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皮膚科医に聞く!アトピーのステロイド・ワセリンを使った治療方法

更新日:2017.08.23
公開日:2015.03.02
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この記事の監修者
医師 板東浩

世間では保湿成分を塗布することでアトピーが軽快するという考え方が知られており、ワセリンの効能に注目が集まっていますが、アトピー性皮膚炎のケア方法としては有効なのでしょうか?

保湿することでアトピー性皮膚炎が快方に向かうという考え方があり、保湿成分であるワセリンに注目が集まっています。アトピーに対して、本当にワセリンが有効なのか解説します。

アトピーには保湿が有効!?

多くの方を悩ませているアトピー性皮膚炎は、未だ明確な原因が解明されていません。しかし、表皮のバリア破綻が原因の一つであると考えられています[1]。

アトピー性皮膚炎では、外部刺激から皮膚を保護している肌バリア機能が弱まっており、小さな刺激を受けただけで皮膚炎は起こりやすくなっています。アトピー患者の方の皮膚を見てみると、肌バリア機能を維持するためのセラミドが減っていることが多く、表皮のバリア破綻は大きな問題になります[2]。

肌バリア機能が低下すると、角質層は乾燥しやすくなります。ですから、角質層を保湿することがバリア機能の維持、ひいてはアトピー性皮膚炎の改善に役立つと言われています。

肌バリアを維持するためにワセリンは役立つ!?

角質層の水分量を保つことで肌バリア機能が維持されるため、アトピー性皮膚炎の方は積極的に保湿ケアを行うことが重要となります。肌表面をワセリンで覆うことで、角質層からの水分蒸発が抑止され、水分保持につながることは確かです[3]。そのため、一定の有効性があると言えるでしょう。

しかし、アトピー肌の保湿ケアを考えるのならば、ワセリンより他の物質のほうが有効です。ヘパリン類似物質をはじめ、より高い保湿効果を長時間持続する成分は存在しています。ワセリンにも一定の効果はありますが、皮膚血流量増加や角質水分保持増加作用のあるヘパリン類似物質のヒルドイドを塗布するとより効果がある可能性はあります[4]。

ワセリンを用いたアトピー治療

過去に、ワセリンを使ったアトピー治療法が存在していたことをご存じの方もいるかもしれませんので、簡単に説明します。

昔は、アトピー性皮膚炎の方にステロイドを処方する際、ワセリンと混ぜた上で軟膏壺に入れて渡すケースが多かったのですが、この方法は今では下火となっており、あまり推奨されていません。法律的には医師が医薬品を容器から出して、ワセリンと混合した時点で製薬メーカー側の責任ではなくなるため、混合した医師が処方薬に関する全責任を持たなければなりません(医師が手を加えたことで、メーカーが製造物責任法(PL法)の縛りを受けなくなるため)。

また、ステロイドとワセリンを混合すると、ステロイドの効果は薄まってしまうのに対し、副作用のほうはあまり変わらない点が、推奨されない大きな理由と言えるでしょう。

参考文献

  1. [1]デニス・L・カスパーほか編 福井次矢ほか監修. ハリソン内科学 第5版. メディカル・サイエンス・インターナショナル 2017; 352
  2. [2]Sullivan M, et al. Current and emerging concepts in atopic dermatitis pathogenesis, Clin Dermatol 2017; 35(4): 349-353
  3. [3]田上八朗. “スキンケア” 美容皮膚科学 改訂2版. 宮地良樹ほか編. 日本美容皮膚科学会監修. 南山堂 2009;196-206.
  4. [4]浦部晶夫ほか編. 今日の治療薬2017. 南江堂.2017.1041

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