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口蓋裂の手術、口蓋形成術について

更新日:2019/08/26 公開日:2016/04/27

口唇口蓋裂の検査・治療法

口蓋裂手術の目的は、正常な言語機能の獲得および、口蓋裂が閉鎖されていないと、哺乳や摂食が困難になるため、確実に口蓋裂を閉鎖することです。その手術法、行う時期、手術後の注意点について、ドクター監修の記事で解説します。

口蓋裂の手術、口蓋形成術、手術後の注意点について、見ていきましょう。

口蓋裂とは?

口蓋裂とは、先天異常(生まれつきの異常)のひとつです。数多くの種類がある先天異常のなかでも、特に日本人の場合、口唇口蓋裂がもっと多い疾患とされています。そのうち、口蓋(口の中の天井部分)が開いているものを口蓋裂と称し、裂け目が唇だけのものは口唇裂、歯槽(はぐき)が分断されているものは顎裂といいます。

口蓋裂が起こる原因

遺伝的と環境的の2つの要因が複雑に関係して発生しますが、まだ明確には分かっていません。環境的要因としては、妊娠初期の外的因子、母体の栄養状態(食生活の状況)や妊娠中の肉体的・精神的ストレス、副腎皮質ステロイド薬や鎮痛薬といった形態異常を誘発するおそれのある薬剤、ある種のビタミンの過不足、風疹、放射線治療などの影響によるものと言われ、高齢出産により発生しやすいともいわれています。

母胎環境の改善により、この病気の発生する割合が抑えられたという報告もありますが、現在のところ、これらの小さな要因がいくつも重なることで発生すると考えられています。そのため現在のところ明確な予防法も確立されていません。

原因については『遺伝も関係する?口唇口蓋裂が起こる原因』で詳しく解説しています。

口蓋裂によるデメリット

口蓋裂ではどのような問題が生じるのか、具体的に見ていきましょう。

哺乳障害

口蓋裂では、軟口蓋と咽頭の間の閉鎖がスムーズにいかず(鼻咽腔閉鎖機能不全)陰圧が困難、いわゆる吸う力が弱く、哺乳が困難なことがあり、ミルクを飲む際に時間が長くかかる場合があります。

言語障害

口蓋裂では、軟口蓋と咽頭の間の閉鎖がスムーズにいかず(鼻咽腔閉鎖機能不全)鼻から息がもれてしまい、話し言葉が聞きづらくなったり、鼻に抜ける音(開鼻声)や誤った発音(構音障害)を生じてしまったりすることがあります。

咀嚼(そしゃく)障害

口蓋裂では、口蓋裂や歯並びが悪いことで、うまく咀嚼できないことあります。

嚥下(えんげ)障害

咀嚼障害と同様に、口蓋裂や歯並びが悪いために起こります。

中耳炎

口蓋裂の子供は、風邪にかかりやすいと考えられています。ただし肺炎など重度な症状になることはあまりありません。また、中耳と鼻をつなぐ細い管(耳管)がうまく働かず、中耳腔に滲出液が貯留することにより滲出性中耳炎にかかりやすくなります。

顎顔面の発達障害

口蓋裂の患者は、その症状のために上顎や顔面の発育がもともと小さくなりがちです。また、手術の影響により、さらに上顎の発育が滞ることがあります。そのため相対的に下顎が出てしまい(受け口)、噛み合わせや外見に影響を及ぼすことがあります。

歯列不正

口蓋裂にともなって生じる歯の問題として、歯の本数が少なかったり、歯が小さかったり、歯そのものがなかなか生えてこなかったりすることがあげられます。また、歯質が十分に形成されず上顎の歯並びが悪くなり、下顎とうまくかみ合わないこともあります。

心理的障害

口蓋裂を持つ患者の中には、その症状によりさまざまなストレスを抱えることが多いと思われます。ただ身体的にのみ治療を行うのではなく、心理的ケアも治療の一環として取り入れていく必要があります。

合併症

口蓋裂の患者の場合は、さまざまな合併症を併発する可能性が高くなります。顔面の他の異常、心臓疾患、手足の異常、色々な症候群(ダウン症候群、ピエール・ロバン症候群など)の一症状として現れることがあります。

口蓋裂によって生じる問題については『口唇口蓋裂の症状にともなう合併症の問題』で詳しく解説しています。

口蓋裂の手術(口蓋形成術)を行う目的

口蓋形成術を行う最大の目的は、正常な言語機能を獲得できるようにすることです。また口蓋裂が閉鎖されていないと、哺乳や摂食が困難になってしまうために確実に口蓋裂を閉鎖する必要があります。

口蓋裂においては口腔と鼻咽腔がつながっているため、食物等により鼻咽腔が汚染されることで感染症を起こしやすくなります。その結果扁桃炎や中耳炎になりやすくなるため、口蓋裂を閉鎖することはこれらの感染症を起こしにくくさせます。

また、口蓋裂の患者は耳管の開閉機能に関与する筋肉の走行異常が多くみられ、こちらも中耳炎の原因となります。口蓋裂の手術を行うことで筋肉の走行異常もある程度改善することができます。

手術を行う時期

活発な発音を始める直前で上顎の形成発育を障害しない1歳?1歳半頃に手術するのが一般的ですが、最近では手術時期を早める施設も増えてきています。口唇裂閉鎖手術と同時に行う場合は生後6か月頃に行うことが多いです。

また、口蓋裂の状態によっては1回で終わる場合と2回手術が必要な場合があります。2回手術を行う場合は6か月~1歳までで1回目、1歳半?2歳前後で2回目の手術を行います。

口蓋形成術の術式と内容

口蓋裂において行われる手術を口蓋形成術と言います。この口蓋形成術には現在、プッシュバック法とファーラー法の2種類の術式が主流となっています。

プッシュバック法

口蓋の裂け目を閉鎖し軟口蓋を後ろに移動させるために、上顎の粘膜を骨から外し軟口蓋を移動させる手術です。

裂け目が広い場合には手術する範囲が広くなり、傷が治る際に傷口が強く収縮してしまうため、プレートを入れて上顎の横幅が狭くならないように固定する方法を併用することもあります。このプレートは4歳頃に手術をして外します。

ファーラー法

口蓋の裂け目を閉鎖する際に、プッシュバック法とは異なり、軟口蓋をZ字型に切開し、軟口蓋を後方へと延長させる手術です。この手術では軟口蓋の閉鎖のための手術と硬口蓋閉鎖のための手術とを、2回に分けて行います。

この手術法のメリットは、硬口蓋の裂け目の手術を少しでも遅らせているために上顎の成長障害を小さくできる点ですが、裂け目の幅が狭い場合でないと適用が難しく、症例によっては術前の矯正をあわせて行う場合があります。

手術後の注意点

口蓋形成術を行った後は、手術により上顎の骨の一部が露出するので、この部分に新しく粘膜ができるまでの間は、プラスチック製のカバーをすることで傷口の保護を行います。術後まもなくは固い食物は避けるようにし、お箸やボールペンなどの細いものを口に入れないように注意してください。

また、手術後2か月頃から言語訓練を始めますが、発語の状況は個人差があるため、それぞれの患者に合わせておこないます。

口蓋裂は関連する科での長期にわたる治療が必要

口唇口蓋裂の治療では、その症状と症状が抱える問題のために、産科、小児科、口腔外科、形成外科、矯正歯科、耳鼻科、言語聴覚科、補綴科、小児歯科、歯周病科などの各専門家による長期的な専門治療が必要となります。

問題を一つずつ解決し、お子さんのすこやかな成長発達のためには、総合的な観点から治療を行うことが望ましいのです。口唇口蓋裂の治療に関わる入院手術や矯正治療の費用については保険治療の範囲内で、ほとんどの治療は乳児医療や育成医療、更生医療、高額医療制度などの適応となります。

18歳の誕生日までは、自立支援医療制度(旧 育成医療制度)により1割の自己負担が適用となり、また、18歳以降は更生医療の適用となりますので、治療を行う病院でご相談ください。