にさまざまな悪影響を及ぼすため、十分な注意が必要です。妊娠糖尿病の原因と症状、発症により起こり得るリスクについて解説します。

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発症、あるいは見つかった糖代謝異常のこと。糖代謝異常とは、血糖値は基準よりも高いが、糖尿病と診断されるほどではない状態のことです。妊娠中の検査で明らかに糖尿病と診断されるほどの高血糖が確認されたり、妊娠前から糖尿病があったりした場合は「糖尿病合併妊娠」と言い、妊娠糖尿病とは区別されます。

食事をしたあとは、食べ物に含まれる糖質が分解されて「ブドウ糖」になり、血液中に取り込まれます。よって、誰でも「血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)」は上昇します。通常は、血糖値が上昇すると「インスリン」というホルモンの働きでブドウ糖が全身の細胞に取り込まれエネルギーとして利用されたり、肝臓や筋肉、脂肪組織に取り込まれてエネルギー源として蓄えられるため、血糖値は徐々に正常な範囲にまで低下していきます。

しかし、妊娠中はお腹の赤ちゃんにもブドウ糖を供給する必要があるため、胎児が大きくなるに従って胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモンが分泌されたり、インスリンを壊す酵素が作られます。これにより、インスリンが効きにくい状態になり、その結果、血糖値が上昇しやすくなってしまいます。

妊娠糖尿病の原因

日本人の糖尿病患者に多い「2型糖尿病」は、食べ過ぎや運動不足、肥満などといった不適切な生活習慣の積み重ねが大きく影響して起こります。妊娠糖尿病も、高カロリーな食事の摂取や肥満などが危険因子になりますが、必ずしもこうした生活習慣のせいで起こるとは限らず、糖尿病になりやすい遺伝的体質を持っている(両親や兄弟姉妹に糖尿病の人がいる)ことや、35歳以上の高齢出産も原因になります。

他にも、強度の尿糖陽性※が出た人、もしくは2回以上続けて尿糖陽性が出た人、巨大児や過剰発育児の分娩経験がある人、以前または現在、妊娠高血圧症候群や羊水過多症を患っている人なども、妊娠糖尿病になりやすいことがわかっています。

※(尿糖陽性)~血液中のブドウ糖(血糖)が尿の中に漏れ出たもの。健康な人の場合、尿から糖が検出されることはない。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病になっても初期段階では、自覚症状がほとんどありません。進行すると、のどが渇く、尿の量・回数が増える、疲れやすいといった症状が現れますが、妊娠中は体の変化で疲れやすくなりますし、赤ちゃんがお腹にいることで膀胱が圧迫されてトイレが近くなるので、こうした症状が妊娠糖尿病によるものだとは気づくにくいことが多いです。そのため、自分で異変に気づくのではなく、妊娠中の検査によって判明するケースがほとんどのようです。

しかし、妊娠中に高血糖状態が続くと、流産や早産のリスクが高まり、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、尿路感染症などの合併症を起こしやすくなります。また、巨大児、低出生体重児、先天性奇形、子宮内胎児死亡などのリスクも高くなります。出生後は、新生児低血糖症、呼吸障害、多血症などの症状が起こるリスクもあるので、十分な注意が必要です。

巨大児の種類と赤ちゃんへのリスク

巨大児には、「対称性巨大児」と「非対称性巨大児」という2つのタイプがあります。対称性巨大児は、母親か父親の身長が高いなどの遺伝的な影響によるもので、体が大きいという以外には特に異常がありません。

一方、非対称性巨大児は、子宮内環境に原因があるもので、妊娠糖尿病はその代表的な例です。非対称性巨大児の場合は、心臓、肝臓、肺、副腎、脾臓(ひぞう)などの臓器の腫大が認められることがよくあります。

妊娠糖尿病が原因で巨大児になった赤ちゃんは、出生後に呼吸障害や低血糖、低カルシウム血症、多血症、高ビリルビン血症(新生児黄疸)、心不全症状など、さまざまな症状を発症することがあるため、十分な注意が必要です。

巨大児に多い肩甲難産

巨大児は、赤ちゃんだけでなく母体にもリスクをもたらします。出産時、赤ちゃんの頭だけは出たものの、肩が産道の途中でつかえてお産がなかなか進まなくなる「肩甲難産(けんこうなんざん)」になることがあるのです。

肩甲難産だと、産道や子宮頸管の裂傷、弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺、尿道損傷などを起こす可能性が高くなります。また、赤ちゃんは肩や胸がつかえているため呼吸が苦しくなったり、鎖骨骨折や上腕神経麻痺を起こすことがあります。最悪の場合は命に関わるケースもあります。

こうしたことから、分娩時に肩甲難産になったことがわかると、医師はさまざまな処置を行って一刻も早く分娩が進むよう促します。具体的には、膣の出口と肛門の間の部分を切開する「会陰切開」や、赤ちゃんを回転させて肩を背中から出す、母親のひざをお腹のほうにグッと折り曲げる、骨盤のへりに適度な圧力を加えるなどの方法が行われます。

肩甲難産になるかどうかを妊娠中に予測するのは困難ですが、妊婦検診で巨大児の疑いがあった場合は、あらかじめ帝王切開での分娩が検討されることもあります。また、妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠の場合は、巨大児でない場合も肩甲難産になりやすいので、注意が必要です。

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