おりものは女性の体の健康状態を示すバロメーターの一つです。おりものの状態が異常な場合は、性感染症や子宮頚管炎などが疑われるので、早期に病院で詳しい検査を受けることが大切です。今回は、月経周期によるおりものの変化と、病気によるおりものの変化について紹介していきます。
健康時のおりものを知り、常にチェックを
おりものの異常を発見するためには、まずは正常なおりものの性状や色、月経周期による変化を知っておく必要があります。
おりものの色は半透明~白濁で、下着に付着した場合は黄色がかって見えることがあります。また、においは少し甘ずっぱいのが特徴です。
月経周期によるおりものの変化
月経周期によって、おりものは次のように変化します。
(1)生理
子宮内膜が血液やおりものと一緒に体外へ排出されます。
(2)卵胞期前半
おりものの量は少なく、さらっとしています。
(3)排卵期
精子を子宮内へ導くために、月経周期の中でもっとも多くのおりものが分泌されます。水っぽい性状をしていることが特徴です。
(4)黄体期
排卵期よりも量が少なくなり、粘度が高くなります。粘度が高いために、かたまりになって排出されることがあります。
(5)生理前
量が再び増加して、生理へと向かいます。
月経周期によっておりもののかたまりが排出されているのであれば、異常ではありません。しかし、においや膣のかゆみを伴う場合は病気の可能性がありますので注意が必要です。
においのあるおりものが出る原因
においのあるおりものを伴う代表的な病気は、細菌性膣炎です。これは、膣内の善玉菌よりも悪玉菌が増加することでアミンという物質が発生し、魚においにおいがするようになる病気です。次のような原因で膣内の環境が変化すると、発症しやすくなります。
- 不眠や風邪、疲労
- 抗生剤の服用
- 妊娠中
- 性行為
- 性感染症
- 生理前後
治療では、細菌性膣炎に有効な抗生剤を含む膣錠を、夜の就寝前に膣の奥へと挿入します。これを数日続けると改善するとされております。雑菌が原因の細菌性膣炎では性行為に支障をきたすことはありませんが、性感染症の疑いがある場合は検査結果が出るまで性行為は控えた方がよいでしょう。
おりものにかたまり・におい・かゆみを伴う場合
おりもののかたまりとにおいを伴う場合は、トリコモナス膣炎が疑われます。これは、トリコモナス原虫が感染することが原因で発症する病気です。下着やタオル、浴槽や便器などを介して感染することもあります。おりものには泡が混ざり、陰部の強いかゆみやにおいを伴います。また、おりものはクリーム色の豆腐のような性状をしているため、これを「かたまり」と感じることがあります。この病気はパートナーに感染する可能性があるため、トリコモナス膣炎の疑いがある場合はパートナーと一緒に治療を受ける必要があります。治療では、内膜薬と膣錠のどちらか、もしくは両方の使用を約2週間続けます。
独特な性状のおりものが出る場合
膣と外陰部のかゆみを伴い、カッテージチーズや酒粕状、粥状のおりものが出る場合はカンジダ膣炎が疑われます。これは、膣内の常在菌であるカンジダが異常増殖する病気です。外陰部や膣の痛みや灼熱感、発赤、軽度の腫れ、性交痛などを伴う場合もあります。カンジダ膣炎は細菌性膣炎と同じく、妊娠中や性行為、疲労や風邪などによりリスクが高まります。他にも、免疫抑制剤や副腎皮質ステロイドの使用、糖尿病や肥満などが誘因となる場合があります。膣錠を1日1回挿入する治療を7日間続け、同時に軟膏で外陰部の治療を行います。また、カンジダは膣内の常在菌であるため、症状が改善後に治療完了のための検査を行う必要はありません。
子宮頚管炎の可能性にも注意
子宮下部のことを子宮頚部と言い、おりものの増加やにおい、かたまりなどさまざまな症状を伴う場合は子宮頚管炎を起こしている可能性があります。これは、膣管を通じて細菌やウイルスが子宮頚部に到達して炎症を引き起こす病気です。原因となる細菌やウイルスに応じて症状が異なります。たとえば、カンジダ菌の異常増殖が原因の場合は酒粕状やカッテージチーズのようなおりものが、トリコモナス症ではおりものの泡立ちなどが見られます。また、性行為の際に疼くような痛みが子宮頚部のあたりに現れたり、不正性器出血や性交時出血を起こしたりする場合があります。子宮頚管炎の原因は次の通りです。
(1)微生物による感染
カンジダ、トリコモナス、アメーバ、クラミジア、淋病、梅毒、ブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌など
(2)ウイルスによる感染
サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペス
(3)アレルギーによるもの
精子アレルギー、薬物アレルギー
(4)外的刺激によるもの
化学的刺激、異物による損傷
(5)膣壁の萎縮によるもの
加齢、卵巣機能障害
子宮頚管炎の検査
検査では、おりものをスライドグラスに乗せて観察することで、トリコモナスやカンジダなどの診断ができますが、必ずしも原因を突き止められる訳ではありません。一般細菌や淋菌などの診断には、細菌培養が適応されますし、クラミジアに対しては、子宮頚管内の探過細胞を用いて検査します。他にも、疑われる原因に応じて適時検査を行い、突き止めた原因に対して有効な薬物による治療を行います。
このように、おりものの状態はさまざまな感染症や病気の可能性を示唆してくれます。少しでも以上を感じたら、かかりつけのお医者様にご相談するなど、適切な対応を取ってください。
デリケートゾーンの基本ケア 関連記事
振り返りやまとめ読みに便利。クリップで記事を保存!
クリップ機能を使用するには、会員登録(無料)が必要になります。