肌の水分保持力は、角質層の細胞間脂質が80%、NMF(天然保湿因子)が18%で、皮脂はたったの2%程度です。
以前は「化粧水で水分を与えて、油分でフタ」といわれていましたが、実は大きな間違いなのです。それでは、水分保持に重要な細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)が減少している乾燥肌には、どのような保湿が必要なのでしょうか。
乾燥肌を保湿する効果
肌の保湿についての効果には、大きく分けると以下の2種類があります。
肌が自らのバリア機能を回復するまでの「応急処置」としての保湿
クレンジングや洗顔、入浴などにより、健康な肌でも多かれ少なかれ角質層の細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)が洗い流され、肌の水分保持力が弱まります。肌は主に睡眠中に、約24時間かけて失った細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)を回復させます。細胞間脂質やNMF(天然保湿因子)が回復するまでの間は肌が無防備な状態ですから、「応急処置」としての保湿が必要です。
間違ったクレンジングや洗顔を止め、肌から過度に細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)が流出しないようになれば、多くの方は翌日には肌のバリア機能が回復しているはずです。そのため、この「応急処置」の保湿では、肌が細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)を回復するのを邪魔せず、またバリア機能の回復前の肌をきちんと守る方法を選択する必要があります。
肌のバリア機能自体を高めるための保湿
加齢やアトピー性皮膚炎などが原因で、肌の細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)の生成力が衰えている場合や、乾燥が進んで肌が簡単に正常な状態に回復しない場合は、不足している分を補う方法を検討しましょう。
不足する細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)を補うのにも、以下の2種類のアプローチがあります。
- 細胞間脂質の主要成分であるセラミドやNMF(天然保湿成分)の主要成分であるアミノ酸など、不足しているもの自体を補う
- 細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)の生成力を高める効果のある成分を補う
「自分の肌には何が不足しているのか」「それをどのように補うのか」を考えることは、具体的に保湿剤を選ぶ時にもとても重要になります。では、具体的にどのような成分を化粧品で補うとよいのでしょうか。
乾燥肌の保湿におすすめの成分
前述したように、肌に不足している成分自体を補ったり、肌の細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)の生成力を高めたりしたい場合、それぞれの目的に合った成分を配合した化粧品を選ぶことをおすすめします。代表的な成分を列挙します。
- 不足している成分自体を補う場合
- セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、グリセリン、NMF(天然保湿因子)に含まれる成分
- 細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)の生成力を高めるための成分
- ユーカリ抽出液
なお、NMF(天然保湿因子)に含まれる成分として、セリンやグリシン、リジンなどのアミノ酸や、尿素などがあげられます。
このような成分が配合された化粧水やクリームなどを使用するとともに、正しい方法でスキンケアを行うことが乾燥肌の保湿に大切と考えられます。次は、正しいスキンケア方法を解説しましょう。
乾燥肌を保湿する正しいスキンケア方法
間違ったクレンジングや洗顔は、乾燥肌の原因のひとつです。また、肌が乾燥するからと保湿ケアを行っても、その方法が間違っていたり、選んでいるアイテムが肌に合っていなければ意味がなくなってしまう場合もあります。ここでは、正しいスキンケア方法をステップごとにご紹介します。
クレンジングの正しい方法
クレンジングのポイントは以下の2つです。
- 時間をかけずに素早く行う
- 強い力でこすらない
アイメイクなどの落ちにくいポイントメイクは、ポイントメイク専用のリムーバーで先に落とします。その後、顔全体のメイク落としを行いますが、このときも短時間でメイクを落とせる強さのクレンジング剤を選ぶのが大切です。顔全体のクレンジングは、長くても1分以内にすすぎ終えるのを目標にするとよいでしょう。
また、これはクレンジング以外の工程でも同じですが、肌を傷つけるのを避けるため、できるだけこすらないことも大切です。
洗顔の正しい方法
洗顔のポイントは以下の2つです。
- 洗顔料をしっかりと泡立てる
- ぬるま湯で洗い流す
洗顔料をしっかりと泡立て、その泡で手と肌の間にクッションを作ります。その泡をつぶさないよう、できるだけ指が肌に触れないように洗うことで、肌を必要以上にこすらず汚れを落とすことができます。
また、洗顔料やクレンジング剤を落とすときに熱いお湯を使ってしまうと、皮脂を取りすぎてしまいます。そのため、触ったときにぬるいと感じるくらい(33℃から36℃くらい)のお湯ですすぐようにしましょう。洗顔料が残らないよう、丁寧に何度もすすぐのも大切です。
洗顔が終わったあとは、タオルを当てて水分を吸い取らせるように拭きます。ゴシゴシこすってしまいがちですが、肌に大きなダメージを与えてしまうので、こすらないようにしてください。
なお、乾燥が気になる方で、鼻やあごといった部分的なベタつきも気にならない場合は、洗顔料を使った洗顔は夜の1回だけにしてもよいでしょう。
保湿ケアの正しい方法
乾燥肌が気になる方の場合、特に重視したくなるのが保湿ケアではないでしょうか。正しい保湿ケアの方法は、以下がポイントになります。
- 化粧水やクリームをハンドプレスでじっくりなじませる
- 保湿成分を補える化粧品を選ぶ
化粧水などは、手で温めると肌になじみやすくなる性質があります。そのため、清潔な手で化粧水などをつけ、しばらく肌に手を置いてハンドプレスするとよいでしょう。ペタペタとパッティングすると、それが肌への刺激となってしまうので控えましょう。
乾燥肌の方の場合、保湿アイテムのつけ方だけではなく、配合されている成分も重要です。保湿アイテムの役割と選び方を簡単に解説します。
- 化粧水
- 化粧水は、肌に水溶性の美容成分を届ける役割を持っています。乾燥肌の方は、肌本来の水分保持力が低下しています。そのため、水分保持力を補う保水成分が配合された化粧水を選ぶとよいでしょう。
- クリーム
- クリームや乳液の役割は、油溶性の美容成分を肌に届けることです。化粧水と同じく、肌の乾燥が気になる場合は保水成分を配合したものを選ぶとよいでしょう。
保湿のしすぎは肌の負担になる
肌自体が作り出す、皮脂、細胞間脂質、NMF(天然保湿成分)は、当然ながら肌にとって世界でもっとも素晴らしい保湿剤です。
しかし、多くの乾燥肌の方は、「こすり過ぎ」と「洗いすぎ」により、この天然の保湿剤を洗い流してしまっています。
外部からの保湿を考える前に、まずは「こすり過ぎ」と「洗いすぎ」を止めることが、重要かつ肌に必要なこと。まずは上記を肝に銘じたうえで、「外から何を補わないといけないのか」を考えるようにしましょう。
「水分をたっぷり補う」のはNG!?
長時間の入浴など、肌が濡れている状態が続くと、角質層の細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)が流出してしまいます。
細胞間脂質やNMF(天然保湿成分)を補う作用や、生成力を高める作用のある成分が十分に入っていない化粧水で長時間パックをすると、肌がふやけて角質層の保湿成分が流出し、逆効果になってしまうことがあります。
「油分でしっかりフタ」も逆効果になる可能性が
また、肌になじみやすいオイルを過度に肌に塗ると、セラミドを主成分とした細胞間脂質のバランスが崩れ、バリア機能が損なわれてしまうことがあります。
ちなみに、乾燥肌に対して皮膚科で処方されるワセリンは、ほとんど角質層に浸透しないため刺激もなく、皮膚の保護剤として安心して使用できます。
「乾燥肌だからフルラインナップで化粧品を使う」は肌トラブルの原因に?
乾燥肌はバリア機能が弱った状態で、異物が肌に入りこみやすくなっています。
たくさんの化粧品を使用することは、それだけ化学物質などを肌につける回数や量が増えるということになるため、場合によってはアレルギーや炎症を引き起こし、色素沈着(シミ)の原因になります。
肌が乾燥しているときは、なるべく使用する基礎化粧品の種類を少なくし、シンプルなケアをする方が安心です。
まとめ
乾燥肌の対策には、保湿が大切です。化粧水で水溶性の保湿成分を、クリームや乳液で油溶性の保湿成分を肌に届けることを考えましょう。保湿の目的は、大きく以下の2つに分けられます。
- 肌が本来持つバリア機能を回復するまでの応急処置としての保湿
- 肌のバリア機能を高めるための保湿
応急処置としての保湿として、正しい方法でクレンジングや洗顔を行うことがあげられます。また、肌のバリア機能を高めるケアとして、肌に不足している細胞間脂質やNMFの主要成分を補ったり、不足した成分の生成力を高める成分を化粧品で補うことがあげられます。
ただし、外から補う保湿ケアが過剰になると、かえってシミなどの肌トラブルを引き起こす可能性も考えられます。
- 保湿だけでなく洗い方も見直すこと
- 化粧品の種類を減らしてシンプルなケアを心がけること
乾燥肌のときは、肌が敏感になっています。そのようなときだからこそ、化粧品は最小限にしつつ必要な成分を補い、あわせてスキンケア全体を見直すようにしましょう。
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