株式会社 ナノエッグ
代表取締役 兼 研究開発本部長
山口葉子 様
皮膚科学の観点からアトピー(習慣性敏感肌)のためのスキンケア化粧品を開発する企業「ナノエッグ」。医大研究から起業にいたった背景や化粧品ブランド「メディコル」開発の経緯を、代表取締役 兼 研究開発本部長の山口葉子さんにインタビューしました。
[目次]
皮膚研究者たちによる医大発のベンチャー企業として創業
まずは、「ナノエッグ」を創業するに至った経緯について教えてください。
山口様:
もともとは聖マリアンナ医科大学の難病治療研究センターにあるDDS研究室で、皮膚の基礎研究を行っていました。
そこでの研究テーマが科学技術振興機構によるプレベンチャー事業に採択され、そこから3年間の研究と成果が認められたことで起業が決まりました。
編集部:
主にどのような研究での実績と成果だったのでしょうか?
山口様:
ちょっと専門的な話になりますが、肌に現れる症状や変化の原因、そのメカニズムから、薬剤が効果的に作用するための研究や副作用を抑える「DDS(ドラッグデリバリーシステム)」という技術を軸に、医薬品やそのベースとなる基剤の開発をしていました。
編集部:
なるほど、化粧品開発に活かせる医療ノウハウや一流の技術を持つプロフェッショナルな企業としてスタートしたんですね。
皮膚科学と高い技術の融合で誕生した『アトピーのための化粧品』
様々な肌悩みのなかで、アトピー(習慣性敏感肌)のための化粧品を開発することになったきっかけやエピソードを聞かせてください。
山口様:
私の子どもは、小さいときからアトピー性皮膚炎と喘息を発症していて、親としてそして本人も非常に苦しみました。
アトピーは死に至る病気ではありませんが、QOL(Quality Of Life:生活の質)を下げる病気と言われています。その背景には、死に至らない病気の研究はあまり進まないという実情があります。
編集部:
たしかに、自分の肌に合う化粧品がなくて、つらい思いをされているアトピーの方は多いですよね。
山口様:
そうなんです。
私たちはアトピーがいかに生きにくく、辛いものかを身をもって知っています。だからこそ、アトピーで悩む人を救うための薬やケアを提案し、毎日に喜びや幸せをお届けたいと考えています。それは今までも、これからも大切にする企業理念です。
「肌に存在する成分で作る」皮膚科学の観点から導き出したコンセプト
アトピー(習慣性敏感肌)に悩む方のために開発した「メディコル」は、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか?
山口様:
肌の状態を良くするために、化粧品にはさまざまな成分が使われていますが、私たちはシンプルに「皮膚に塗るものは皮膚にあるものを」「皮膚が損傷したり何か不足しているなら、塗ることで皮膚になったり補えるものにしたい」という考えがありました。
アトピーは、スキンケアとして塗った化粧品成分に対して「異物が入ってきたぞ!」と肌が過剰反応する特徴があります。その結果として、炎症やかゆみを起こしてしまうのです。
ですが、もともと皮膚に存在する成分であれば、肌も異物と認識することなく、アレルギー反応や副作用を心配することなく、不足した部分を補うことができますよね。
編集部:
他社から出ている低刺激設計の化粧品について意識するようなことはありましたか?
山口様:
他社の商品がどうというよりも、私たちがこれまで培ってきた研究や技術で、アトピーの人を救うために必要な化粧品を作ろう!ということだけを見ていましたね。
肌のことを考えた今までにない化粧品を作ることの難しさ
皮膚に存在する成分だけで化粧品を作るというのは、相当難しいのではないでしょうか?
山口様:
そうですね。そもそも細胞が作り出すものを、人工的に作るのは非常に難しいことです。しかも、それらを皆さんが日常的に使用する化粧品として製品化することは困難を極めました。
たとえば、工場で製造する際にタンクに成分を入れて混ぜ合わせるときに、溶剤が固まって出てこなくなったり、撹拌(かくはん)するための羽が壊れてしまう…なんてことが度々起こりました。工場側も今まで作ったことがない化粧品の処方だったので、試行錯誤の日々でした。
編集部:
それは工場泣かせな商品ですね(笑)
山口様:
ええ(笑)。製法についても、特許を申請していますが、特許内容を見ただけでは作れないほど細かい条件やノウハウが必要。
メディコルは、様々な人と企業の知と努力の結晶なんですよ。
メディコルを通じてスキンケア本来の在り方を伝えていきたい
山口様の想いがつまったメディコル。メディコルを通じて、ユーザーに伝えていきたいメッセージをお聞かせください。
山口様:
化粧品としての使いやすさの点でいうと、固くて使にくいことや独特のにおいがあるなど、一般の化粧品とはかけ離れた面もあります。
やわらかいテクスチャーや香りを演出するためには、どうしても皮膚に存在しない成分を入れなくてはなりません。爆発的に売れるような商品ではないと考えていますが、アトピーの方が満足して使えるものとしてベストを尽くしたものができたと思っています。
編集部:
たしかに、化粧品は肌に作用する成分だけでなく、使いやすさや品質維持を目的に、たくさんの成分が配合されています。
山口様:
はい。たとえば、植物成分と聞くと「肌に良さそう」とイメージする方は多いと思いますが、植物由来の成分だから何でも良いというわけではありません。
あたり前のように化粧品に含まれる成分や良いとされている成分は、本当に必要なものなのか?この点は、一般的にまだまだ理解が足りていないと感じています。
そして、アトピー肌(習慣性敏感肌)の方がすべき正しいスキンケアのあり方を伝えることで、アトピーに苦しむ方が一人でも減ることが私たちの願いであり、目標ですね。
編集部:
貴重なお話、ありがとうございました!
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