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血液検査でわかる鉄不足の判断

更新日:2016/12/09 公開日:2016/04/26

鉄分の基礎知識

鉄不足であるかどうかは、血液検査を受けることでわかります。検査からわかる数値、数値が変動する理由など、血液検査における鉄不足の判断について鉄・栄養学に詳しい専門医師の監修記事のもとご紹介していきます。

いわゆる「鉄不足」という状態は、どういう場合を指すのでしょうか?

鉄不足の判断

血清フェリチン(貯蔵鉄)、MCV(平均赤血球容積)などを参考にして鉄欠乏の程度を評価します。血清鉄の値だけで、鉄欠乏の評価はできません。

ヘモグロビンは正常ですが、フェリチンが低値でキレやすいという有経の女性が典型例です。このような方は、鉄を補ってフェリチンやMCVの値が改善してくると、鉄欠乏にともなうイライラが目立たなくなってきます。

血液検査:血清フェリチン値

血液検査でわかる血清フェリチン値は貯蔵鉄量の推定、鉄欠乏の程度の評価するに有用です。フェリチンは、数値が低ければ鉄不足であると判断することができます。しかし、フェリチンが高くても鉄不足でないとは言えません。

微細な慢性炎症などでフェリチンが高めに出ていることがあり、しばしば、鉄欠乏のマーカーになっていないこともありますので解釈には注意が必要です。

成人では、約1000mgの貯蔵鉄が必要です。血清フェリチン1ng/ml は、貯蔵鉄8~10mgを反映していると言われていますので理論的正常値=1000/8~10=100~125ng/mlとなります。

血液検査:血清鉄

血清鉄は全体の0.1%程度であり、βグロブリン分画に含まれるトランスフェリン(Tf)というタンパク質に結合しています。女性は月経期に入ると体内から血液も鉄も失われるので、数値が低く出ます。また、妊娠中も胎児に栄養を送られるために低めに出ます。

体の状態や生活習慣で変動しやすい血清鉄

鉄が足りなくなっても下がりますが、体に炎症が起こることでも下がります。逆に、赤血球膜の状態や赤血球膜の障害(溶血)や肝障害、再生不良性貧血などの鉄の利用障害でも上がります。

肝障害による血清鉄の増加は、肝臓にはたくさんの鉄が蓄えられており、肝障害によって肝臓の細胞が破壊されることで、鉄分が血液中に放出されるためです。そのため、アルコール多飲者や経口避妊薬では、高めとなることがあります。

また、再生不良性貧血では、骨髄のもつ赤血球の生産能力が低下してしまうので体内での鉄の消費量が減少します。そのため、体内において鉄を余剰に抱えてしまうこととなり血清鉄が増加します。

胃全摘や萎縮性胃炎でしばしばみられる悪性貧血では、赤芽球のDNA合成に補酵素として作用するビタミンB12が欠乏し、前赤芽球から赤芽球への分化がブロックされ、巨赤芽球に変性します。その結果、鉄の消費が減少し、血清鉄が増大します。

服用薬やサプリの飲用、採血時間による変動

血清鉄は日内変動があり、早朝が高く、夜間睡眠中にもっとも低くなります。その変動幅は大きく、健常者でも1日のうち午前8時と午後8時では約2倍の差が生じることが報告されています。この日内変動は細網内皮系からの鉄遊離にリズムがあるためとされていますが、リズムの個体差が大きく、正午頃に最大値に達する人もいます。

鉄剤を服用している場合、血清鉄濃度は服用後の経過時間によって大きく異なります。血清鉄は鉄剤投与1時間後から上昇し、3~4時間後にピークに達し、12時間後に投与前値に戻ります。その後、血清鉄が貯蔵鉄へ移行すると、投与前よりも低下することがあります。

鉄剤や鉄を含むサプリメントを服用していないか、また、何時に採血したのかが値に影響してきます。

UIBC(不飽和結合能:unbound iron-binding capacity)

鉄に結合していないTfを鉄の結合能に換算したもの。

UIBCは日内変動があり、血清鉄とは逆に朝低く夕方に高くなります。

TIBC(総鉄結合能:total iron-binding capacity)

鉄に結合していないTfと、鉄に結合しているTfを合わせたものが、全てのTfとなり、これをTIBCと言います。つまりTIBC=UIBC+血清鉄(ug/dl)ということになります。トランスフェリン(Tf)の半減期は1週間程度であるため、TIBCに日内変動はありません。

慢性炎症があると低下します。βグロブリン分画 の主成分であるトランスフェリンの低下を反映 して、βグロブリン分画も低値をとる場合があります。

トランスフェリンは鉄イオンを非常に強く結合するため、遊離の鉄分を吸収することで細菌に対する抗菌作用を示します。トランスフェリンは粘膜にも多く存在し、細菌を生存しにくくしていると考えられます。

MCV(平均赤血球容積)

赤血球1個の平均の大きさ。鉄が足りなくなるとMCVが下がってきます。習慣的な飲酒で葉酸が足りなくなったり、ベジタリアンや胃切後や肝機能障害(ビタミンB12の貯蔵低下)などでビタミンB12が不足していると、MCVは上がります。そのようなときは、鉄欠乏によるMCV低値が表面上、包み隠されてみえなくなります。つまり、MCVが高くても鉄欠乏が隠れていることがあります。

また、タンパク質の代謝障害など種々の理由で、脱水傾向によって、ヘマトクリト値の上昇とともに、MCV、MCH、MCHC、ヘモグロビンが上昇していることもあります。MCVの低下因子は、鉄不足のみなのでMCV低値であれば、鉄不足の非常に有用なマーカーとなります。

MCH(平均赤血球色素量)

赤血球1個に含まれるヘモグロビン量。

MCHC(平均赤血球血色素濃度)

赤血球に含まれるヘモグロビンを%で表したもの。つまり、赤血球の中のヘモグロビンの濃さ。鉄が足りなくなると、一般にMCV→MCH→MCHCの順に低下してきます。

血液の検査会社の参考基準値

フェリチンやMCVといった鉄欠乏のマーカーは、血清鉄やUIBC、TIBC、ヘモグロビン、MCV、MCH、MCHCだけでなく他の血液検査結果と総合的に勘案して判断する必要があります。

また、血液の検査会社の参考基準値をもとにした鉄代謝の評価では、鉄不足が見逃されてしまいます。鉄関連マーカーには種々の上昇因子と低下因子があります。医師のもとで適切な判断と助言をもらうことが大切です。