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細田洋一郎 先生

埼玉メディカルセンター 院長

JCHO埼玉メディカルセンター 細田洋一郎 院長先生

細田洋一郎

独立行政法人地域医療機能推進機構と埼玉メディカルセンターの役割

平成26年4月、社会保険庁の解体に伴い、全国の社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院の3つのグループが統合し、独立法人 地域医療機能推進機構(Japan Community Health Care Organization/通称、JCHO:ジェイコー)が発足しました。

JCHOは、全国57の病院をはじめ、介護老人保健施設や健康増進ホームに加え、7つの看護専門学校があり、急性期医療から介護、そして人材育成まで、幅広く展開しています。

埼玉メディカルセンターは、昭和23年に設立以来、埼玉社会保険病院として地域の皆さまとともに、地域医療を育んでまいりました。冒頭にお話したとおり、平成26年4月にJCHO埼玉メディカルセンターとしての再出発に加え、平成26年12月には新病棟が完成し、最新の医療機器、最新の建物で、アメニティーも充実しました。

当院は、19科からなる急性期医療を中心に、病気予防や早期発見につながる「健康管理センター」での検診や、在宅復帰を目指した「介護老人保健施設」を有し、予防から治療、介護まで一貫して行うことで、地域医療と介護領域に貢献しております。

日本の地域医療は、患者さんが住み慣れた地域や暮らしている場所で、豊かな生活を送れるように、病院完結型の医療から、地域の病院や診療所をはじめ、介護施設や介護スタッフと連携した「地域包括ケアシステム」を推進しています。

そして日本は、未曾有の高齢社会に突入しており、高齢の患者さんが増えるということは、一人の患者さんが複数の疾病を抱えているケースが増えるということです。若年に比べて、身体機能は低下し、認知症への対応も重要になります。

これからの医師は高齢社会に適応するために、専門領域を追求しながらも、いわゆるよくある病気(Common Disease:コモンディジーズ)も診ることのできる、総合診療医の育成も重要になってくると思います。

当院を含めJCHOでは、こういった地域医療の「要」となる総合診療医などの人材育成にも力を入れており、総合診療医と診療科目の専門医が協働する地域完結型医療の構築にも取り組んでいます。

「地域包括ケアシステム」で要となる病院と診療所の連携

地域完結型医療を目指す際に「地域包括ケアシステム」の構築はとても大切です。また、都道府県単位で「地域医療構想」の構築も行っており、私も埼玉県の医療審議会の委員として、埼玉の地域医療をどうして行くか、議論に参加しています。

埼玉県は10の2次医療圏で構成されておりますが、地域の特性は、人口や高齢者の割合によっても大きく異なり、秩父の地域医療とさいたま市の地域医療は、その実情は同じではありません。地域の実情に沿った医療の仕組みが大切です。

これからの時代、それぞれの地域で高齢化が加速していくこと、また、在宅での療養や介護が進んでいきます。そうすると、地域の医師会の先生との連携をより強化して、病院と診療所が連携(病診連携)して、地域の患者さんを支えていく仕組みが大切になります。

加えて、民間の訪問看護ステーションや介護施設との連携も含めて、みんなで連携していくことが「地域包括ケアシステム」なのだと思います。

こういう流れの中で、当院は急性期医療が中心ではありますが、昨年、地域包括ケア病棟を設置しました。この病棟は入院治療後、病状の安定した患者さんが早期に在宅復帰するために、リハビリや退院支援などを行う「在宅復帰支援のための病棟」です。

また、併設している「埼玉メディカルセンター附属介護老人保健施設」は、入院するほどではないが、医療管理下での看護や介護、回復期のリハビリが必要な患者さんに向けた施設で、こちらも在宅復帰するための医療施設です。

さいたま市は全国的に見ても高齢化が急速に進む地域であり、医療の必要な患者さんの増加割合を統計的に計ると、病院のベッド(病床)が足りない地域です。

ですから、病院のみで医療を完結することは非常に厳しく、医師会の先生や介護施設などと連携しながら、地域医療の質を支えていかなければなりません。

それぞれの医療機関が機能を分化して、地域のみんなで連携をして支えることが、これからの医療と介護の仕組み「地域包括ケアシステム」の成熟に欠かせないと思います。

人口動態の変容と死生観の変化。多死社会を迎えて

積極的な医療は、患者さんの社会復帰を目指す「攻撃的」な医療であると思います。手術や積極的な薬の投与など、命を救い、暮らしに戻すために、医師をはじめ、看護師や医療従事者が、患者さんの生きる力を、医療を通じて支援しているのです。

しかし例えば、90歳を過ぎ、認知症や様々な病気が進み、寝たきりで意識も混濁している状態の患者さんに対して、がんの根治が本当に良いのかどうか、家族も医療人も、しっかり向き合わなければならない時代になっていると感じます。

がんの根治治療は、若年の患者さんでも痛みや苦しみを時には伴い、乗り越えていかなければならないものです。しかし、このような患者さんに医療を提供することが、本当にご本人とご家族のためなのか、多死社会を迎えるにあたり、大切な命題だと思います。

近年、豊かな生活を目指そうという言葉「QOL(クオリティ オブ ライフ)」という言葉に合わせて、QOD(クオリティ オブ デス)という言葉が浸透し始めました。これは、いかに穏やかに最期を迎えるか、そのためにどうするか、ということです。

最後の瞬間を、病院のベッドで管だらけで迎えるか、それとも、病気とうまく付き合いながら、穏やかな時間の中でその時を迎えるか。ご本人、ご家族、そして、私たち医療や介護のスタッフたちが、日々向き合い、答えを探していかなければならないと感じています。