現代において、多くの方を悩ませる疾患であるアトピー性皮膚炎についての特徴や症状、原因を解説していきます。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、アレルギーを起こすことによりかゆみのある湿疹が全身のいろいろなところにできる疾患です。肌の特徴として、皮脂の分泌量が少なく、角質層の水分を保つ力が弱いため、皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しているため外からの刺激にとても弱くなっています。
アトピー性皮膚炎を完治させる治療法は確立されていません。よくなったかと思えばまた症状が悪化する、ということを繰り返すことも特徴のひとつで、多くの方を悩ませます。
しかし、適切な治療を行い、適切なスキンケアを継続することにより、アトピー性皮膚炎の症状が出ないようにコントロールしていくことは十分に可能です。
アトピー性皮膚炎の症状と、現れる部分
アトピー性皮膚炎でみられる主な皮膚の症状には、次のような特徴があります。
- 乾燥…かさかさと皮膚の水分が少ない乾燥した状態。
- 鱗屑(りんせつ)…フケのようなかさかさしたものが落ちる。
- 紅斑(こうはん)…皮膚の赤み。
- 丘疹(きゅうしん)…ぶつぶつした小さなドームの形の盛り上がり。
- 痂皮(かひ)…掻きむしった後にできるかさぶた。
- びらん…皮膚の浅い部分がはがれて、じくじくとただれた状態。
- 苔癬化(たいせんか)…掻きむしることをくりかえして、ごわごわと皮膚が厚く硬くなってしまった状態。
左右対称に現れることが多く、患者の年齢によって現れるパーツが変わってきます。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因は、「はっきりとは分かっていない」というのが現状です。症状を引き起こす要因として、以下のようなものがあげられます。
- 環境アレルゲン(ハウスダストやダニ、カビ、花粉など)
- 食物アレルゲン(卵白、乳製品、大豆食品、米、小麦など)
- 物理的刺激(すれ、洋服の素材など)
- 環境的要因(暑さ、寒さ、乾燥など)
- 皮膚のバリア機能の低下
- 不規則な生活や偏った食事
- 使っている化粧品やシャンプー、ボディソープなどの刺激
- 疲れや緊張、悩み、環境の変化などのストレス
- 遺伝
ちなみに、家族や自分にアレルギーを起しやすい体質があることを「アトピー素因がある」と言います。ですが、アトピー素因があってもアトピー性皮膚炎にならない人もいれば、アトピー素因がないのにアトピー性皮膚炎の症状が出る人もいます。このように、まだまだ分かっていないことが多い疾患なのです。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療は「薬物療法」をメインに、「スキンケア」「悪化因子の対策、除去」の3点を基本とし、患者の症状や生活環境などを考慮して最適なものを組み合わせて行われます。
アトピー性皮膚炎の治療方針
アトピー性皮膚炎は遺伝的な素因も含んでいるなど、まだまだ分かっていないことの多い疾患です。現在のところ、病気そのものの治し方は確立されていません。そのため日本皮膚科学会では、治療で目指すうえでの目標を以下のように設定しています。
- 症状はないか、あっても軽く、日常生活に支障をきたさず、薬物療法もあまり必要としない
- 軽度の症状は続くことはあっても、悪化して慢性化することはまれな状態であること
治療の目標は、症状を上手にコントロールし、日常生活に差し支えない状態を維持することです。そのためには、薬で湿疹・かゆみなどの症状をおさえ、日頃のスキンケアをしっかり行い、症状が悪化しそうな原因を取り除いていくことが大切です。
アトピー性皮膚炎に効果がある薬
アトピー性皮膚炎を発症した肌は炎症によって皮膚バリア機能が低下しており、くり返しかきむしることによって湿疹が悪化するなどの悪循環に陥りがちです。薬物療法は主に炎症を抑えたり、かゆみを軽減したりすることにより、症状を改善するために行われます。
- 外用薬
- 塗り薬で多く用いられているものはステロイド外用剤(抗炎症作用)とタクロリムス軟膏(免疫抑制作用)です。その他の外用薬として非ステロイド系消炎外用薬もありますが、抗炎症作用の弱さから、あまり適応されることはありません。
- 内服薬
- 抗ヒスタミン薬や、シクロスポリン、ステロイド内服薬、漢方療法などがあります。
アトピー性皮膚炎の治療薬について詳しくは、『アトピーに効果がある薬とは』をご覧ください。
アトピー性皮膚炎と上手に付き合う日常的なケア
不規則な生活や偏食、生活環境によるストレスなどが複雑に絡み合ってアトピーという症状がより悪化すると考えられています。原因はさまざまありますが、アトピー性皮膚炎を悪化させにくい身の回りの環境を整えることが重要です。日常生活では、主に以下のような点に気をつけるようにしましょう。
身の回りを清潔に保つ
アトピー性皮膚炎を悪化させないようにするには、なによりも皮膚を清潔に保ち、適切な保湿を心がけることが大切です。毎日の入浴やシャワーで肌を清潔に保ち、低刺激の保湿剤やボディローションなどでシンプルなスキンケアを心がけましょう。また、皮膚をかきむしったときに傷を深くしないためにも、爪は短くしておきましょう。
紫外線対策をしっかり行う
バリア機能が低下したアトピー肌は、紫外線の刺激にとても弱くなっている状態です。外出する時は日焼け止めクリームを塗る、肌の露出を控えるなど、紫外線対策を万全にしましょう。
とはいえ、真夏に長袖で過ごすと汗も大量にかいてしまいます。汗をそのまま放置すると細菌の増殖により炎症を起こしやすくなるため、吸収性のよい衣類を選んだり、汗をかいた後はシャワーで洗い流すなど、肌を清潔にするよう心がけましょう。
ストレスをためない
ストレスがあると炎症が強くなったり、かきむしる回数が増えて症状が悪化することがあります。逆に、何かに夢中になっているとかゆみを感じないということも多いようです。時間を忘れて楽しめる趣味を見つける、没頭できる仕事に打ち込む、ぐっすり眠る…など、自分なりのストレスコントロール方法を見つけることも大切です。
栄養バランスのとれた食事
皮膚の材料となるタンパク質や、皮膚の新陳代謝をスムーズにするビタミン・ミネラルを意識し、バランスのとれた食生活を心がけましょう。腸内環境を整えることも大切です。
日常的なケアについては、『アトピーを改善するための日常的なケア』もあわせてご参照ください。
まとめ
アトピー性皮膚炎の症状や原因、治療方法、日常生活におけるケア方法などをご紹介しました。アトピー性皮膚炎はさまざまな要因で引き起こされ、よくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。また、完治させる治療法も確立していないことから、薬物療法を中心に日常生活においてもスキンケアや生活習慣の見直しなどを続けていくことが大切です。
アトピー性皮膚炎は「現代病」とも称され、年々患者数が増えています。繰り返し湿疹やかゆみを感じる場所がある場合は、早めに医師や専門家に相談してみましょう。
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