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激しい咳をしたら失神した!病院に行くべき?

更新日:2018/02/07 公開日:2016/12/08

失神の基礎知識

咳失神は、激しい咳が数十秒続き、意識を失います。なぜ咳で失神が起こるのでしょうか?また、咳失神が起こったらすぐに病院に行くべきなのでしょうか? ここではドクター監修のもと、咳失神のメカニズムや正しい対処法について解説します。

短くポイントをまとめると
咳失神は、咳により体内の血液循環がうまくいかなくなったために起こる
咳をしなければ咳失神は起こらない。咳が起こる原因の治療が大事
咳失神だけで病院に行く必要はなく、禁煙や減量などにより予防できる

「失神」は急に意識をなくして倒れることです。これは一過性のもので、自然に意識を回復することがほとんどですが、周りにいる人はビックリしますし、本人も何か重大な病気があって失神してしまったのではないかと不安になりますよね。

失神の原因は数多くあり、ある医学書には実に50以上の原因がずらりと並べられています[1]。この中に、咳を原因として起こる「咳失神」も記載されています。咳だけで失神が起こるなんて、不思議に思う人も多いのではないでしょうか。また、咳失神が起こったらすぐに病院に行くべきなのでしょうか? ここではドクター監修のもと、咳失神のメカニズムや正しい対処法について解説します。

失神はどうして起こる?

まず、人間はどうして失神という状態に陥ってしまうのかを知っておくと、咳失神のメカニズムを理解しやすくなります。

失神は人間の宿命

失神は、脳への血流が急速に減ってしまうことで起こります。酸素や栄養が脳に十分に送られないので、一時的に脳の機能がうまく働かなくなり、意識を失って倒れてしまうのです。このようなことが起こる根本的な原因は、人間が二本足で立つことを選んで進化してきたことにあります。血液は液体ですから、低いところに溜まろうとします。しかし、脳は人間の身体の中で一番高いところにあります。そのため、人間の身体は心臓のポンプ機能を高めたり、末梢の血管を収縮させたりして、血圧を上げることできちんと脳にまで血液が回るように調節しています。この調節に大きな役割を果たしているのが交感神経や副交感神経などからなる自律神経です。

この自律神経の調節が何らかの原因でうまく働かなくなってしまうと、脳にうまく血液が行かなくなり、失神してしまうのです。

失神してもすぐに回復する理由

脳の血液が足りなくなって、失神を起こしたとします。しかし、多くの場合はおよそ30秒から1分後には意識が戻ります。失神したから回復したのです。液体は下に溜まるので、倒れて体が横になれば、立っているときと比べて血液は格段に脳に届けやすくなります。そのため、脳に必要な酸素や栄養素が届いて、脳の機能が回復するのです。

失神を起こす原因は?

失神は、体内の血液循環の調節がうまくいかなくなったことで起こることを解説しました。では、この血液循環の調節に不具合が起きる理由は何でしょうか。細かく分ければ50以上になりますが、大まかに3つに分類されています。

  • 神経調節性失神
  • 起立性低血圧
  • 心原性失神

神経調節性失神

体内の血液循環の調節を担う自律神経のバランスが崩れたために起こる失神です。自律神経には、血圧を上げる交感神経と血圧を下げる副交感神経があり、お互いに拮抗しながらバランスを取っています。何らかの原因で副交感神経の興奮が高まりすぎてしまうと、その分、交感神経の働きが抑えられてしまいます。そうすると、脳に血流を送るために必要な血圧を維持することができなくなって、失神を起こしてしまいます。

副交感神経を興奮させすぎてしまう原因には色々ありますが、例えば苦痛や心配などの激しい感情や、排尿、前立腺マッサージ、嚥下(飲み込み反射)、目の検査などがあり、咳もその一つです。すなわち、咳失神は神経調節性失神の一種に分類されます。

起立性低血圧

起立性低血圧は、立ったときに起きる低血圧です。本来なら立った瞬間に交感神経が働いて、血圧を上げて脳への循環を保つのですが、起立性低血圧の人ではこの機能が慢性的に障害されているため、失神を起こしてしまいます。糖尿病やパーキンソン病、シェーグレン症候群などの病気が原因といわれています。

心原性失神

心原性失神は、心臓がうまく働かないために脳に血液が回せず、失神が起こるものです。不整脈で心臓のリズム機能がうまくはたらかない場合や、心臓そのものに問題がある場合に起こります。この失神は命にかかわることもありますので、適切な診断・治療を受ける必要があります。

咳失神のメカニズム

さて、前段の説明が長くなりましたが、ここからはなぜ咳で失神が起こるのか、その理由を詳しく説明します。

咳失神は、ひどい咳が10秒~数十秒続いた後に起こることが多いです。人間の身体は、咳をしようとするときに胸腔(肋骨のある部分で、心臓、肺、食道などが格納された袋)の内圧が高まります。空気を勢いよく吐き出すためには必要なことです。しかし、胸腔内圧が高まると、副交感神経(迷走神経)が刺激されてしまいます。そのため、交感神経の作用が抑えられ、必要な血圧が保てなくなって失神してしまうのです。失神までいかなくても、心拍数が少なくなったり、血圧が低下したりすることで、めまい感、浮遊感、ほてり感、脱力感、疲労感が起きたり、一過性の難聴や視力障害が起こることがあります。

いったん咳失神を起こして意識を失うと、通常の場合、咳をしなくなります。咳をしないということは胸腔内圧が下がり、副交感神経の緊張も解けます。身体も横になっていることが多いので、脳に血液が回りやすくなります。このため、すみやかに意識を回復することになります。

ですから、咳失神を防ぐためには、まず「強く長く続く咳が出ないような対策をする」ことです。

咳失神を起こしやすい人

咳失神を起こしやすいのは30~50代の男性といわれています[2]。しかし、中年男性の全員が咳をして失神するわけではありません。中年男性に限らず、下記のような特徴をもつ人が咳失神を起こしやすいといわれています。

咳をよくする人

咳失神は咳が原因ですから、咳をする回数が多い分、失神してしまう可能性が高まります。具体的には、タバコを吸っている人、長年の喫煙が原因で慢性閉塞性肺疾患(COPD)になってしまった人、喘息持ちの人などです。

肥満の人

咳をするときに胸腔内圧がより高まりやすい人は、副交感神経が興奮しやすく、咳失神を起こしやすいと考えられます。具体的には、肥満の人がそれにあたります。肥満があると、おなかの贅肉(内臓脂肪)が邪魔をして胸腔が広がりにくくなります。そのため、咳をしようとすると胸腔内圧がより高くなる傾向にあります。また、頑強で胸郭が大きい人も胸腔内圧が高くなりやすいため、咳失神を起こしやすいといわれています。

自律神経のバランスが崩れやすい人

通常であれば、咳をしても自律神経のバランスが保たれ、失神を起こすことはありません。しかし、自律神経のバランスが崩れやすい人では、咳の刺激によって副交感神経が優位になりすぎて失神しやすくなります。自律神経のバランスをくずしやすい要因としては、大量飲酒や、糖尿病、運動不足、不規則な生活リズムなどがあげられます。

咳失神で病院に行くべき?

最後に、咳失神が起きたらすぐに病院に行くべきかどうかについて触れます。

ここまでに見てきたとおり、咳失神は「咳をすること」と「自律神経の乱れ」が主な原因でした。これらの原因は、喫煙をやめたり、禁酒もしくは節酒をしたり、肥満を解消したり、不規則な生活を見直すことで、なくすことができます。まずはこれらの見直しを行いましょう。もし、ひとりではなかなか喫煙や減量がうまくいかない場合は、禁煙外来やお近くの内科クリニックに相談してみましょう。力になってくれるはずです。

一方、COPDや喘息などにより咳がたくさん出てしまう人は、病院でしっかり薬物治療を行う必要があります。咳を我慢する必要はありませんし、今はよい薬がどんどん出てきています。まだ病院にかかっていない人は呼吸器科や内科で相談してみてください。糖尿病についても同様です。

まとめ

咳失神そのものは「緊急で病院にかからなければならない」というものではありません。だからといって、咳失神となる背景・原因(生活習慣や病気)を放置しておくことは好ましくありません。その原因の中には、自分で努力してなくすことができるものがありますので、まずは生活の見直しをしてください。ただ、自分の努力だけでは改善できない場合や、治療が必要な場合もあります。その場合は病院で相談されることをおすすめします。

参考文献

  1. [1]デニスL.カスパーほか編, 福井次矢ほか監訳. ハリソン内科学 第5版. メディカル・サイエンス・インターナショナル 2017
  2. [2]井上博ほか編. “失神の診断・治療ガイドライン (2012年改訂版)“ 日本循環器学会. http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf (参照2018-01-30)