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保湿のメカニズム

更新日:2016/07/12

美しい肌の条件に「うるおい」は欠かせません。美肌効果を期待して、高価なクリームや美容液を次々と購入している方も多いのではないでしょうか?まずは「保湿の仕組み」を理解し、正しいスキンケアを行い、潤った素肌を目指しましょう。

肌の潤いは、角質層(角層)で守られている

角質層はわずか約 0.02 ㎜(食品包装用透明ラップと同程度)の厚さのなかで、角質細胞がブロックのよう. に 10 ~20 層積み重なり、外部からの水分の侵入を防ぎ、同時に内部の水分の蒸発を防ぐという役割を担っています。手のひらや足の裏などでは角層がとても厚く物理的な刺激に強くなっています。

例えば、お風呂に入った時に水が肌の中に入っていかないのはなぜでしょう。肌には外部からの異物の侵入をはばむバリア機能が備わっており、細胞同士を密着させることで、水や異物が肌の中に入り込むのを防いでいます。ですから、肌の外側から化粧水などで水分のみを補給しても、角質層深部に入り込むことはなくそのままにしておくと蒸発してしまいます。この時、角質層に含まれる水分を奪っていくので過乾燥となることもあります。

お肌はバリア機能で水や異物をはじいています

図1 お肌はバリア機能で水や異物をはじいています

お肌の水分を保持するメカニズムとは?

硬いケラチンタンパク質で出来ている角質細胞ですが、人の肌を触ると柔らかく感じるのは、角質層に約30%の水分が含まれているからです。このように十分な水分を含んでこそ、肌のハリ、なめらかさ、柔らかさを維持することができます。

一般に、皮膚のうるおい(水分量)は皮脂(ひし)、天然保湿因子(てんねんほしついんし)、角質細胞間脂質(かくしつさいぼうかんししつ)という3つの物質によって一定に保たれています。角質層に保持されている水分のうち2~3%を皮脂膜が、17~18%を天然保湿因子、残りの約80%は、セラミドという角質細胞間脂質によって守られています。

ところが、これら3つの保湿因子が加齢などの原因で減ってしまうと、角質層の水分も減少し、皮膚がひどく乾燥した皮脂欠乏症になってしまいます。

また、熱い湯に長くつかる、脱脂力の強いボディーソープで体を洗いすぎると、皮脂と角質細胞間脂質が流れ出てしまうため、お肌は乾燥します。さらに、外気や室内の乾燥も影響します。例えば空気中の湿度が50%以下になると角質層の水分が急激に蒸発しやすくなります。肌のつっぱりを感じた時には、すでに肌の水分量が10%以下になっていることもあり、お肌は外部の環境に非常に影響されやすいという特徴があります。こういった生活習慣や暖房の入れすぎなども皮脂欠乏症になってしまう原因の1つと考えられています。

それぞれの保湿因子の働きを知ってスキンケアに生かしましょう

保湿因子の重要性を上記で述べましたが、次はそれぞれの保湿因子を詳しく見てみましょう。

皮脂は水分を保つ大切な膜です

汗と皮脂(皮脂腺から分泌される脂)が混ざり合ったもので、天然のクリームとも言われます。天然の油膜として肌の表面を覆うことで、水分の蒸発を防ぐとともに、摩擦抵抗を減らし、表面をなめらかにしています。また、皮脂膜に含まれる脂肪酸によって弱酸性を保ち、細菌の繁殖を防いでいます。

皮脂と汗などが混ざりあい皮膚膜となります

図2 皮脂と汗などが混ざりあい皮膚膜となります。

皮脂の量と経皮水分蒸散量(TEWL)は、逆相関関係にあるために皮脂の量は多すぎても少なすぎてもいけません。皮脂の分泌が少ないと肌にザラつきやカサつきが出てバリアも弱まります。反対に皮脂の分泌が多すぎる、肌が脂っぽくベタつき、皮脂が刺激物質に変化し肌の炎症を招き、ニキビの要因にもなります。このように皮脂膜が重要な機能を果たすためには、適度な皮脂の分泌が必要です。

水分を蓄えてキープする天然保湿因子

Natural Moisturizing Factorといい、NMFと略されます。ケラチノサイト(角化細胞)が角化する過程でタンパク質から作り出されます。水分と結合する性質があり、アミノ酸、尿素、乳酸、塩基類などで構成されています。水分を吸着する性質が強く、水分を角質層に供給し、柔軟性と弾力性のある角質層の性質を保つ役割を担っています。

天然保湿因子

図3 天然保湿因子

肌バリヤとなる細胞間脂質の働き

角質細胞間脂質角質細胞の構造は、よくレンガとセメントに例えられます。角質細胞(レンガ)同士を角質細胞間脂質(セメント)が結びつけることで、内部の水分蒸発を抑え、外部の刺激から守るという役割があります。

角質細胞間脂質は水を抱える親水基と脂質としての性質を持つ親油基があります。水分層と脂質の層が交互に重なる形のため、脂質二重層状構造(ラメラ構造)となり、上の図のように水を挟み込んでいます。

水分層と脂質層が交互にあることで、まさに水も漏らさぬしなやかな防御壁になっているわけです。また比熱の高い水分層は、温冷刺激に対しても、優れた緩衝材となります。

この水と脂がキレイに並んだラメラ構造が崩れてしまうと、水分が抜けやすくなってしまいます。乾燥しやすい肌や敏感肌の方はラメラ構造を整えて保湿することがポイントです。

角質細胞間脂質はケラチノサイトの角化の過程で作られる脂質で、その成分はスフィンゴ脂質の仲間「セラミド類」が半分を占め、遊離脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステルなど複数の脂質で組成されています。

セラミドには6つのタイプがあります。保湿に関係あるのはタイプ2とタイプ1で、タイプ2のセラミドは水分を保持する役割を担っています。角質層の特徴の1つバリアとしての働きをしていると考えられているタイプ1のセラミドは、必須脂肪酸のリノール酸が含まれています。リノール酸を除去した食事を与えられた動物実験では、リノール酸の代わりに非必須脂肪酸がセラミドに組み込まれることで、著しいバリア障害を引き起こすと報告されています。

ただ、コレステロールを増やさないことでも話題になったリノール酸(植物油・ゴマ・クルミ・高野豆腐などに多く含まれる)ですが、摂取しすぎると、善玉コレステロールを低下させ、動脈硬化を引き起こすことが最近報告されていますので、青魚に含まれるEPA、DHAなどのオメガ3の脂もバランスよく摂取する必要がありそうです。

オメガ3は健康だけでなく、美容にも大事な成分です

図4 オメガ3は健康だけでなく、美容にも大事な成分です

セラミドは、基底細胞のケラチノサイトのスフィンゴシンが素となっています。基底層(きていそう)から有棘層(ゆうきょくそう)、顆粒層(かりゅうそう)、角質層(かくしつそう)までの角化の過程でスフィンゴシンは代謝を繰り返し、角質層でセラミドとなります。これをセラミド代謝と言います。

アトピー性皮膚炎患者は、このセラミド代謝が正常に機能せず、正常の3分の1程度のセラミド量しかありません。この事が原因で角質層のバリア機能が低下することが、アトピー性皮膚炎発症の重要な因子となっていることが解っています。

このように、角質細胞内でNMFが水分と結合し、角質細胞間脂質がしっかりと水分を抱き込むことで角質の水分は保たれているのです。さらにその上にある皮脂膜が肌の表面を覆い、水分が蒸発するのを防ぐフタの役割をしています。この様な柔らかく、はかなげな成分で作られた構造に、肌の持つしなやかな強さと、美しさの秘密が隠れているのです。

ニキビの予防にも保湿が大切

ニキビもバリア障害が原因だということを、ご存知ですか?ニキビの始まりは「毛包漏斗部(毛穴の入り口)が詰まること」ですが、ニキビの患者さんは角層のセラミド量が低く、バリア機能が障害されていることが分かってきました。

毛穴が詰まってしまうイメージ

図5 毛穴が詰まってしまうイメージ

バリア機能が壊れると角質細胞からIL-αという情報を伝達する為のタンパク質であるサイトカインが放出され、それがきっかけとなりケラチノサイトを分裂させます(角質層と表皮を厚くして体を守ろうとします)。毛包内に常在するアクネ桿菌は、皮脂成分のトリグリセリドを遊離脂肪(FFA)に変えます。

このFFAが角質細胞間脂質の合成過程に組み込まれると、オレイン酸を外用した時と同じように異常なラメラ構造が出来、セラミドなどの角質細胞間脂質の合成を抑制し、バリア障害を持続させます。さらに、角質細胞の接着性を亢進させて剥がれにくくするので毛穴が詰まるのです。

毛穴が詰まると、アクネ桿菌は好脂性(脂が大好き)のため、溜まった皮脂により数が増え、好中球と好中球由来活性酸素(ROS)を増やし、炎症をもったニキビとなるのです。このため好中球由来ROSを減らす抗生剤がニキビに有効なことが分かってきています。

毛穴の詰まりを解消し、皮膚のターンオーバーを整えるのでケミカルピーリングはニキビに有効です。しかし、意味のないアクネ桿菌の殺菌・消毒や過剰な洗顔はバリア機能をさらに悪化させ、お肌の過乾燥を悪化させます。乾燥すると刺激から守るためにますます角質が厚くなり(過角化)、毛穴の入り口がふさがれ面皰(コメド)となり悪循環になります。

実際のスキンケアで気をつけたい点

まず、基本の洗顔は、洗い過ぎに要注意です。汗とホコリは、ぬるま湯で十分に落とせます。また脂分の多い所は洗顔料をしっかり泡立てて汚れを優しく包み込むように洗います。お化粧をした時は、自分の肌に合うクレンジング剤をたっぷり使い、擦らずゆっくりと乳化させ、水またはぬるま湯でやさしく洗い流しましょう。

次に、化粧水でお肌を整える方が多いと思います。アルコールが含まれ、保湿に有効な成分を含まない化粧水を高頻度に外用すると、水分が蒸発する際にかえって過乾燥を引き起こすことがあります。

化粧水で保水した後は、クリームなどの油分を含む化粧品を塗ってフタをする必要があります。バリア修復に役立つ成分が含まれているとなお良いでしょう。特に角質細胞間脂質の1つであるセラミド、あるいはそれに類似した保湿成分が配合されたクリームを塗ることをおすすめします。外用した脂質は角質層を通過し、顆粒層内で角質細胞間脂質の合成過程に組み込まれることが分かっているからです。

しかし、脂質なら何でもよいというわけではありません。脂質の種類(オレイン酸などのある種の不飽和脂肪酸)によっては、異常なラメラ構造(出来損ないのバリア)が作られてバリア障害を生じ、面皰形成(ニキビ)、過角化、表皮肥厚、落屑異常を引き起こすのです。「ノンコメドジェニック」というのはこのようなニキビ(コメド)を増やしにくい成分で作られているということです。

ラメラ構造と同様の構造と機能を持った微粒子(ラメラ構造脂質)が工業的に作られるなど、近年では保湿成分の開発も目覚ましいものがあります。

乾燥肌で敏感肌になる

乾燥すると大切な角質のバリア機能が低下し、アレルギー反応が出やすくなることも分かっています。反対に、バリア機能を高めるスキンケアをすれば、抗原が表皮まで侵入しなくなるのでアレルギー反応を生じにくくすることもできるのです。信頼できる皮膚科医に相談しながら、その時々でお肌の状態を見極め、うるおいのある状態に保つスキンケアをご自分で模索してみて下さい。

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