薄毛に対する有効な治療法とされる植毛ですが、一方で治療費が高額になるイメージもあります。実際に植毛を行うとした場合、どのくらいの値段になるのでしょうか。また、植毛はどのように行われるのか、副作用の心配はないのか、仮に手術を受けた場合に術後の日常生活にはどのような制約が出てくるのかといった植毛の疑問について解説します。
そもそも、「植毛」と言っても1つの治療法だけではありません。まずは植毛の種類について簡単にご紹介します。
植毛とは
植毛は、文字通り薄毛の部分に髪の毛を移植する薄毛の治療です。植毛には2種類があります。
- 自毛植毛
- 人工毛植毛
まずは、それぞれの特徴を簡単に解説しましょう。
自毛植毛とは
自毛植毛とは、自分の髪の毛を移植する植毛方法です。男性型の薄毛の場合、生え際や頭頂部の毛髪が薄くなっても、側頭部や後頭部の毛髪は残っている傾向があります。その側頭部や後頭部の髪の毛を採取し、移植するのが自毛植毛です。移植する髪の毛は毛根から採取して移植するため、もともとの髪の毛と同じく伸びます。
人工毛植毛とは
人工毛植毛とは、人工的に作られた毛髪を薄毛の部分に移植する施術です。人工毛は合成繊維でできています。髪の毛が薄くなっている部分に希望の本数だけ人工毛の移植が可能です。
増毛と植毛の違いとは
植毛は自分の髪の毛もしくは人工の髪の毛を移植することで薄毛を改善する方法ですが、同じく薄毛を改善する方法として「増毛」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。増毛と植毛は、何が違うのでしょうか。
増毛とは、育毛や発毛に近い治療と言えます。髪の毛の成長サイクルを正常な状態に近づけることで、薄毛となっている部分にある毛母細胞から新しい髪の毛が成長しやすくする治療です。植毛は外科的治療となりますが、増毛は塗り薬や飲み薬をメインに行われます。
男性型脱毛症(AGA)は、進行すると毛母細胞が死滅してしまい、薬による治療が難しくなります。そのような場合でも可能な治療法が植毛なのです。
自毛植毛と人工毛植毛のメリット・デメリット
自毛植毛と人工毛植毛には、それぞれメリットもデメリットもあります。それぞれについて解説しましょう。
自毛植毛
自毛植毛のメリット・デメリットとして以下のことがあげられます。
- 自毛植毛のメリット
- 自分の組織を移植することから頭皮への悪影響が少ない、一度定着すれば普通の髪の毛と同じくまた生える可能性がある。
- 自毛植毛のデメリット
- AGAの進行をおさえる治療は続ける必要がある、生えそろうまでにある程度の期間が必要となる(8~10か月程度)。
AGAの場合、自毛植毛を行って髪の毛が定着後であってもAGAの進行を抑えるため、薬による治療は継続する必要があります。しかし、もともと自分の組織であることから、身体が異物として認識して拒絶反応を起こすことは少ないと言えるでしょう。
人工毛植毛
次に、人工毛植毛のメリットとデメリットを解説します。
- 人工毛植毛のメリット
- ある程度長い毛を移植することから変化をすぐに実感できる
- 人工毛植毛のデメリット
- 人間の身体が人工毛を異物とみなして拒絶反応が起こる可能性が非常に高い(炎症や化膿の発生)、運良く拒絶反応をまぬがれても、経年劣化によるメンテナンスが必要な場合もある
なお、アメリカの「アメリカ食品医薬品局(FDA)」では、この人工毛そのものが「有害器具」に指定されており、多くの州で人工毛の使用が禁止されています。また、日本でも人工毛による治療は「日本皮膚科学会」が発表している「男性型脱毛症の診療ガイドライン」で「行わないよう勧められる」の意味のD評価となっています。
植毛の治療法とは
同じ自毛植毛の中でも、メスを使用する方法やメスを使用しない治療法など、いくつかの方法があります。どのような治療法があるかについて、簡単に解説します。
自毛植毛
自毛植毛は、以下の方法があります。
- FUSS法(ストリップ法)
- メスで頭皮を部分的に切り取り、細かい株にわけて薄毛部分に一つひとつ移植します。皮膚を大きく切ることから、術後の傷跡や1回の手術で移植できる株の数といった部分にデメリットがあります。
- FUE法
- 移植する髪の毛を毛穴ごとにパンチを用いてくりぬき、移植する方法です。FUSS法より傷跡が小さく、痛みも軽減される傾向があるとされています。
このほか、頭皮の一部を残して移植部分を切り取り、皮膚を縫い付けて移植する方法や、薄毛部分の頭皮を切り取って周囲の皮膚と縫い合わせる縮小術といった方法もあります。しかし、これらはほとんどの場合ごく小範囲の治療にしか適応できず、また身体への負担の大きさから減少傾向にあります。
人工毛植毛
人工毛植毛は、合成繊維でできた人工毛を体内に挿入する方法で、自毛植毛のような術式の違いはありません。なお、埋め込むだけとはいえ医療行為となります。
植毛は失敗しないの?
自毛植毛の場合、治療によって治療前よりも状態が悪化したという報告はなく、そういった意味での失敗はほぼ心配ないといわれています。ただし、移植した部分に髪の毛が生着せずに十分に見た目の変化を得られないという可能性はあります。これは、手術方法や医師の技術、アフターケアなどによっても異なります。
一方、人工毛植毛の場合は、拒絶反応やアレルギー反応などによって炎症や化膿を起こす可能性が非常に高く、毛穴という毛穴が炎症と感染を起こし、頭皮全体がただれてしまった例などがあります。
植毛の値段の相場とは
植毛にかかる費用は、自毛植毛か人工毛植毛か、また、どのような術式で行われるかなどによって異なります。おおよその値段の相場をご紹介します。
植毛は保険適用外
植毛は、保険が適用されない自由診療の治療です。保険診療と自由診療の違いについて、簡単におさらいしましょう。
保険診療とは、治療内容が同じであればどのクリニックでも値段が同じ治療です。また、患者の負担は治療費の3割負担が基本となっています。
一方、自由診療は同じ治療内容や素材でも、クリニックが独自に費用を設定しています。また、治療費は全額、患者負担となります。そのため、自由診療のほうが患者の費用負担が大きくなりやすい傾向があります。
自毛植毛にかかる値段とは
自毛移植の費用は、基本的に「固定の基本費用」と「株数に応じた植毛費用」の合計で設定されています。ここで言う「株」とは、毛穴のことを指します。1つの毛穴からは1本だけ髪の毛が映えている場合もあれば、2本から4本ほど生えている毛穴もあります。そのため、1つの毛穴を1株とし、移植する株数に応じた金額が設定されているクリニックが多いようです。また、基本費用も術式によって異なるのが一般的です。
移植する面積や株数によっては、値段の合計が100万円を大きく超える場合もあります。
人工毛植毛にかかる値段とは
人工毛植毛の場合、移植する本数によって値段を定めているクリニックが多いようです。そのため、費用に関しては一概に言えませんが、3000本の植毛では100万円を下回るくらいの費用設定をしているクリニックが多いようです。しかし、拒絶反応や感染のリスクの高さを考えると、安いから受けやすい治療とは一概には言い切れない可能性もあるので熟考が必要です。
植毛による副作用
人工毛植毛と比べれば安全性が高いと考えられる自毛植毛にも副作用が起きる可能性はあります。ここでは、主に自毛植毛で起きる可能性のある副作用を簡単にご紹介します。
出血・痛み・かさぶた
手術を行った翌日から2日目くらいまでに、まれににじむ程度の出血が見られることがあります。ほとんどの場合、ティッシュなどで数分間圧迫すれば出血は止まります。また、毛髪を採取した部分に軽いつっぱり感が出ることもあります。クリニックによっては、痛みが強いときに服用する鎮痛薬を処方してくれるでしょう。
また、移植した部分にかさぶたができます。これは10日ほどで取れますが、かゆみを感じることがあってもゴシゴシとこすったり、かいたりしないよう気をつけましょう。
おでこや目の周囲の腫れ
手術による影響で術後5日目くらいまではおでこや目のまわりが少しむくんだように腫れる場合があります。ただし、1週間ほどで自然に改善することがほとんどです。
ショックロス
自毛植毛を行った患者の20%ほどに現れるといわれている副作用として、「ショックロス」というものがあります。ショックロスとは、主に手術の1か月後から2か月後くらいに現れる、植毛した部分の周囲にもともと生えていた毛が脱毛する現象のことです。弱っていた髪の毛にショックロスが出やすいものの、その程度には個人差があります。
ショックロスが現れる原因は、植毛時の小さな傷や、植毛によって血流が変化することなどではないかといわれていますが、正確にはわかっていません。
なお、植毛後の脱毛としては、移植した毛髪が生着せずに脱毛している場合と、毛髪の成長サイクルによって自然に抜け落ちる一時的脱落が考えられます。術後1日ほどで抜け落ちたものは生着しなかった髪の毛であり、治療後数日してから抜け落ちる場合は一時的脱毛である可能性が高いと考えられます。
植毛後に日常生活で気をつけること
植毛は、基本的に日帰りで行われます。植毛を行った当日以降、日常生活で気をつけたいポイントとして以下のものがあげられます。
- 植毛当日は髪を洗わない
- 植毛翌日以降も、移植した部分にシャワーを直接当てないようにしながらシャンプーをする
- 頭皮への刺激が強いシャンプーを避ける
- 頭皮を強くこすらない
- 過度な運動は術後しばらく控える
- 喫煙も術後しばらく控える
植毛をしてから2週間ほどすれば、日常生活における制限はかなり少なくなるでしょう。ただし、移植した髪の生着率を高めるためにも、日常生活における注意点は担当医師に確認するようにしてください。
まとめ
植毛の値段はクリニックや選択する治療法、植毛する本数や面積などによって異なりますが、決して安いとは言えません。しかし、進行したAGAなどにも適用できることから、植毛は特にAGAの最終手段ともいえる治療です。薄毛の悩みが気になる場合は、選択肢のひとつとして考えるのもよいでしょう。
植毛にかかる値段のほかにも、どのような術式を受けるか、どのくらいの面積に植毛を行うかなど、選択することは多くあります。薄毛の悩みに応えているクリニックの中には、無料のカウンセリングを行っているクリニックも多いため、悩んだ場合はクリニックで相談してみることをおすすめします。
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