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不眠症に処方される漢方薬は?

更新日:2017/03/23 公開日:2015/11/30

不眠症の検査・治療

布団に入っても寝つけない、眠りが浅いなど、不眠症で困っているのなら、漢方薬を使ってみるのもよいかもしれません。そこで今回は、不眠の人に用いられることが多い漢方薬を、ドクター監修のもと、いくつかご紹介していきます。

不眠症に悩まされている人は、「漢方薬」を使って治療するという手段もあります。今回は、不眠の人によく使われる漢方薬の種類をご紹介します。

不眠症とは?

そもそも不眠症とはどのような状態なのでしょうか。

不眠症とは、「寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」などの睡眠トラブルがしばしば起こり(週2回以上)、少なくともその状態が1か月以上続き、結果として、苦痛を感じたり、日中に倦怠感や意欲低下、集中力の低下があらわれ、日常生活に支障をきたす状態と定義されています。緊張や興奮などで一時的に眠れなくなることがありますが、一過性のものは「不眠症」とは呼びません。

西洋医学とは異なるアプローチで作用する漢方薬

西洋医学では、体をさまざまな臓器や組織の集合体としてとらえ、不調の原因になっているパーツを特定し、そこをピンポイントで治療していきます。

一方、漢方では、「気・血・水」という3つの要素で体が構成されていると考えます。「気」は目に見えない生命エネルギー、「血」は全身に栄養を運ぶ血液、「水」は血液以外の体液のことです。これらの要素が、体内をバランスよく循環することで健康が維持され、どれかひとつでも、不足したり、滞ったりすると、不調や病気が現れると考えるのです。そこで、漢方薬などを用いて、崩れたバランスを整えることが治療の根本原理となっています。

漢方薬には、睡眠薬のように直接的な催眠作用があるわけではありませんが、体のバランスを整えることで、「体質改善」や「自己治癒力の向上」をはかり、結果的に不眠を解決していきます。より具体的にいうと、漢方薬による治療では、単に眠れるようにするだけでなく、不眠からくる冷えや疲れ、めまいといった症状を改善しつつ、自然な眠りを誘うことが治療の基本にあります。

漢方薬の特徴

漢方薬は、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分で作られています。

西洋医学の薬に比べて、副作用の程度が軽く、頻度が少ないという特徴がありますが、服用していて、体調に異変を感じたら、すぐに医師の診察を受けましょう。また、漢方薬の中には、効果がゆっくり現れるものもありますが、飲み始めて1か月たってもまったく効果が実感できない場合には、体質や症状に合っていないかもしれません。その場合も、漢方専門の医師に診察してもらったり、薬剤師に相談してみましょう。

不眠症の人に処方される主な漢方薬

漢方薬は、その人の体質や病態(東洋医学では「証」という)に応じたものが処方されるので、同じ不眠症の症状でも、人それぞれで処方される漢方薬が異なります。不眠症の人に処方される主な漢方薬には、次のものがあります。

(1)抑肝散(よくかんさん)

東洋医学で言う「肝」は感情をコントロールしているとされており、ストレスがかかると「肝」の気の流れが乱れ神経が高ぶった状態となります。抑肝散は、神経の高ぶりを落ち着かせ、筋肉のこわばりをゆるめて心と体の状態をよくし、リラックス効果があります。日頃から精神的ストレスに耐えている、イライラしやすい、怒りっぽい方に使われます。母親の育児ストレスによるイライラや不眠や、認知症の方のイライラや不眠にもよく使われています。抑肝散に陳皮と半夏を加えた抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)という漢方薬もあります。抑肝散の効果に加えて、体の気をめぐらす効果の増強と長期処方でも胃腸症状が出現しにくいという胃腸保護作用を合わせ持っています。

(2)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

体のほてりやイライラなど、体が興奮して眠れないといった症状がある場合、体の機能が活発になりすぎている可能性があります。黄連解毒湯に配合される生薬には、いずれも体を冷やす効果があり、炎症、のぼせや興奮を鎮め、かゆみやイライラが治まります。体力のない人に使用する場合には注意を要します。便秘の方は、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)が使われることがあります。

(3)酸棗仁湯(さんそうにんとう)

神経の高ぶりを鎮めおだやかな気持ちにさせる効果の生薬を配合しています。心と体の状態をよくし、体力が低下した人の不眠に使われる。老化にともなって体力も衰え、なかなか眠れないという方に最適です。主薬となる「酸棗仁」(ナツメの種)は、精神を安らかにして、疲れを取り、眠りを誘うとされています。

(4)帰脾湯(きひとう)

食が細く、心身が疲れて倦怠感に悩み、意欲が低下し、血色の悪い(栄養不良・貧血傾向の)人が精神的ストレスを受け、クヨクヨと思い悩んで不安感、むなさわぎ、動悸、不眠、気うつ傾向になった状態に用いられます。胃腸が弱く、不安が強い人に効果があり、胃腸を丈夫にし、貧血を緩和します。人参(にんじん)と黄耆(おうぎ)で気を補います。酸棗仁(さんそうにん)、竜眼肉(りゅうがんにく)、遠志(おんじ)、木香(もっこう)は精神の安定に作用します。

(5)加味帰脾湯(かみきひとう)

上記の帰脾湯に、イライラやのぼせを軽減する柴胡(さいこ)・山梔子(さんしし)を加えた処方です。「酸棗仁」「竜眼」など、気持ちを落ち着かせる生薬と、貧血を緩和する生薬が配合され、不安や緊張、いらだちを鎮め、体に弱い人の不眠や神経症の方に効果的です。

(6)桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

桂枝湯に竜骨、牡蛎を加えた処方。桂枝湯は悪寒、頭痛、発熱などの風邪の初期症状によく用いられ、体を温めて血行をよくします。竜骨、牡蛎(カルシウム)は鎮静効果を持つので、興奮を鎮め、気持ちを落ち着かせます。悪夢を見る人や、子供の夜尿症にも処方されます。

(7)柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

柴胡と黄ごんを中心に、気持ちを落ち着かせる効能を有する「竜骨」と「牡蛎」を加えた処方。胸のつかえをとる「半夏」などが配合されています。神経のたかぶりを鎮めるのに効果があります。精神が不安定で、動悸や不眠症、イライラといった症状がある場合に処方されます。

(8)加味逍遥散(かみしょうようさん)

加味逍遥散は血行をただし、体を温め、上半身の熱をさまし、不安を鎮めるなどの効果を有し、更年期障害や月経不順など、婦人科の病気に対して処方されることが多い漢方です。更年期障害や月経不順によるイライラや精神不安が原因で不眠の症状が出ている女性の方に向いています。「逍遥」という言葉は、そぞろ歩くという意味で、あちらこちらをうろうろ歩き定まらない様子を指します。なんともとらえようのない症状がたくさんあり、あそこも悪い、ここも悪いと訴えるようなケースです。このように自覚症状が次々と変化する女性の病態を治すために開発された「逍遥散」に効果増強を狙って山梔子(さんしし:クチナシの果実)・牡丹皮(ぼたんぴ:ボタンの根皮)を加えたものが加味逍遥散です。

柴胡(さいこ)の抗ストレス作用

柴胡(さいこ)は、東洋医学でいう「肝」の気の流れを整える生薬の一つです。一般に柴胡が含まれる漢方薬を用いる場合の目安として、腹診により自他覚的に認める季肋部の腹壁筋群の緊張(胸脇苦満:きょうきょうくまん)があります。柴胡が含まれる処方は不眠症やメンタルヘルスにおいてよく使われます。柴胡には、他にも抗炎症作用、抗アレルギー作用、ステロイド様作用、ステロイド剤副作用防止、肝機能改善作用などが期待できます。今回ご紹介した漢方薬では抑肝散(抑肝散加陳皮半夏)、加味帰脾湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遥散に柴胡が含まれています。

漢方医学的な診察と血液検査の大切さ

漢方医学的な問診に加えて、脈診、舌診、腹診を行い漢方医学的な判断をします。体質に合わない漢方薬を飲むと、胃腸をこわしたり体のバランスが崩れて体調が悪くなることがあります。また、定期的に血液検査をしてもらうことによって、「副作用が出ていないか」「今のつらい症状の原因が他にないか」をチェックしてもらうことが大切です。きちんと診察してもらい、自分の体質にあった漢方薬を専門の医師と一緒に探していくことが「安全」で「近道」です。

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