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寺本明 先生

東京労災病院  病院長

東京労災病院 寺本明 院長先生

寺本明

地域の中核病院としての、東京労災病院の機能と役割

東京労災病院は、羽田空港に最も近い総合病院で、大田区の国道131号線(産業道路)より海側の住民、約7万人を主な対象に、地域住民の命と健康の最後の砦として、「災害拠点病院」「地域医療支援病院」「2次救急病院」の3つの大きな役割を担っています。

日本は、東日本大震災や熊本地震など、地震や津波などの自然災害がいつ発生してもおかしくありません。当院は海に近い病院として非常時にどう行動すべきか、日ごろから災害訓練や災害時を想定した避難訓練を、職員が一丸となって、地域住民とともに取り組んでいます。また、大田区など行政機関とも連携を行い、「災害拠点病院」としての機能を非常時に発揮できるよう備えています。

また地域の中核病院として、また、「2次救急」機能として大切にしていることは、専門性もしっかり追求していることです。

東京労災病院は、脳卒中科、整形外科、消化器内科に医師が10人以上在籍しており、地域の医療ニーズに寄り添いながら、専門性を高めています。また、循環器内科ではカテーテル治療に力を入れています。

当院の周辺は、日本が誇る大田区の町工場が広がっているため、手や腕の外傷も多く「手外科部門」や、労災病院ならではの「アスベスト治療」の専門性も非常に高いです。加えて、近年はマンションの建設が多く、若い夫婦や若年層の人口増加もあり、産科にも力を入れています。

「地域医療支援病院」の大切な役割のひとつとして、地域の医療機関との連携があります。250を越える地域の診療所(かかりつけ医)が、東京労災病院の登録医として、日ごろより連携を強化しております。

診療所を受診している患者さんに、大型の検査機器での検査予約や、専門性の高い治療が必要と診療所の先生が判断したときは、当院へ紹介状とともに紹介があり、検査や治療、入院加療などを行います。退院後は、住み慣れた環境で、診療所の先生が治療や経過観察を行います。東京労災病院と地域の診療所との「病診連携」で、地域のどの医療機関を受診しても安心していただける地域環境を整えています。

病院と町工場が連携する「医工連携」と治療と就労を両立させる「治療就労両立支援センター」

東京労災病院は、1949年の開院以来、68年の年月を地域とともに過ごしています。そしてここ大田区は、日本でも有数の工場(こうば)の町であり、ものづくりが盛んな地域です。

一方、病院など医療の現場では、注射針やはさみなど医療器材といった、さまざまな「もの」が使われています。例えば、痛くない注射針などは、「医療」と「ものづくり」の連携から生まれたものです。

こういった医療のニーズと地域の「技」を連携できないかと、大田区、大田区産業振興協会と協力協定を締結し、大田区医工連携支援センター内に「東京労災病院医工連携室」を設置し、連携事業を展開しています。

この活動は、日本の最先端医療をリードすべく、医療の経験から生まれた知見を基に、日本が誇る大田区のものづくりの技術と連携することで、臨床研究を積み上げるものです。また、『先端医療工学科』を医工連携室の下部組織として立ち上げ、手術機器の改良や手術材料の開発、内視鏡下ロボット手術のための機器開発、ニューロリハビリテーションのためのリハビリロボットの開発を手掛けて行きたいと考えています。

活動のすべてが世に出るわけではありませんが、すでに特許を3つ申請中ですので、今後の活動に大きな期待を持っております。

ところで、病院は治療を行う場所です。そして治療が終われば、ほとんどの患者さんは元の職場に復帰されるわけです。そのとき、病院からは企業の産業医へは書類が1枚いくだけになっています。しかし、それだけでは情報が不十分ではないかと思うのです。

例えば、がんの治療は、手術治療に加えて、化学療法を続けなければなりません。患者さんにとっては、髪の毛が抜けたり吐き気に見舞われたり、精神的にもつらい状態が続きます。

職場の皆さんが、こういった症状や対処法を知ることだけでも、がんと戦いながら職場復帰している患者さんの就労支援になると思います。

東京労災病院では、がんとメンタルヘルスの領域を中心に、これら疾患の患者さんの治療と就労の両立を支援するコーディネーターが活躍しています。コーディネーターは患者さんを支えながら、病院と企業の橋渡し役としても活動をしています。

これからの地域の中核病院は、治療だけでなく、退院後の患者さんの生活まで視野を広く持ち、地域に貢献できることを考え、実行することが求められているのではないでしょうか?