インタビュー東京工科大学
全国でも珍しい先端化粧品コース
(スキンケア大学) 化粧品についてここまで専門的に学べる学校は少ないと思いますが、大学ではどのようなことが学べるのでしょうか?
(前田) 全国でも数少ない化粧品科学に特化した専門教育を行っているのが先端化粧品コースです。本コースは2007年から日本の大学に初めて設置された化粧品科学の教育を受けた学士・修士・博士を輩出するために誕生しました。
本コースでは、化粧品の設計、製造といった「ものづくり」から、有効性、安全性、感性といった化粧品に必要な「価値創造技術」まで、基礎から応用にかけて体系的・実践的に学ぶことができます。
日本の化粧品製造技術は世界最高水準ですが、皮膚には、まだまだ解明されていない謎が山のようにあります。化粧品に留まらず、「肌の美と健康」に関する最先端の皮膚科学を学べるのも先端化粧品コースの魅力です。本コースには、化粧品の商品企画を学びたい学生や、大学院へ進んで化粧品の研究開発を学びたい学生が全国から集まっています。学生の「夢をかたち」にできるように、化粧品開発のトップレベルの実績のある教員が万全の体制でサポートしています。
本コースで学んだ学生は、化粧品会社の商品企画部門や研究開発部門の即戦力になることから、応用生物学部に誕生して以来、注目を集めており、大きな期待が寄せられています。
「美しさ」を科学的に追究
(スキンケア大学) 様々な研究のなかでも、興味深かったのが「美科学」という研究です。「美」というものをどのように捉え、どのようなことを学んでいくのでしょうか?
(前田) 目で見たり手で触れたりして実感できることはもちろん、見えない肌内部でも健やかさ・美しさの条件がそなわっている肌でなくてはならなりません。美肌は5つの指標により、目で見て、手で触れて実感できます。
「1.みずみずしいうるおいが感じられる。」
表皮の一番外側の角層の状態が良好で、水分がじゅうぶんに保たれているため肌理(きめ)がそろっている。手でさわってみると、しつとりとしたやわらかさがある。
「2.顔色が良く、透明感がある。」
真皮の毛細血管の血液循環が良好で、表皮のターンオーバーも順調なので、角層が過度に重層化していない。鏡に映して見ると、くすみがなく、肌色が明るく透明感がある。
「3.しみがない。」
表皮にあるメラノサイトがつくるメラニンの量が均一で、メラニン代謝が良好なので、メラニンが表皮に沈着していない。鏡に映して見ると、しみや色ムラがない。
「4.ハリと弾力がある。」
真皮の働きが良好で、コラーゲンやヒアルロン酸などがじゅうぶんにつくられているため、鏡に映して見ると、表情が豊かで、しわやたるみがない。手でさわってみると、弾むようなハリがある。
「5.毛穴がひきしまっている。」
肌に活力があり、毛穴のたるみやごわつきがない。鏡に映して見ると、毛穴が小さくて、角栓(毛穴の詰まった皮脂や角質の固まり)がなく、肌全体がひきしまっている。手でさわってみると、なめらかである。
(スキンケア大学) このような感覚的なことも科学的に判断できるのでしょうか。
(前田) 人間の感覚には『嗅覚、視覚、聴覚、触覚、味覚』があります。そのうち化粧品に大いに関係あるのは、嗅覚、視覚、触覚です。
香りは嗅覚受容体で認識され、その匂い信号は神経系を経由して脳へと伝達されます。そのスピードは速く、香りの種類によってリラックス効果や集中効果があったり、温かさ、冷たさといった温冷感覚効果があったりします。ムスクの香りのように女性ホルモン(エストロゲン)の量を増加させたり、ストレスを緩和させたりする香料もあります。
また、化粧品を開発するうえで化粧品を使用したときの感触は重要です。べたべた、さらさら、もっちりといった使用感触を、例えば摩擦力、表面張力、浸透力など工学的に解析して、感触という生理現象を科学的理論で解析するといったことも工科女子でなければできない面白い研究です。
化粧品と上手に付き合うために
(スキンケア大学) これからの化粧品業界にはどのようなことを期待していますか?
(前田) 化粧品会社は「マーケティング主導なのだから」と考え、マーケティングに秀でた化粧品会社が多くなっています。
しかし、美容皮膚科学や化粧品科学が大学で学問体系化されつつあるなか、ただ単にイメージだけの化粧品を販売している従来型のマーケティング主導の化粧品会社ではなく、実効のある化粧品開発を目指す化粧品会社・製薬会社等が大学との産学連携で化粧品の研究開発を行ってきているので、今後の機能性化粧品の研究開発には期待できます。
数年後には大学での研究成果を生かしたすばらしい機能性化粧品が開発されていると思うし、この考えは中国等の近隣諸国にも広まりつつあるため、化粧品開発の基礎教育を受けた学生が日本を含めたアジアの化粧品業界で活躍することを期待しています。
(スキンケア大学) スキンケア大学をご覧のみなさまに、化粧品と上手に付き合うアドバイス、お肌を健やかに保つためのアドバイスなど、何かメッセージをお願いいたします。
(前田) 若いころに浴びた太陽紫外線、特に中波長紫外線(UVB)は10年後、20年後にしみを発生させるので、紫外線を長時間・長期間浴びることは避けた方がよいでしょう。
かといって、日焼け止め化粧品を乱用すればよいというわけではありません。なぜなら、日焼け止め化粧品に配合されている紫外線吸収剤は油溶性がほとんどであり、それを完全に落とすためには洗顔料(クレンジング)も強いものを使用しなければならず、角層にダメージを与えるからです。
もし、屋外スポーツで日焼け止め化粧品を使用しなければならない場合は紫外線散乱剤(被覆酸化亜鉛や被覆酸化チタン)だけを配合した日焼け止め化粧品の使用をすすめます。強いクレンジングの影響で顔の肌の肌理(きめ)はなくなり、角層のバリア機能が破壊され、肌の水分が蒸発して、乾燥肌になるので、化粧品で保湿しなければ乾燥して耐えられない肌になってしまいます。
すなわち、肌にやさしい化粧品を使わなければ、化粧品がなければ生きていけない肌になってしまうという悪循環が生じるのです。
なので、化粧品を選ぶポイントはクレンジングです。クレンジングに配合されている強い界面活性剤が肌の肌理をなくし、角層のバリア機能が破壊しているので、界面活性剤フリーのクレンジングを用いるのが理想です。しかしながら、界面活性剤フリーのクレンジングで使用感の良いものはほとんど市販されていないので、なるべく、固形石鹸だけで落とせるスキンケア化粧品を使用するのがよいでしよう。
美肌を維持するためには、薄化粧と固形石鹸による洗顔が基本です。
(スキンケア大学) 化粧品がなければ生きていけない肌とは少し怖いような気もしますが、スキンケアやメイクを見直すだけで大丈夫でしょうか?
(前田) そのほかにも、肌を健やかに、美しく保つために大切なことはあります。
1.保湿化粧品で正しいスキンケアを行う。
2.正しい洗顔で古い皮脂を洗い流す。
3.紫外線・乾燥、喫煙を避ける等の生活環境に気を付ける。
4.正しい食生活で栄養を補給する。
5.適度な運動で新陳代謝を促進する。
6.十分な睡眠で肌の再生に必要な成長ホルモンの分泌を促す。
7.ストレスを発散するために、気分転換を図り、好奇心をもつ。
肌を健やかに美しく保つために正しい食生活と栄養補給、適正な運動、十分な睡眠、生活環境などが上位にあげられます。
サプリメントで、不足している栄養を補給することも場合によっては必要ですが、適正な量を守ることが大事です。多量に摂取しても、効果が強くなることはありません。むしろ、適正な量の栄養を食事から摂取したほうが、効果を期待できます。
美肌を保つためには化粧品だけではなく、肌に良い食品を摂取するようにしてください。外観の美しさだけではなく、内面から醸しだされる健康的な美しさを得るためにも、心身ともに充実した快適な生活と美容によい食事が必要です。内外美容で今よりも、もっと美しくなってください。
東京工科大学 企業情報
1947年 学校法人片柳学園の前身となる「創美学園」を設立後、1986年 東京工科大学を開学。工学部、メディア学部、応用生物学部、コンピューターサイエンス学部、デザイン学部、医療保健学部と6つの学部からなる。
2007年には、日本初となる先端化粧品コースを応用生物学部内に設置し、皮膚・毛髪などを最先端の設備環境の中で化粧品を設計するための実践的な知識・技術を身につけた人材を輩出している。
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