主要な性感染症の病原体として知られるクラミジアは、性器だけでなく咽頭にも感染します。ここでは、咽頭クラミジアの症状や治療法などについて見てみましょう。
咽頭クラミジアとは
咽頭クラミジアは、クラミジア菌が咽頭に感染して起こります。クラミジア菌は、性器に感染して性器クラミジア感染症の原因となることが知られていますが、オーラルセックスやディープキスなどによって咽頭から感染して尿道炎などを発症する例が増えてきています。
感染者との粘膜の接触によって感染するため、性器から咽頭に感染するだけでなく、咽頭クラミジアに感染した人の口腔から性器に感染する場合もあります。ある統計によると、クラミジア性尿道炎を発症した人のおよそ4割が、風俗店などでオーラルセックスを主に行っている人の咽頭から感染したものだとされています。
咽頭クラミジアの症状
咽頭クラミジアは、性器クラミジア感染症の場合と同様に、症状が出にくいといわれています。症状が出たとしても、のどの腫れや痛み、発熱など、かぜをひいたときとよく似た症状であることが多いために、咽頭クラミジアであることに気づかないケースもみられます。内科や耳鼻咽喉科を受診しても、本人からクラミジアに感染したおそれがあることを申告されない場合には、かぜや扁桃腺炎であると診断されることもあるようです。
性器にクラミジアが検出された人のうち、咽頭にもクラミジアが検出される割合はおよそ10%だといわれています。検出率には男女差がみられ、以下のように女性の方が、検出率が高くなっています。
- 性器にクラミジアが検出された男性で、咽頭クラミジアが検出された率…およそ4~12%
- 性器にクラミジアが検出された女性で、咽頭クラミジアが検出された率…およそ10~26%
性器と咽頭の双方にクラミジアが検出されても、実際の治療は性器に対してのみ行い、咽頭に感染したものへは適切な治療を受けないままになることも多く、性器クラミジアは治癒しても咽頭には残存するというケースも少なからず見られます。これは、無症状であるために咽頭への感染に気づかず、治療の対象とされなかったことによるもので、それによって咽頭に残存したクラミジアが新たな感染を引き起こすリスクとなる場合が多くみられます。
咽頭クラミジアの原因
咽頭クラミジアの感染経路は、オーラルセックスやディープキスがほとんどだといわれています。性風俗店などでオーラルセックスの経験がある人や、オーラルセックスやディープキスによって口で感染する機会があった人は、特に咽頭クラミジアに感染するリスクが高いといわれています。性器に感染による症状が出ていなくても、咽頭に感染している可能性は十分に考えられるため、感染が疑わしい場合には咽頭クラミジアの検査を受けることが推奨されています。
咽頭クラミジアの治療
咽頭クラミジアとの診断が出ると、通常、抗生物質の内服薬を用いた薬物療法が行われます。
検査方法
咽頭クラミジアの診断には、クラミジアを検出する検査が行われるのが一般的です。主に以下の3種類の方法が用いられています。
- うがいによる咽頭検査(PCR法)
- 生理食塩水でうがいをしたものを検体として、クラミジアの検出を行う方法
- 綿棒を用いた咽頭検査(SDA法)
- スワブと呼ばれる専用の綿棒でのどの奥の粘膜をぬぐったものを検体にして、クラミジアの検出を行う方法
- 採血による検査
- 採血を行い、血中のクラミジア抗体(血中クラミジアIgA抗体およびIgG抗体)の値から陰性、陽性を判定する方法
診断のための検査では、うがいやスワブを用いた検査方法によって検査を行うのが一般的です。検査によってクラミジアの検出がみとめられると、咽頭クラミジアと診断されます。採血によるクラミジア検査では、感染の疑いを判定することができるとされるものの、確定診断のためにはPCR法もしくはSDA法による精密検査を行うことが必要です。
治療法
咽頭クラミジアの治療には、性器クラミジア感染症の治療と同様に、アジスロマイシンなどの抗生剤が用いられます。咽頭クラミジアは、性器クラミジアよりも治療に長い期間を要するために、2週間以上にわたって治療が行われることが多くあります。通常は、内服薬が用いられますが、治療の経過が思わしくないときには点滴による薬剤の投与を行なう場合もあります。
咽頭クラミジアの予防
咽頭クラミジアは、オーラルセックスやディープキスなど口から感染するため、性器クラミジアの場合と異なり、性交時にコンドームを使用したとしても、それだけで感染を防ぐことは困難だとされます。しかしながら、感染のリスクを下げるためにも、オーラルセックスをする際にはコンドームを使用しましょう。
咽頭クラミジアは、治療をせずに放置したままでいると、気づかないうちに配偶者やパートナーに感染させてしまうおそれがあります。また、治療を受け完治した場合でも、再発するおそれは少ないとされますが、再感染することはあるといわれています。パートナーに感染が認められる場合には、自身も検査を受け、一緒に治療をして完治させることが感染予防のためには非常に大切です。
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