スキンケア大学 ヘルスケア大学 メンズスキンケア大学

奥平智之 先生

医療法人山口病院(川越)精神科部長

漢方や食事栄養療法を取り入れ、薬の量をできるだけ減らしたい

奥平智之

精神科の医師であり同時に漢方医でもある独自のキャリアについてお話しください。

医師を志したときから漢方や鍼灸や養生などの東洋医学には興味があり、漢方を上手に活用できる医師になりたいと思っていました。私が学生の頃は医学部の授業で東洋医学はあまり重視されていなかったので、自分で調べたり、勉強会に出かけたりと、独力で学ばなければならないことが沢山ありました。医師になってからは、まずは大学や都立病院で精神科臨床を学びましたが、その後は漢方の臨床も深めようと、大学の東洋医学科にも入局しました。そして同大学の土曜の漢方専門外来を10年程続けました。現在は東京女子医科大学東洋医学研究所の非常勤講師として漢方外来を担当させていただいています。今も学生の時のように、いろんな勉強会やセミナーや学会等に参加しながら、常に知識をアップデートするように心がけています。

漢方薬による治療以上に、食養生の大切さは漢方外来をしながらいつも感じていました。食養生について深めていくと最新の栄養学の分野の理解は非常に大切だと思うようになりました。現在では、新宿溝口クリニックで栄養漢方治療セミナーと減薬セミナーを担当しながら、漢方と栄養療法の専門外来を非常勤で担当させていただいております。薬物療法が欠かせないような疾患でも、なるべく薬が少なくするためにできることを取り入れていきたいと思っています。

精神科の診療における漢方の影響について例を挙げてみましょう。漢方では患者さんが訴えるさまざまな症状に対し、脈を診たりお腹に触ったり、皮膚や舌の状態を観察したりと、五感を使って診断します。漢方の診断のことを「四診」(ししん)といいます。一般的な精神科の診察では患者さんとの会話が中心ですが、漢方医学的な診察と身体面に焦点をあててアプローチしていくやり方も非常に精神療法的で、患者さんとのより良い信頼関係を築く助けになっているかもしれません。

毎月、皆様のために、食事栄養療法倶楽部や埼玉メンタルへルス交流会や漢方などの講演会や座談会を開催していただいておりますが、継続されているのはなぜでしょうか?

一人でも多くの方に食事や栄養の大切さと漢方の魅力を知っていただきたい、なるべく薬に頼らなくてすむような体質の改善を目指したい、一人でも多くの方を幸せにしたいという気持ちがあります。毎回、頑張って資料を作成していますが、とても自分の勉強になっています。自分のアウトプットの場をいただけることに感謝しながら、毎回開催させていただいております。

治療内容や治療において大切にしていることについて教えてください。

「自分の家族だったら、どのような医療を受けてほしいか」を常に考えています。
統合失調症や躁うつ病といった精神疾患の病態は未だに十分に解明されておらず、薬物によって多くの患者さんの症状をなくすことはできるものの、根本的な治療方法がないために、慢性疾患となっています。そのため、このような疾患への治療は“総力戦”だと思っています。患者さんの症状の軽減と増悪にはいろんな影響因子が関与している可能性が考えられます。そのため、睡眠や運動や食事などの生活習慣の改善や環境調整から、漢方治療や栄養療法などの補完的な治療方法まで、患者さんの希望があれば積極的に併用してよいと考えています。
薬とは異なり、食事や栄養の生体への影響はエビデンスが不十分なものもあるので、私は自分が臨床で経験したり、感じたこと、諸先輩の先生方から学んだことを生かし、患者さんから学ばせていただく気持ちで取り組んでいます。栄養療法に関しては、これからの治療法だと思っていますので、臨床を通して謙虚な姿勢で少しずつ深めていきたいと思っております。

奥平先生が毎日、日課にしていることは何かありますか?

お風呂にゆっくり入ったあとに、いつも冷たい水を浴びています(笑)。
気持ちがシャキッとします。ある程度体力がある人には、オススメします。

最後に読者の方々に健康面でのアドバイスをお願いします。

気分が不安定になりがちな人は、今の食生活を見直してみると良いかもしれません。例えば、ダイエットで食事の量を減らし、我慢できなくなったら甘いお菓子を食べる、といった食生活の人は血糖調節障害に注意しましょう。糖質によって血糖値が急上昇すると、その後、インスリンの働きで血糖値が急激に下がってしまうことがあります。急激に下がると生体はアドレナリンなど交感神経を高める働きのあるホルモンを分泌し、これがイライラの原因になることがあります。また、低血糖を回避するためにコルチゾールなども分泌されるため、結果として副腎にも負担を与え、慢性的に続くと、慢性疲労などの原因になります。

女性の場合、鉄の不足による体調不良が非常に多く見られます。赤身の動物性蛋白質をしっかり食べ、よく咀嚼することも大切ですね。また、動物性蛋白質を消化して栄養素を吸収するには胃腸の働きが重要です。胃腸が弱ってしまっている人は漢方薬も役に立ちます。
既に精神疾患で薬を処方されている人は、自己判断で薬を減らさないようにしましょう。中でも抗精神病薬や抗うつ薬等は再発のリスクに関わるケースが多いので、慎重な判断が求められます。統合失調症は再発を繰り返すことで社会機能や精神機能が低下したり、治療が難しくなる傾向にありますで、再燃再発は絶対に防がなければならないと考えています。先ほど減薬についてもふれましたが、それは専門家による適切な指導が大前提となっています。

体力や体質は人によって異なり、症状も一様ではありません。漢方ではこれを「証」(しょう)と呼び、その人にあった処方をします。必要な薬や漢方や栄養の優先順位や種類も1人1人異なると思います。信頼できる主治医を見つけ、血液検査などの必要な検査もきちんと受けながら、薬物療法だけでなく、多面的なアプローチを通して、生活上の様々な工夫を試みるのがよいと思っています。