ファイトケミカルという言葉を聞いたことはありますか?
果物や野菜などの植物に含まれている化合物のこと。“phyto”は植物のことで、“chemical”は化学成分という意味がありますが、植物に含まれる特定の栄養素を指しています。
ここ数年、健康や美容への効果に注目が集まっているファイトケミカルとはどのようなものか、詳しくご紹介したいと思います。
野菜などの植物には、私たちの体に必要なビタミン類や食物繊維などの栄養素が存在します。ファイトケミカルとは体が活動するために必要な栄養素のことではなく、「体の健康維持」に期待されている栄養素のこと。
自然界に存在する植物は、動物と違って移動することが不可能なため、気候の変化や紫外線など、ありとあらゆる厳しい環境にも耐えなければなりません。
そういった過酷な環境に耐えうるため、植物には長い年月をかけて外敵である細菌から身を守る「抗菌力」や、酸化を防ぐ「抗酸化力」などの能力が備わり、それらを「第7の栄養素」と呼ぶようになりました。
ファイトケミカルの数は、実に数千種類以上にものぼりますが、大きく5つのタイプに分けることができます。
植物の光合成でつくられる糖分の一部が変化してできた、色素やアクの成分です。緑茶や紅茶などに含まれるカテキンやチョコレート、ココアに含まれるカカオポリフェノール、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンなどがあります。
赤や黄色、オレンジなどの色素成分で、主に緑黄色野菜に含まれています。トマトやスイカなどに含まれるリコピン、ブロッコリーやほうれん草に含まれるルテインなどがあります。
イオウを含んだ化合物で、辛みや香りの成分になっています。にんにくやねぎなどに含まれるアリシン、大根やブロッコリーに含まれるイソチオシアネートなどがあります。
ハーブや柑橘類に含まれる香りや苦味の成分です。レモンやグレープフルーツなどに含まれるリモネンやセージ、ローズマリーなどのハーブ類に含まれるジテルペンなどがあります。
食物繊維の一種ですが、ファイトケミカルでもあります。きのこなどに含まれるβ-グルカンや、海藻類に含まれるフコイダンがあります。
その数、数千種類以上といわれるファイトケミカルなので、ここでは女性の方に覚えていただきたい美容・健康によいとされるものをピックアップしてご紹介しましょう。
大豆や大豆製品に多く含まれているイソフラボンには、女性ホルモンに似た作用が期待されています。美容面においては、肌の弾力を保持してシワの予防など、美しい肌のサポートが期待できます。
また、女性ホルモンの減少が原因で起こる更年期の症状を緩和したり、骨粗しょう症の予防といった面にも良いと期待されています。
しょうがなどに多く含まれるジンゲロールは、抗酸化作用や殺菌作用、抗炎症作用が期待されています。
また、血流を改善することでエネルギーの消費量をアップさせる働きもあるため、ダイエット中の方にもオススメです。
きのこ類や大麦などに含まれるβ(ベータ)グルカン。免疫力を高める作用があるため、風邪やインフルエンザなどの感染防止に役立ちます。また腸内環境を整える働きもあるため、便秘気味の方にもオススメです。
アーモンドや赤ワインに多く含まれているレスベラトロールには、強い抗酸化力があり、人間の寿命に関連するサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化する働きがあると考えられています。
これにより、美容に良い成分と期待され、化粧品やサプリメントの成分として用いられています。
トマトやスイカなど赤い果肉に含まれるリコピンは高い抗酸化作用があるとされています。紫外線から皮膚を守る作用があるとされていますが、リコピンを摂取すれば皮膚を紫外線から守れるというわけではありません。
ほか、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐことが期待され、生活習慣病を予防につながると考えられていいます。
近年、日本人の食生活で問題となっている野菜や果物の摂取不足。厚生労働省が行った平成29年度国民健康・栄養調査における年代別野菜の摂取量を見てみると、特に20〜40代における野菜・果物の摂取不足が目立つ結果となっています。
忙しい日が続くと、コンビニ食や外食で食事を済ませてしまうことも…。手軽である反面、メインだけになりがちで、野菜が不足しがちになります。
日ごろからサラダや惣菜などの野菜や果物もきちんと食事に加えるようにしてくださいね。
篠原 絵里佳さん
管理栄養士・日本抗加齢医学会認定指導士
総合病院、腎臓・内科クリニック勤務を経て独立。医療機関での勤務経験とアンチエイジング医学の活動を通して「医×美×食」を融合させた、体の内側から美を作る食を見出し幅広く発信している。睡眠改善インストラクターとしても、食と睡眠の観点から健康と美容にアプローチする「睡食健美」を提唱中。医療機関にて栄養相談・睡眠相談も担当している。
総合病院、腎臓・内科クリニック勤務を経て独立。医療機関での勤務経験とアンチエイジング医学の活動を通して「医×美×食」を融合させた、体の内側から美を作る食を見出し幅広く発信している。睡眠改善インストラクターとしても、食と睡眠の観点から健康と美容にアプローチする「睡食健美」を提唱中。医療機関にて栄養相談・睡眠相談も担当している。